斉藤和義、アコースティックで目指したロックなグルーヴ 30周年を迎えてさらに高まる“もの作りへの意欲”も語る

The Beatlesの影響で“アコギをしっかり聴かせる”ミックスに

――「底無しビューティー」はオーセンティックなロックンロールに、The Beach Boys的なコーラスが重なっていて。アルバム全体もそうですが、ルーツミュージックの色合いが強いのかなと。

斉藤:今回に関して言えば、2021年に『ザ・ビートルズ: Get Back』というドキュメンタリー映画があったじゃないですか。すごい好きで何度も観返してるんですけど、あれは“メンバー4人だけで、なるべくダビングなしで録る”というコンセプトで。あと『Beatles For Sale』(1964年)を改めて聴いて、やっぱりカッコいいなと思ったんですよね。ボブ・ディランの影響もあったのか、エレキギターがガンガン鳴ってるというより、フォークロックだったり、アコギでロックするみたいな感じの曲が多くて。「こういう感じ、やっぱりいいな」と思って、今回は全体的に「アコギでロックするアルバムにしたいな」というのがなんとなくテーマとしてありましたね。なので「底無しビューティー」も、ちゃんとアコギが聴こえるミックスにしていて。あと、去年の弾き語りツアー(『十二月〜2022』)でもアコギを弾いていて、その合間にレコ—ディングしてたので、アコギモードになっていたのも大きいですね。

――アコギと向き合う期間でもあったと。

斉藤:うん。エレキはどうしても音が強いから、(アコギは)かき消されちゃいがちだし、隠し味みたいな立ち位置になることが多いですけど、本来、楽曲のグルーヴ感を出しているのはアコギだったりするので。そこをしっかり聴かせるミックスにしたいというのはありました。

斉藤和義 - 「底無しビューティー」Music Video

――「マホガニー」は〈新しいギターを買った〉から始まるバラードですが、これは実際の出来事を歌にしているんですか?

斉藤:日記みたいな感じで書いた歌詞ですね。去年のツアー前にアコギを買ったんですよ。普段はGibsonが多いんですけど、「Martinの新品がいいらしいよ」って聞いて、それを買ってみて。確かにすごくよくて、ずっとそればっかり弾いてたんですよね。

――〈マホガニーの甘い匂い〉〈仔猫はハードケースが とても気に入ったみたいだ〉と情景が浮かぶようなフレーズが連なっていて。

斉藤:ずっと飼ってた猫が亡くなって、その3〜4カ月後くらいに保護猫をもらってきて。“匂い”もね、ギタリストはアコギを買うと「とりあえず匂いを嗅ぐ」って人が多いみたいですよ(笑)。年季が入ったギターも、もともとの匂いがちゃんと残ってたりするので……そう、ちょうど同じ時期にすごく古い、1930年代のMartinのアコギも買ったんですよ。

――1930年代ってすごいですね。

斉藤:すごく枯れた、いい音がするんですよ。新品のキラキラした音もいいし、両方いいなって思いながら弾いてて。その頃に「せっかくギター買ったんだから、何か録っておこう」と思って適当にメロディを歌ってたら、ほぼそのまま出てきたんですよね。

――それが「マホガニー」だったと。

斉藤:そうです。その場で歌詞もほとんどできて。アルバムとしてまとめる時期になって「そういえばもう1曲録ってたな」と思って聴き返したら、「ほぼできてるじゃん!」って(笑)。「君のうしろ姿」とか「泣いてたまるか」も同じ時期に作ったんじゃないかな。

“PINEAPPLE”はアルバム全体に共通するテーマ

――「泣いてたまるか」は去年のツアーでも披露されていました。あのときはピアノの弾き語りでしたね。

斉藤:そうですね。これも楽器の話なんですけど、ちょうど1年くらい前に、古いアップライトのピアノを買ったんですよ。自分と同い年くらいのピアノなんですけど、それもすごくいい音で、ずっと弾いてて。ちょうどその頃にロシアのウクライナ侵攻が始まって、「なんだかな」みたいな気分のなかで作った曲ですね。歌詞もほぼ同時にできたんじゃなかったかな。

