藤井風、Netflix配信ライブ映像が浮き彫りにする人間性 規模を拡大する中で表れた“距離感”へのこだわり
終盤はこれまでの活動の集大成のような光景
野外というのも見逃せないポイントである。17時開演という、まだ明るい時間帯からスタートした本公演は、ライブ中に日が沈むという野外公演ならではの演出が施されている。序盤は明るく勢いのよい楽曲で攻め、徐々に日が落ちると楽曲に切なさが宿り、辺りがすっかり暗くなると会場はそれまでと異なる景色へ。特にライブ中盤で披露された「ロンリーラプソディ」前の流麗なピアノ演奏は至極の数分間だ。そして、続く「それでは、」における静寂の中でのピアノとボーカルだけの世界は、彼のライブ史上でも最も美しい瞬間の一つだと感じる。
大会場の開放感、フィジカルな祝祭感、なおかつ音楽的な魅力が詰まったライブ。もとより、これがスタジアムライブ本来の姿なわけだが、コロナ禍真っ只中にデビューした彼にとっては新鮮な景色なのかもしれない。とりわけ終盤の「燃えよ」から「まつり」で、ダンサーたちが集合し、大団円的な展開を見せる豪華絢爛なステージは見事だ。これまでの彼の活動の集大成のような感動的な光景が広がっている。
全体としては2枚のアルバムの収録曲が満遍なくミックスされており、藤井風というアーティストの音楽性や人間性を知るには打ってつけのライブとなっている。曼荼羅風のツアーロゴ、座禅を組みながらの登場シーン、インドの僧からインスパイアされたという前半の衣装、「grace」でのフラッグ演出……ライブを形作る要素の一つ一つに、彼の本質的な部分が包み隠さず表れている。あらゆる点において、今の藤井風を知る上でこれ以上ない映像作品だ。
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◎配信情報
『Fujii Kaze LOVE ALL SERVE ALL STADIUM LIVE』
Netflixにて配信中
https://www.netflix.com/jp/