Hakubi、SHE'Sとともにオーディエンスと力強く向き合った夜　『巴・粉塵爆発ツアー ファイナルシリーズ』東京編

　5月20日、Hakubiによる『巴・粉塵爆発ツアー ファイナルシリーズ』東京編が恵比寿LIQUIDROOMにて行われた。2022年3月から4月にかけて、ライブハウスで生まれ育った原点に立ち返り、ともに切磋琢磨していきたい同世代のバンド、そして各地ライブハウスおすすめバンドとのスリーマンを繰り広げたHakubi。ファイナルシリーズの2公演では彼らが憧れる先輩バンドと共演した。

　大阪編でのHump Backとの共演を経て東京編で共演したのはSHE'S。1曲目「Night Owl」から希望的かつ前向きな雰囲気の演奏で会場を包み込む。異国情緒漂う「Masquerade」でもサビのフレーズに合わせてオーディエンスが拳を突き上げ、会場中に早くも一体感が生まれた。服部栞汰（Gt）が「ドラムのまっちゃん（マツイユウキ）から『こういう気持ちでやりたいんです』っていう連絡までもらって。今日はしっかりその気持ちを受け取ってHakubiにバトンを渡せるように、僕らと皆さんとHakubiとで三つ巴になって最高の思い出を作りましょう！」とオーディエンスに熱く語りかける。井上竜馬（Vo/Pf）は自分たちが憧れられるような先輩になれているのかとMCでは不安な様子を見せながらも「Un-science」や「If」など新旧織り交ぜた楽曲で伸びやかな歌声を響かせた。

　後半には井上が「せっかくだからカバー練習したらよかったな」と呟き、Hakubiと出会った頃によく聴いていたという楽曲「在る日々」を即興の弾き語りでワンフレーズ歌い上げる粋なサプライズも。繊細なピアノで繋いだ「Letter」と「Ghost」、5月18日にリリースしたばかりの新曲「Grow Old With Me」の披露など、様々なアプローチで穏やかなムードを作り上げた。

　「自分たちを伝えきる、さらけ出す。それがライブだと思っています」。中盤のMCにてそう語ったのはHakubi・片桐（Vo/Gt）だ。片桐の描く脆さと強さが同居した歌詞、パワフルな演奏から感じるステージに立つ喜び、幾度とない「あなたに向けて」という言葉に表れるオーディエンスと向き合う姿勢。様々な瑞々しい感情を突き抜ける歌声とギター、安定感のあるリズム隊とともに紡いだ。

　Hakubiの3人がSEとともにステージに登場すると、片桐は両手を上げ、拍手を浴びる。「あなたまで届けるよ、よろしくね」と宣言し、「光芒」でスタート。不安と葛藤を伝えるように激しく歌に乗せ、そしてときに細やかなニュアンスをつけながら囁くように歌う。その熱情はギターを弾く手元にも垣間見え、力強いストロークで勢いのある音を鳴らした。

　「どこにも行けない僕たちは」では、弱音を歌に乗せながらも堂々とした片桐の佇まいが、この日集まった“どこにも行けない僕たち”を牽引しているように見えた。ひりひりするような歌声と演奏、それに寄り添うようなヤスカワアル（Ba）、マツイユウキ（Dr）のリズム隊が、激しくも心地のいい音楽を紡ぎだしていく。「良い金曜日を」と言って演奏されたのは「Friday」。クールダウンするように穏やかに紡ぎ、最新曲「Twilight」では、〈生きていくことも死んでしまうことも 怖くてただ私は息をしている〉と渾身の歌声で歌い上げるサビがこれまでにない迫力と切実さを感じさせる。ラスサビではドラムの紡ぐリズムがそれまでと変化することで推進力が生み出され、前に向かって歩みを進める頼もしさを演出した。