aimi、EMI MARIAと表現した“自分を大切にする”というテーマ ジャパニーズR&B発展への情熱も語る

aimi、自分を大切にするということ

 日本語と英語を自由に操り、現行の海外R&Bサウンドを乗りこなして注目を浴びているaimiが、EMI MARIAとのコラボシングル第2弾「How’s The Weather?」を完成させた。昨年10月に発表した第1弾「Day N Night」がR&Bファンから高い評価を得たなか、今回はどのような作品をめざしたのか。aimiが目指すR&Bのカタチや、日本のR&B事情に対する思い、さらにラム酒のBACARDIとのタイアップでリリースされたtofubeatsとのコラボ曲「No One Is」の制作背景など、さまざまなトピックを語ってもらった。(猪又孝)

EMI MARIAとだからこそ“ジャパニーズR&B”でこのバイブスに到達できた

――EMI MARIAさんと繋がるきっかけは、aimiさんが送ったInstagramのDMだったそうですね。

aimi:EMIさんが昨年シングルを出し始める前に、カバー動画をインスタに投稿し始めたんです。「EMIさん、活動を再開されるのかな?」と思って。面識はなかったんですけど、インスタで連絡をしてお茶に行ったときに「曲を作りたいです」と言ったのがきっかけです。2021年の暮れか2022年の頭だったと思います。

――aimiさんにとって、EMI MARIAはどんな存在ですか?

aimi:メジャーからインディーズに戻った後の作品が好きでよく聴いていました。自分がaimiとしてリスタートする時期に、EMIさんが2017年に立て続けにリリースした全英語詞のシングルも聴き直していて、「EMIさんは日本を飛び出していく人かもしれない」と勝手に作品性で親近感を感じていて。とても敬愛していますし、EMIさんと制作ができたら自分の音楽性を高められるんじゃないかと考えていました。

――昨年10月にリリースした「Day N Night」の制作はどのように始まったんですか?

aimi:ビート先行で作ろうということで、まずはModesty Beatsからビートをいくつかもらって。EMI MARIAと謎のシンガーが絡むっていう(笑)その最初のキャッチーさ、初コラボに一番ふさわしいサウンドだと思ったのが「Day N Night」のトラックだったんです。

aimi & EMI MARIA - Day N Night (Behind The Scenes)

――Modesty Beatsには、二人から音の方向性を伝えたんですか?

aimi:私とEMIさんで、私たちの好きなバイブスのR&Bを集めた非公開プレイリストを作りました。2020年以降の新しいR&Bと、懐かしめの曲、あとは過去に女性シンガーがデュエットで出したコラボ曲とか10曲くらい入れましたね。

――2020年以降だと、どの辺を?

aimi:H.E.R.とか、H.E.R.とジャズミン・サリヴァンがコラボした「Girl Like Me」とか。SZAも入れてたかも。EMIさんのもともとの芸風がSZA系なので。

――EMIさんの方が先ですよね。

aimi:そう。EMIさんがもともとやってたサウンドがSZAの最近のアルバムの中にふんだんに入ってる、みたいな。時代がEMIさんに追いついてきてるなっていう感じがするんです。EMIさんはローファイな感じのミッドチューンを乗りこなすのが上手なので、その辺はModesty Beatsも意識していたと思います。

――「Day N Night」を作り上げて、どんな手応えがありましたか?

aimi:やっとジャパニーズR&Bでこのバイブスを出せたなって。

――“このバイブス”を具体的に言うと?

aimi:元々私は全英語詞で楽曲を書くことが多かったんですが、時代を先取りしていたEMIさんと制作することで日本語を使いながらもグルーヴさせることができるようになったし、Modesty Beatsのトレンドを取り入れたビートが加わることでより海外作品と遜色のないものができたと思います。やっとネクストレベルに行けたなっていう手応えがありました。あと人間的にもこんなに調和すると思っていなかったんです。そこで強く繋がれたから、Modesty Beatsも含めた私たち3人の作品を信じる力がすごく強かった。リリースする前から鬼リピして「この曲大好き!」って言い合ってました(笑)。

aimi & EMI MARIA - Day N Night (Lyric Video)

――R&Bの定義は難しいですが、aimiさんが求めるR&Bでいちばん重要視する部分は?

aimi:今作に関して言うと、アップビートな、シングルカットみたいな曲を狙っていないのは確かなんですよね。サウンド感でいうと、SZAとかサマー・ウォーカー、アリ・レノックス、ジャズミン・サリヴァンがやっているようなR&B。過去とのブレンドでもあるんですけど、そういう現行のR&Bを日本語でやるということは大事にしていますね。

――音数の少なさや、音の隙間はどうですか?

aimi:それはありますね。最新の海外R&Bを聴いていると、J-POPのような展開とか音の広がりみたいなものは全然ない。もっとローファイで低音に寄っていて、レイヤーする気持ちよさはコーラスにはあるんですけど、ビートはすごくミニマムというか、めちゃくちゃシンプル。そのシンプルなループの中でどれだけメロディアスなアプローチをするか、ですよね。私は2000年代のR&Bにも影響を受けているので、当時のメロディアスでふくよかなコーラスと、今のすっきりした低音の効いたミニマルビートの融和を考えています。