――「泣いてたまるか」の音源にはストリングスも入っていて。アレンジはサザンオールスターズや桑田佳祐さんとの活動でも知られる曽我淳一さんです。

斉藤:曽我さんに参加してもらったのは、今回が初めてですね。「いい人いるよ」って紹介されて、「明日大好きなロックンロールバンドがこの街にやってくるんだ (Album Ver.)」のホーンセクションや、「Over the Season (Album Ver.)」でも弦を四重奏で入れてもらって。デモを聴いた時点で「確かにすごくいい」ということになって、「じゃあ、これもあれも」ってことで3曲にやってもらいました。人柄もいいし、仕事も早くて、ちょっとした直しもすぐやってくれるし、これからもよろしくお願いしますって感じです(笑)。

斉藤和義 - 「泣いてたまるか」Music Video

――アルバムのタイトルを『PINEAPPLE』にしたのは?

斉藤:タイトルは最後に考えたんですけど、いくつか適当につけてみて、どれもピンとこなくて。困ったなと思ってるときに、急に「“PINEAPPLE”ってなんかいいかも」と思ったんですよね。表題曲の歌詞に〈If you break the hard shell, there’s always sweet fruit(固い皮を剥いたら中に甘い果実が詰まってる)〉というフレーズがあって、アルバム全体に共通するテーマにつながるかもしれないなと。あと、今年57歳になるオッサンが“PINEAPPLE”っていうのも面白いかなと思ったり(笑)。

――かわいいですよね(笑)。

斉藤:あとはツアーのTシャツのデザインも考えやすいかなって、途中で思ったりもしました。ジャケットの招き猫は、自分で作ったんですよ。何年か前に古い招き猫を集めるのにハマって、いっぱい集めちゃって。去年の弾き語りツアーのときも写真で紹介したんですけど、あれだけの数が集まると気持ち悪いですよね(笑)。で、そのうち「自分でも作れるんじゃないかな」と思って。せっかくなので登場させてみました。油性ペンで目を描いたんですけど、そのあとにクリア塗装のスプレーを吹きかけたら、ちょっと溶けちゃって。何とも言えない顔になっちゃったんですけど(笑)。

――ギター制作もそうですけど、自分で何かを作るのが好きなんでしょうね。

斉藤:うん、好きですね。木を切ったりとかもそうですけど、作業してると“無”になれるというか。あっという間に時間が経っちゃいますね。

――今年はデビュー30周年。まずはアルバム『PINEAPPLE』のリリース、そしてツアーですね。今回のツアーはバンド編成ですか?

斉藤:はい、5人編成で。音源通りにやろうと思ってもできないし、そもそも自分が一人で録ってる曲もあるので、同じにはならないんですよ。「このバンドならではの感じになればいいよね」とは思っているんですけど、みんな優秀だから、ほっといても「こういう形もあるね」という方向に行くんです。それを発展させるのがツアーですかね。

■商品概要
斉藤和義
ニューアルバム『PINEAPPLE』
4月12日(水)発売

ダウンロード/ストリーミング
https://jvcmusic.lnk.to/PINEAPPLE

・初回限定盤:¥4,400(税込)
三方背ブックケース仕様 CD+GOODS
【30周年限定オリジナルBIGピンバッチ2種】
①30周年リスキャラ丸型BIGピンバッチ 4cm
②ROCK’N ROLL CAN NEVER DIEBIGピンバッチ 縦5cm 横3.5cm

・通常盤:¥3,300(税込)

・アナログLP(重量盤):¥4,290(税込)
見開きポスター封入

・ビクターオンライン限定セット:¥8,800(税込)
初回限定盤+斉藤和義×ギブソン×RUDE GARALLYトリプルコラボTシャツ(サイズ:S,M,L,XL)
https://victor-store.jp/item/36235

<収録曲>
01 BUN BUN DAN DAN   
02 問わず語りの子守唄  
03 Pineapple (I’m always on your side) feat. 藤原さくら
04 底無しビューティー
05 寝ぼけた街に
06 君のうしろ姿 
07 Over the Season (Album ver.)
08 朝焼け
09 明日大好きなロックンロールバンドがこの街にやってくるんだ (Album ver.)
10 100年サンシャイン 
11 マホガニー
12 泣いてたまるか 
13 俺たちのサーカス

斉藤和義『PINEAPPLE』スペシャルサイト

関連記事