“ヒゲダンらしさ”を感じる楽曲のポイントとは? Official髭男dism「TATTOO」から考察

 Official髭男dism(以下、ヒゲダン)の新曲「TATTOO」が4月21日に配信リリースされた。TBS系金曜ドラマ『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』の書き下ろし主題歌でもある「TATTOO」は、ミドルテンポの曲調でグルーヴィーなAOR調のポップソングだ。

 いささかただごとならぬタイトルにも思えるが、歌詞は強さと弱さが混じり合うやさしさに満ちている。強い絆でつながる二人のなかに刻み込まれた、少し気恥ずかしいほどポジティブな思いをタトゥーになぞらえるのは見事だ。〈消えない 消さない 消させやしない〉という印象的な一節に象徴的なように、タトゥーにつきまといがちなネガティブなニュアンス(たとえば、「デジタルタトゥー」のような表現があるように)を、むしろ〈消させやしない〉とポジティブに読み替える反転の発想が驚きを与えている。

 とはいえ、単に楽観的というわけではなく、ふたりを取り巻くネガティブなことも引き受けた上で前を向く陰影が感じられるのが、ヒゲダンらしい深みと言えよう。

 楽曲自体は、もっと渋く、あるいはチルな路線にも寄せられそうにも思える。けれども、ここでも「まさにヒゲダン」と言いたくなる、ケレン味あふれるサウンドと人の心をつかむフレーズが満載だ。

 まずは、サウンドに耳を傾けてみよう。楽曲の影の主役はドラムとベース。アタックが強く、しっかりと芯を感じるカラッとしたサウンドでメロディを支えるドラムのビートは、ヒゲダンの作品でミックスを手掛ける小森雅仁のシグネチャー的な響きを持っている。また、メロディと同じくらい自在に動いて楽曲に表情を与えるベースラインは、シンプルにループするビートにしなやかなグルーヴを与えていて心地よい。ギターやキーボード、コーラスは楽曲にきらびやかな質感を与えることに専念していて、骨太なリズム隊がつくる空間を幸福感あふれる雰囲気で満たしている。パンチがあり、華やかで、かつ軽やかなサウンドに仕上がっている。

 また、メロディと言葉の扱いにも、ヒゲダンらしさが隅々まで詰まっている。たとえば、「TATTOO」の9割以上は歌だ。ボーカルの入ったポップスなのだから当然では? と思われるかもしれないが、4分48秒という曲の長さのなかで、歌がないのは実質イントロの20秒だけ(アウトロは歌と一緒に終わり、余韻を残すのみ)。間奏がまったく存在しないのだ。

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