〈How’s the weather?〉は自分への問いかけの言葉

aimi(写真=西村満)

ーー新曲「How’s The Weather?」は、「Day N Night」を経て制作されたそうですが、どんな作品を目指しましたか?

aimi:「Day N Night」は、私とEMIさんにとって「やっと仲間を見つけた」みたいな、そういう心が近寄った作品になったので、次は私たちが普段思っていることや、内在化している意識・考えをR&Bで表現してみようということで、2時間くらい長電話して話したんです。そこで曲を通してどんなことを伝えたいか、深く話しました。

――その会話から生まれたテーマは?

aimi:ひとつがスピリチュアリティ。自分たちの精神性についてもっと語ることができたらいいよねって。私はめちゃくちゃプランナーというか、いろんなことを計画してやっていくタイプなんです。

――計画しないと不安とか?

aimi:不安だし、走り出せない。出口を決めてから、そこに向かっていくタイプなんです。Go with the flow(流れにまかせる)みたいなところもあるんですけど、大枠は自分でしっかり決めたがるタイプで、生き急いでるんですよね。でも、EMIさんはすごくチルバイブスの人で、そこが対照的なんです。「How’s The Weather?」を作り始めたときに、EMIさんが〈Why’re you rushing through your life なぜ生き急ぐの〉っていう歌詞を提案してくれて、それが自分に刺さりすぎて。私がこんなに強く感じるんだから、世の中にも同じように感じる人がたくさんいるだろうなと思って、そこから生き急ぐ現代人の悩みとか苦しみからの脱却、そういうことを書こうと思ったんです。

――楽曲資料にも「SNS時代におけるメンタルヘルスとセルフケアがテーマ」とあります。セルフケア=もっとゆっくり行きましょう、みたいな感じですか?

aimi:そうです。もっとスローダウンして、自分の生活リズムやペースを整えながら進んで行っていいんじゃない? って。突然、雨に降られたから、雨宿りするかっていう感じ。日々は嵐のように過ぎ去っていくけど、時々、雨宿りして深呼吸しないとバランスが崩れてしまうこともある。そういう深呼吸するような時間を一瞬、一瞬増やしていくことがゆくゆくはセルフケア、セルフラブに繋がっていくんじゃないかって。この曲を歌っていると、「調子はどう?」って自分に問いかけている感じがあるんです。〈How’s the weather?〉=調子はどう? って。

――タイトルを直訳すると、「今日の空模様はどうですか?」っていうことだけど、心模様にも繋がるということですね。

aimi:そうです。ものすごい雨だったり、雷が鳴るくらい怒っているときもあるけど、「もういっか」とか「なんくるないさー」みたいに言えたらいいなと。私的にはそうなれたらいいなという願望ソングなんです。

R&Bの歌詞テーマの変化「鏡に映る自分が一番大事」

――今回のシングルには「Priority」という曲も入っています。これはどのような思いから書いたんですか?

aimi:タイトル通り、「優先順位」がテーマです。EMIさんが去年末に私のイベントに出てくれた直後に、Modesty Beatsのトラックで、この曲の前半のメロディと英語で仮歌詞を書いて送ってきてくれたんです。私もEMIさんも二人とも自分たちの曲を世界中の人たちに聴いてもらいたいという目標が強くあるので、1曲はオール英語詞をやりたかったんですよね。だから、日本語にせずこのまま進めていきましょうということで、全編、EMIさんにメロディを書いてもらいました。そこから私が歌詞を詰めていったんですけど、EMIさんが最初に送ってきてくれた歌詞に「私はあなたの一番になれますか?」っていうフレーズがあって。「私を大事にしてくれる?」っていうのはオーソドックスなR&Bのテーマだと思うんです。

――古典中の古典ですね。

aimi:一方で、私は自分を一番の優先順位に置くことが苦手なんですよ。それがまたセルフケアの話に繋がってくるんですけど。R&Bをもっと盛り上げたいとか、このリリーススケジュールでしっかり行きたいとか、決めたことを絶対実行したいという思いが強くなるあまり、自分のことを忘れてしまうんですよね。

――自分をないがしろにしてしまう?

aimi:無理する方向に行っちゃう感じですね。無理していることに気づけなくて体を壊してから気づくみたいな。そういうことがちょっと続いていたんです。そんな私の悩みと「Priority」という言葉がすごくリンクしたから、2ヴァース目からは〈I’m on The top of my to-do list/Swear I’ll be my No.1 priority〉=「私のToDoリストで私がトップ、私が一番の優先順位になろう」っていうセルフケアソングに変えていったんです。

――日々の暮らしのあらゆる場面で自分を一番に置こうと。

aimi:そう。鏡に映る自分が一番大事なんだからっていう。20代はトキシックな恋愛で大体みんな失敗すると思うんですけど(笑)、30代になってくると恋と日常のバランスが大事になってくる。本当に私たち自身を投影した曲になりました。

aimi(写真=西村満)

