Official髭男dism「ミックスナッツ」で実現した『SPY×FAMILY』とのシンクロ 歌詞とサウンドで描ききった目まぐるしい日常

ヒゲダン「ミックスナッツ」レビュー

 曲が始まった瞬間から、音の奔流に呑まれるようだ。駆け上がるピアノ、うねるようなギター、高らかなホーンセクション。Official髭男dismによる「ミックスナッツ」の狂騒のメロディは、凄腕のスパイ・黄昏が身を置く目まぐるしい日常そのものだ。

 アニメ『SPY×FAMILY』のオープニング主題歌、「ミックスナッツ」。タイトルの由来が登場人物・アーニャの大好物であるピーナッツに着想を得ていることは、原作を読んでいる人ならすぐにピンとくるだろう。とはいえ、ピーナッツひとつからよくもここまでと思うほど、この楽曲には『SPY×FAMILY』のエッセンスが詰まっている。そんな「ミックスナッツ」のサウンドと歌詞の魅力を、6月23日に出演した『SONGS』(NHK総合)の様子も交えながら紐解いていく。

 『SPY×FAMILY』は、スパイの男とその疑似家族をめぐるアクションコメディ。冷戦状態にある東国と西国の和平維持のため暗躍する西国ウェスタリスの凄腕スパイ・黄昏は、極秘任務オペレーション<梟(ストリクス)>のため、精神科医ロイド・フォージャーとして、孤児院にいた少女アーニャを娘に、仕立て屋で出会った女性ヨルを妻とし、偽装家族を作り上げる。だが、“娘”アーニャは実は人の心が読める超能力者であり、“妻”ヨルの正体は殺し屋だった。3人はお互いに本当の自分を偽りながら、仮初の家族を演じることとなる。

 マンガ連載時から強い人気を誇っていた『SPY×FAMILY』。今年4月時点でのコミックス累計発行部数が1250万部だったのが、アニメ放送開始から約2カ月で増刷に次ぐ増刷で850万部を売り伸ばし、累計部数2100万部を突破するなど、驚くべき「アニメ効果」を上げている。

 そんなアニメOPの楽曲タイトルにもなっているミックスナッツ。レコーディング中にもつまむことがあるというそれについて、藤原聡(Vo/Pf)は定番で入っているアーモンドやカシューナッツ、くるみが木の上になるのに対し、ピーナッツは地中に実るものであり、つまり「スパイだ!」という発想から、作品世界を歌詞に落とし込んだという。スパイ、超能力者、殺し屋と、それぞれ決して知られてはならない秘密を抱えて社会を生きる3人はまさしく、「ミックスナッツに紛れ込んだピーナッツ」だ。

 原作マンガ第1話の見開きイラストには、テーブルの上では仲良く家族団欒しながら、足元には死体や変装道具が転がった情景が描かれている。これこそまさしく〈テーブルを囲み手を合わすその時さえ/ありのままでは居られない〉、フォージャー家の実態である。

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