SixTONES「こっから」MVで見せるアーティストとしての個性 独特な世界観を自然に表現する実力
6月14日に発売されるSixTONESの新曲「こっから」のMVが5月12日にYouTubeで先行公開された。森本慎太郎が、King & Prince髙橋海人とダブル主演を務めるドラマ『だが、情熱はある』(日本テレビ系)の主題歌にも起用されており、毎回ドラマで流れるバンドサウンドが非常に印象的な曲だ。MVの公開から1週間足らずで、YouTubeでの再生回数は800万回に迫る勢いで伸びており、曲の発売前からすでに大きな注目を浴びている。
「こっから」のMVは、全体的にレトロな雰囲気となっている。喫茶店やコインランドリー、ボウリング場といった日常感に溢れるシーンと、シャンデリアが輝くダンスホールでメンバーや派手にステップを踏んで踊るシーンが交錯する。ドラマ仕立てではないが、うっすらとストーリーも感じられるような独特の世界観となっている。
冒頭で古い街道のような通りを京本大我が歩く姿は、パブリックイメージから考えると意外な組み合わせのようにも思える。しかし、こうしてMVで見るとどこかリラックス感があり、妙にリアルさがある。そこからハイタッチを交わした田中樹が一気に火をつけて、メンバー全員による怒涛のマイクリレーでメッセージを紡ぐ。そしてサビでは、リラックス感から一転してビシッとビジュアルを整え、その決意のような感情をパワフルなダンスで爆発させる。
MVでの6人の姿は、私たちにどこか親近感を与える。そのせいか、MVの概要欄にも記載されている「うまくいかなくても、天才じゃなくても、『こっから』始めよう!」という楽曲のメッセージが、私たちのリアルな生活に寄り添っているように感じられる。また、派手な表情や動きで縦横無尽に暴れるジェシーや、クールな顔立ちや佇まいと豪快なステップのギャップで魅了する松村北斗を見ていると、泥臭いメッセージの中にも、痛快さや歯切れの良さのようなものを感じる。そこがまた、変に湿っぽくならずに、メッセージを受け止められる要因となっているのだろう。
こうした世界観がはっきりした演出の中でも、6人が埋もれることなく個性を輝かせることができるのは、SixTONESの真骨頂とも言える。そして、1つのMVの中に、泥臭さや力強さ、お洒落さや色気といった、さまざまな要素が感じられるのは、彼らが単に個性的だからではなく、6人それぞれがしっかりとした表現力を持っているからだ。
先述のドラマでは南海キャンディーズ・山里亮太の鬱屈したキャラクターを演じる森本だが、MVの中ではドラマの人格など微塵も感じさせない。同じ曲を聴いているはずなのに、ドラマとMVでまるっきり違う印象を与えられることに驚く。印象のギャップという点では、髙地優吾のMVで見せる表情もそうだ。バラエティで見せる明るい笑顔の印象が強いメンバーだが、MVではクールな表情をしており、また違った印象を与えている。このように、MVで6人が見せる姿は、自然なように見えて、それぞれが役割を持ち、どのように表現するかということをしっかり意識したものと言えるだろう。