――aimiさんは、R&Bの歌詞について、どんな考えをお持ちですか?

aimi:もともとは、R&Bといえば“Love”とか“Relationship”がテーマだと思ってるんです。そういうテーマで大好きな曲はいっぱいあるんですけど、もっとセルフエンパワーメントな曲が年々増えていますよね。たとえばスピリチュアルをテーマにしているジェネイ・アイコとかもそうですし。

――ざっくりいうと「自分を大切に」「自分が大事」をテーマにする潮流がありますよね。ラブソングにしても、「私を大事にしたいから、あなたは要らないの」っていう論法。それで相手の男をケチョンケチョンに言ったりする(笑)。

aimi:そう(笑)。ジャズミン・サリヴァンの『Heaux Tales』とか、今まで語られなかった女性の本音が詰まりまくってる。ガールズグループが隆盛した時代には「あなたに何でもしてあげるわ」っていうようなセクシーさ。そういう色気から、芯のある強さを持った女性の色気というふうに、時代の価値観の変化と共にR&Bの表現が変わってきている。

――aimiさんの歌いたいこともその流れにある。

aimi:今、自分は完全にそういう方向に行っていると感じますね。書きたいことがそういうことばっかりになってます。

――その変化はどのように生まれたんでしょうか。

aimi:もともとはコロナ禍で誰にも会えないような状況でaimiの活動を始めたんですけど、いろんなパーティーで歌わせてもらえるようになって、お客さんを目の前にするようになって、「この人たちに自分のメッセージを伝えたいかも」という思いが日に日に強くなっていったんです。あと、やればやるほど、日本のR&B事情が見えてきて、「あんまりR&Bって盛り上がってないな」と思ったんですよね。作品を出す人はいるし、R&Bっぽいことをやる人はいるけど、「R&Bシーンって今どこにあるんだろう?」と虚しくなってきて。じゃあ、自分たちで作るしかないと思ったときに国内の人を巻き込むことが絶対条件だと。それが明確になってからは、「aimiはどういうアーティストなのか? aimiって誰? 何考えてる人?」という部分をもっともっとレペゼンしなきゃならないなって。そこで辿り着いたのが今回のテーマだと思うんです。自分に向かうというか、自分の苦悩を剥き出しにすること。だから、ポジティブなことを歌っているようですけど、ただただ悩んで苦しんでいる人が音楽で消化しているだけ。それをR&Bで表現するということなんです。

――それが現行の海外R&Bの潮流と重なり始めた。

aimi:そう。重なった(笑)。Black Lives MatterのムーブメントからH.E.R.が「I Can’t Breathe」を出しましたけど、ああいう時代を代弁するR&Bがグラミー賞を獲って、「これが今、USで鳴ってるひとつのR&Bなんだな」と思ったときに、「日本を土壌にする日本のアーティストである私は何を発信すべきなんだろう?」って。そう考えたときに、歌うのは恋愛ソングじゃなかったということだと思います。

――日本でR&Bを盛り上げるにあたって、aimiさんはまず何から始めていこうと考えていますか?

aimi:まずは自分がオープンになることが第一歩だと思っています。「How’s The Weather?」がまさにそうですけど、メッセージでどれだけ親近感を持たせられるか。R&Bをどれだけ親近感があるものに聴かせるか。そこが課題だと思っています。「この曲、いいバイブスだよね」と聴いているうちに、「私、R&B好きかも。だってaimiが好きだから」となるように。その人口を増やす。それがまず私がやらなくちゃいけないことだと思っています。

――楽曲に人格を持たせるということかもしれないですね。

aimi:そうかもしれないですね。隣接するジャンルの中でもヒップホップのすごいところは、アーティストの数は多いんだけど、それぞれが思っていることやルーツをしっかり歌詞に落とし込んで表現することで差別化しているところで。それと同様に、私も、自分がどこからやってきて、何を感じているのかということをもっとわかりやすく伝えていかないといけないなと思います。

――なるほど。

aimi:あとはイベントですね。R&Bを爆音で生歌で披露できる場所が正直あまりないと感じていて。R&Bをやっている人たちがライブをできる場所が少ない。それだとどんなモチベーションで音楽をやればいいんだ? っていうことにもなるから。

――自主イベントの開催を考えていると聞きました。

aimi:夏頃に考えています。昨年12月に『STAY READY』というイベントを自分で立ち上げたんです。Bleecker Chromeの藤田織也くんと、LAと日本を行き来して活動しているKona Roseというシンガー、あとEMIさんにもゲストで出てもらいました。いつ、このジャンルがピックアップされてもいいように準備しておこう、私たちは準備万端だよっていうことで『STAY READY』と名付けました。運営を私ひとりでやったので、めちゃくちゃ大変でしたけど……それでもなんとか会場を満員にすることができました。そこに来てくれたお客さんとは熱い思いを分かち合えた自覚があるし、それを続けていきたいので、2回目を夏頃にやりたいと思っています。

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