稲葉浩志、『あなたがしてくれなくても』主題歌で描くもどかしい距離感 挿入歌「ダンスはうまく踊れない」でも表現する儚さ
4月13日より放送中の木曜ドラマ『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系)。セックスレスに悩む2組の夫婦を通じて描き出す大人の恋愛ドラマである。第1話から主人公・吉野みち(奈緒)と陽一(永山瑛太)、新名誠(岩田剛典)と楓(田中みな実)それぞれの夫婦のすれ違いが丁寧に描かれ、独特の緊張感が漂い続ける作品だった。
その主題歌を歌うのはB'zのボーカリスト・稲葉浩志。ソロ名義で新曲「Stray Hearts」を書き下ろしている。ソロでのドラマへの楽曲提供は『誤断』(WOWOW)以来約7年半ぶりであり、民放ドラマでは初の主題歌となる。
誠がみちに自身の悩みを打ち明けたドラマのエンディング。そこで流れた「Stray Heart」は互いの心が静かに動いたそのシーンを彩っていた。地を這うようなイントロ、じっくりと刻むバッキングギターで不穏に幕を開け、荘厳なストリングスが広がるサビは切実なメロディを情感たっぷりに演出している。
そして何より印象的なのはその歌声だ。悲痛な叫びや切実な嘆きを思わせる稲葉の歌唱は、B'zとは異なる彼のソロ曲だからこそ生まれるセンチメンタルな繊細さに満ちている。一方でスケール感溢れるコーラスも響いており、ドラマチックな展開を併せ持っているのだ。エンディングに残った切ない余韻とこの先の予感を強く引き立てる、見事な主題歌だった。
稲葉はこの主題歌に対し「本当は互いにもっと寄り添いたいと思いながらもすれ違い、じりじりと行き場をなくす感情、それでも何かを信じたい希望、登場人物たちのそんな心の彷徨を歌にできたらと思い「Stray Hearts」を作りました」とコメントを寄せていた(※1)。
詳細な歌詞はまだ不明だが“息遣いはすぐそばに聴こえるのに 触れられない““いつまでも一緒にいたい 思いは同じはずなのに”といったフレーズが散りばめられていることが分かる。もどかしい距離感と、ドラマ全体に通奏する不安定な気分を言い当てた1曲と言えそうだ。