エレファントカシマシ、信念を強く貫くロックアンセム 宮本浩次のソロ活動を経てたどり着いた“骨太な新境地”

 35周年を迎えたエレファントカシマシが、4年9カ月ぶりのニューシングル『yes. I. do』を3月8日にリリースし、久々のツアーを開始した。

 宮本浩次(Vo/Gt)がソロ活動を開始した2019年から、エレファントカシマシとしての活動は年に数回のライブに留まっていたが、今回は全国4カ所9公演を廻る『35th ANNIVERSARY TOUR 2023 YES. I. DO』を開催中。しかも初のアリーナツアーだ。30周年のツアーファイナルで、さいたまスーパーアリーナのステージに立った彼らだが、宮本のソロ活動を経てさらに逞しさを加えた35周年のエレファントカシマシの姿に、すでにライブを目撃した人たちからは賞賛の声が上がっている。YouTubeの「エレファントカシマシ 35周年特別チャンネル」にはステージに向かう様子などがアップされていて、彼らの好調ぶりが窺える。

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 要となる新曲「yes. I. do」は、映画『シャイロックの子供たち』の主題歌になっていることも話題だ。原作は池井戸潤、監督は本木克英で、人間の欲望や心の闇を描き出すストーリーを主演の阿部サダヲらが好演している。この映画のオフィシャルサイトに宮本が「yes. I. do」についてコメントを寄せている。

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「人間の心を善とか悪とかではないものを基準として描いた“こころの日記”のような作品で観た後に、わたしの心はずいぶん軽くなりました。(中略)そしてわたしもいい曲とか、悪い曲とか、そんなところじゃあなくてこころのままに、ストレイトに曲を作りあげることを心がけ、そしてこの『yes. I. do』はこれを形にする事に成功したのではないか、と自負しています。久しぶりに鳴らすエレファントカシマシのサウンドがこの映画と共にあることが誇りです」(※1)

 落ち着いたテンポで〈答えはいつもheartの中にあるのさ〉とおおらかに歌い上げる「yes. I. do」は、迷いを抱えていても忘れてはいけない自己肯定感を、そっと揺り起こしてくれるような曲だ。これまでもミドルテンポのバラードはいくつも発表してきているが、ほどよくポジティブな歌詞と、アコースティックギターを入れず骨太なバンドサウンドにしているところに、「風に吹かれて」や「四月の風」を連想したりする。ツアータイトルにするほど宮本にとっては自信作なのだろうし、つまりは新たな定番曲になる予感がするのだ。

エレファントカシマシ「yes. I. do」

 さらにこの曲の演奏からは、久々にスタジオに入った4人の熱が感じられる。35年という時間の積み重ねは確実に彼らの演奏に刻み込まれている。石森敏行のギターはどっしりと伸びやかで、高緑成治のベースと冨永義之のドラムはバンドの土台をしっかりと作っている。彼らの演奏だからこそ宮本は存分に自分を発揮できるのだ。そんなことを改めて思わせる曲でもある。

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