コロナ禍に決意した“バンドで生きていく”覚悟 Atomic Skipper、メジャーデビューを経て届ける“真っ向勝負”の音楽

Atomic Skipper、音楽に寄せる覚悟

「陰の部分や暗い気持ちも大事なんだよっていうことを伝えたい」(神門)

神門弘也

ーーメンバーの背中を押す曲になったんですね。この曲を作ったのはコロナ禍ですか?

神門:曲の原案はコロナ禍の少し前からありましたが、完成したのはコロナ禍です。ロックバンドとしての変わらない価値みたいなものが、コロナ禍だからこそちゃんと歌詞にできたなと思います。個人的には、この曲はこの先さらに進化をしていくんじゃないかなとも思っています。

ーー「ロックバンドなら」は、2020年7月に配信されたシングル『解放宣言』に収録され、今回再録という形で新たにレコーディングし、パッケージされました。今はバンドの代表曲でもありますが、今のAtomic Skipperにとってどのような楽曲になっていると思いますか?

久米:ライブで積み重ねてきた回数が桁違いに多い曲で。毎回、演奏するたびに曲の意味や向き合い方も変わっていっています。そのうえで、今の僕らが演奏する「ロックバンドなら」を『Orbital』に詰め込むことができました。中野の歌い方も、前回と今回では違っているし、ベースにしてもフレーズは一緒ですけど、ライブを意識してドラムと目を合わせながらレコーディングをしました。

松本:ライブでやっているうちにテンポが上がっちゃって。今回はライブに合わせたテンポで再録しました。

ーー曲の解釈も変わりましたか?

松本:そうですね。デモのときは自分に置き換えて聴いていましたけど、ライブを重ねていくうちに、お客さんや対バンの仲間の顔が思い浮かぶようになって。

神門:ふたりとも、内に向いているように感じていたこの曲のエネルギーが、ライブを通して外に向くようになったんじゃない?

久米・松本:そう!

ーー中野さんはいかがですか?

中野:久米が言ったように、最初にレコーディングしたときと歌い方も全然変わっていて。最初のレコーディングのときは、コロナ禍ど真ん中だったこともあって、どちらかというと「そうなってほしい」という願望とか、「信じたい」という気持ちを込めて歌っていました。でも、今は状況も落ち着いてきて、ライブハウスの盛り上がりも徐々に前のような形に戻ってきて、あのときの願望が現実になっている。その真実を歌っているから、より芯のある歌になっているのかなと思います。コロナ禍で出会ったバンドやライブハウスの名前を具体的に思い浮かべて歌うこともできているし。そういう意味で、芯のある歌、みんなの覚悟やいろんな人の想いが乗った「ロックバンドなら」になったのかなと思います。

Atomic Skipper - ココロ(Music Video)

ーーアルバムの1曲目を飾る新曲「ココロ」は、バンドの決意を歌った力強い曲ですが、祝祭感もあって、熱苦しすぎない曲だなと感じました。

神門:ありがとうございます。これまでは、僕が作ってきた曲に対して、チームのみんなから「ここがこうだから、こうしてほしい」と具体的に意見をもらっていたのですが、今回はアルバムのリード曲ということもあって、「なんか違う」みたいな意見を全部言わせてほしいと言われたんです。だから、何度も作り直して、どんどん煮詰まっていって。そうすると、どうしても熱苦しいものになっていっちゃうんですけど、熱苦しいところだけじゃなくて、陰の部分や暗い気持ちも大事なんだよっていうことを伝えたいと思って。そうやって狙って作ったところもあるので、感じ取ってもらえてうれしいです。

ーー神門さんは、ポジティブな感情や熱さだけでは伝わらないものがあると思っている?

神門:僕が歌詞を書くうえで、それは大前提で思っています。熱い楽曲が聴いている人を鼓舞してくれる瞬間ももちろんあると思いますけど、人間だから感情にもいろんな波があって。そういう波の中で、いろいろな寄り添い方をしたいと思っているんです。ネガティブなとき、ポジティブなとき、どんなシチュエーションで聴いても寄り添えるように、楽曲の輪郭が美しく見えるようにということは、曲を作るうえで常に考えています。

ーー中野さん、久米さん、松本さんの3人はこの曲を初めて聴いたとき、どう感じましたか?

久米:デモを聴いたときに「あ、もうこれ絶対リード曲じゃん」と思って。すぐにベーシストとしてこの曲でやりたいことが思い浮かんできました。

松本:僕は、基本的に神門さんが作るメロは全部好きなので、今回もリード曲かどうかの前に、「メロも抜群だし、歌詞も最高!」と思いました。そのあとに、リード曲として自分たちのことを知ってもらえる楽曲にするために、ドラムでは何ができるかを考え始めました。

中野:私はこの曲を初めて聴いたとき、まず自分自身が背中を押されました。だからこそ、この勢いをそのままリスナーにも届けたいと思いました。この曲はすでにライブでもやっているんですが、歌っていく中で「変わることに対して恐怖心を持たなくていいんだ」「変わってもブレなければいいんだ」ということにも気づいて。そのことを、この曲できちんと見せられたらいいなと思っています。

松本和希
松本和希

ーーこの曲は、始まりの中野さんのブレスでまず引き込まれますよね。

中野:ありがとうございます。

神門:歌い出しにはめっちゃこだわりました。作り手と歌い手が違うからこそ、「この人が歌うから価値がある」と思ってもらわないといけないし、何よりまずは聴いてもらわないと始まらない。そのためのインパクト、おっしゃってくださったようなブレスを含めたボーカルの一挙手一投足、ボーカルの持っている力を最大限に押し出せたかなと思います。

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