SHE’S、シンフォニック編成で増幅する楽曲の魅力 苦境の3年間を昇華した『Sinfonia “Chronicle”』を観て
SHE’Sが管弦楽団を迎えたシリーズライブ『Sinfonia “Chronicle”』を約3年ぶりに開催。過去最多となる東名阪4公演を実施した。ここではファイナルとなった東京公演2日目をレポートする。
ロックバンドが管弦楽団を迎えるというとどこか特別な感じがするものだが、SHE’Sの場合、音源でそれらのアレンジが施されているだけに、むしろデフォルトでこの状態のライブを見たくなってしまう。ということを2019年12月の中野サンプラザ公演のレポートでも書いたのだが、その後『Tragicomedy』と『Amulet』というバンドの代名詞となるアルバム2作をリリースした後の通称“シンクロ”である。自ずとセットリストの構築に関心が高まるというものだ。
新たなセットリストへの期待は1曲目にこれこそ生のストリングスで聴きたかったと膝を打つ「Blue Thermal」。ホーンもクラシック寄りのアレンジで、空をテーマにしたサウンドトラックを聴くような体感に。続いて「Higher」「追い風」と畳み掛けて、ホールの天井を吹き飛ばして風に吹かれるような体感を得た。特に「追い風」は服部栞汰(Gt)と弦のロンングトーンの重なりがライブならではの新味になっている。さらにアイリッシュな旋律のストリングス・リフが生の迫力で響き、木村雅人(Dr)が醸すイレギュラーなリズムが冴える「Masquerade」のアップデートっぷりにニヤついてしまう。2019年時はリリースから3カ月後で生ストリングスに驚かされたが、今は“シンクロ”で外してほしくない曲に育った。