稲葉浩志『あなたがしてくれなくても』主題歌&挿入歌も好評 宮本浩次、櫻井和寿……バンドとは異なるボーカル表現
B'z・稲葉浩志のソロ活動が話題だ。ドラマ『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系)に提供した主題歌「Stray Hearts」では想いがなかなか通じ合わない心情を嘆くように歌い、 挿入歌である井上陽水のカバー「ダンスはうまく踊れない」 で妖しさと物憂げなイメージを汲んだ繊細な歌唱を聴かせている。そう、B'zのパブリックイメージとは大きく異なるのだ。彼のソロ活動はB'zでは見せないアプローチが多く、常に驚きに満ちている。
5月19日公開のYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」では、2016年のソロ曲「羽」をDURANのアコースティックギターの伴奏とともに披露した。バックトラックを極限まで削ぎ落とし、剥き身な声の威力を証明している。さらに、2021年には映画『SING/シング:ネクストステージ』に日本語吹替版の声優として参加。劇中では声の演技とともに、そのキャラクターを憑依させた上で歌唱も披露するというネクストレベルの表現を開花させてみせた。
彼のようにバンド活動とは切り離された場所でボーカリストが追求するソロ活動は想像を超える可能性を秘めていることが多い。例えば宮本浩次もそうだ。エレファントカシマシでは圧倒的なロックボーカリストであり、2019年頃から本格化したソロ活動でもその力を遺憾なく発揮しているが、ソロではさらに幅広く多彩になった表現が際立つ。
2021年の2ndソロアルバム『縦横無尽』では1曲目「光の世界」から、ピアノの演奏とともに儚げで柔らかな歌声を聴かせる。「十六夜の月」では跳ねるリズムの中で日常的な言葉を使ってポップスを歌う。ボーカリストとして、作詞家として、自身の可能性を積極的に試しているように見える。
その意図はカバー曲で見せる多様な歌唱への取り組みからも窺える。昨年リリースされたカバー作『秋の日に』でも、中森明菜「DESIRE -情熱-」や小林明子「恋におちて -Fall in love-」といった名曲たちをたおやかに、そしてストレートに歌いこなし、自身の声と向き合っている。