稲垣吾郎のスタンスと役柄の生き様の重なりーー主演舞台『サンソン』キャストの魅力を引き出す演技

白井組との相性の良さと、まだ見ぬ作品への期待

 稲垣はこれまで多くの舞台を経験してきた。ロマンティックなコメディタッチの作品もあれば、ブラックユーモア溢れるシニカルな作品も。そのなかで、演出・白井晃&脚本・中島かずきの白井組作品における稲垣の姿は、より力が入っているように見える。今回パンフレットに寄せられた稲垣の言葉にも「僕はお二人との作品は、何度でも再演を重ねたいと思っています。命続く限り、何度でも」と、その思い入れの強さが窺えた。

 同じ白井組で2015年10月に上演された『No.9-不滅の旋律-』で、稲垣はベートーヴェンを演じた。宿命を抱えた孤高の人物という点では、今回の『サンソン』にも通じるものがある。だが、稲垣自身は『No.9』は誰もが知る音楽で彩った「ザッツ・エンターテインメント」。対して『サンソン』は「作品の捉え方も観る人によって変わってくる」挑戦の作品と、エンターテインメントの持つ可能性の幅を感じるほどに違いを持っているようだ。

 最近では、わかりやすく笑顔になれる作品が好まれる傾向にある。しかし、重苦しくわかりにくいエンタメがあってもいい。たとえ賛否両論が生まれたとしても「予期せぬ場所に連れて行ってくれる」作品を生み出していくこと。そんな気概を白井組に感じているようだ。その職人魂とも呼べそうな強い思いが、稲垣がブレずに持ち続けてきた美学とも近いものを感じる。

 稲垣は役者として「続けることに意味を見出す方」だと語っていた。自分の信じたものを作り続けていくこと。その一つひとつの経験を重ねて、その都度に課題を見つけて、模索して……そうしてゴールのない何かを追いかけていく。

 そんな稲垣の終わりなき挑戦の過程で、私たち観客はさまざまな人の魅力を知ることができそうだ。今回の舞台を作り上げたキャストやスタッフのこと。そして、観劇前には全く知らなかったサンソンのこと、そして歴史に名が刻まれていない人たちのことも好きになっているように。稲垣と白井組の舞台作品で、ぜひとももっと多くの人生に触れてみたいと思った。

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■公演情報
『サンソン―ルイ16世の首を刎ねた男―』
出演:
稲垣吾郎
大鶴佐助 崎山つばさ 佐藤寛太 落合モトキ 池岡亮介 清水葉月
智順 春海四方 有川マコト 松澤一之
田山涼成/榎木孝明

今泉 舞 岡崎さつき 小田龍哉 加瀬友音 木村穂香 久保田南美
熊野晋也 斉藤 悠 髙橋 桂 チョウ ヨンホ 中上サツキ 中山義紘
奈良坂潤紀 成田けん 野坂 弘 畑中 実 古木将也 村岡哲至
村田天翔 ワタナベケイスケ 渡邊りょう
 
演出:白井 晃
脚本:中島かずき(劇団☆新感線)
音楽:三宅 純
 
原作:安達正勝『死刑執行人サンソン』(集英社新書刊)
坂本眞一 『イノサン』に謝意を表して
 
【東京公演】 
日程・2023年4月14日(金) ~ 4月30日(日) 
会場:東京建物 Brillia HALL
お問合せ:キョードー東京 0570-550-799(平日11:00〜18:00/土日祝10:00〜18:00)
主催:キョードー東京/TBS/イープラス
後援:TOKYO FM/TBSラジオ
 
【大阪公演】 
日程:2023年5月12日(金) ~ 5月14日(日) 
会場:オリックス劇場
お問合せ:大阪公演事務局 0570-666-898(11:00〜18:00 日・祝除く)
主催:「サンソン」大阪公演製作委員会
 
【松本公演】 
日程:2023年5月20日(土) ~ 5月21日(日) 
会場:まつもと市民芸術館 主ホール
お問合せ:サンライズプロモーション北陸(新潟)025-246-3939
主催:キョードー東京/TBS/イープラス
SBC信越放送/一般財団法人松本市芸術文化振興財団
 
料金(全席指定・税込) S席13,500円 A席10,000円/(松本公演のみ)B席 7,500円
 
公式ホームページ:https://sanson-stage.com/

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