『ぼっち・ざ・ろっく!』結束バンドが持つ楽曲の魅力は? アニメ&ロックファンを惹きつける邦楽バンド特有の“青臭いエモさ”

 ロックは、本当に死んだのか? たしかにグローバルではヒップホップの音楽売上が、ロックのそれを上回って久しい昨今、日本においてもDTMソフトを活用したソロアーティストの存在が目立つ。ティーンエイジャーが最初に音楽を始めようと考えたとき、バンド以外の選択肢を選ぶことも珍しくはなくなった。

 バンドシーンの勢いがやや弱まっているように感じる時代において、紛れもないロックアルバムを叩きつけたバンドがいる。昨年放映されたアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』に登場する劇中のバンド、結束バンドだ。「陰キャならロックをやれ!」をキャッチフレーズに女子高校生がバンド活動に青春を燃やす物語の『ぼっち・ざ・ろっく!』。その主題歌や劇中歌を中心に収録されたセルフタイトルアルバム『結束バンド』は、オリコンチャートでもアルバムランキングで首位を獲得するなど大きな反響を呼んだ。もちろん、このようなセールス的な成功だけでなく、楽曲や演奏のクオリティの高さにも注目が集まっている。

【LIVE映像】「フラッシュバッカー」/ ぼっち・ざ・ろっく!-SPECIAL STUDIO LIVE-

 同アルバム全体に通底するのは、歌主体のシンプルでストレートなギターロックサウンドである。BUMP OF CHICKENやASIAN KUNG-FU GENERATIONのような2000年代以降に活躍した邦楽ロックバンドにも通じる「青臭いエモさ」は、物語上のテーマとも符号するだろう。また、邦楽ロックへの結びつきは、KANA-BOONの谷口鮪やtricot/ジェニーハイの中嶋イッキュウ、the peggiesの北澤ゆうほのような楽曲提供のラインナップを見ても浮かび上がってくる。他方でこのような邦楽ロックをバックグラウンドにした音楽性とは対照的に声優の青山吉能、鈴代紗弓、水野朔、長谷川育美によるボーカルは、物語から地続きの世界観を感じさせ、一般的なキャラクターソングとまではいかないものの、登場人物の後藤ひとり、伊地知虹夏、山田リョウ、喜多郁代の存在を思わせる質感となっている。

【LIVE映像】「青春コンプレックス」/ ぼっち・ざ・ろっく!-SPECIAL STUDIO LIVE-

 また、あわせて注目したいのは、演奏のクオリティである。物語設定上はアマチュアの高校生バンドなわけだが、実際に本アルバムの演奏を担当したのは、ギターのakkin、三井律郎であったり、ドラムの比田井修やベースの高間有一といった手練たちだ。テクニック、アレンジ、安定感どれをとっても圧倒的なサウンドに仕上がっている。

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