millennium parade × 椎名林檎、クリエイター同士の深い共振 『地獄楽』OPテーマ「W●RK」が2023年にもたらすインパクト
millennium parade × 椎名林檎。もはや“待望のコラボレーション”という言葉では形容しきれない、日本のポップミュージック史に深く刻まれるべき邂逅が、4月1日に配信リリースされた両者のコラボ曲「W●RK」において実現した。この曲を聴けば、ここで並べた言葉たちが決して大袈裟なものではないことが分かると思う。本稿では、millennium paradeの首謀者である常田大希と椎名林檎のタッグについて紐解きながら、アニメ『地獄楽』(テレビ東京系)のオープニングテーマに起用された同曲について迫っていく。
まずは、常田大希と椎名林檎の出会いについて。実は2人の交流歴は長く、その最初のきっかけは、デビュー以前の常田のライブに椎名が訪れたことであったという。それ以降、2人の交流が始まり、時には常田が自身のデモ音源を椎名に送り、それに対して椎名が感想を送ることもあった(※1)。また、常田曰く、椎名とは2019年から「目的無くユル〜く曲を作りはじめていた」(※2)とのことで、そうした経緯を経て生まれた楽曲「2◯45」は、5月17日にリリースされるCDシングルに「W●RK」のカップリング曲として収録される予定だ。
今回、両者のコラボが一気に実現に向けて動き出したきっかけは、常田がアニメ『地獄楽』の制作チームからオープニングテーマのオファーをもらったことであったという。常田は「こりゃあ二人にぴったりの機会じゃないか」(※3)という直感が働いたようで、改めて椎名に正式にコラボレーションを打診。そして、『地獄楽』への書き下ろし楽曲として「W●RK」が制作された。
それでは、なぜ常田は『地獄楽』という作品を前にして、今こそ改めて椎名とタッグを組む必然性を見出したのか。おそらく、賀来ゆうじによる原作漫画を読んだ常田は、その魑魅魍魎が跋扈する幻想的でグロテスクな世界に魅了され、「百鬼夜行」というコンセプトを掲げるmillennium paradeの首謀者として、その物語に激しく共鳴したはず。そして、『地獄楽』の世界に真っ向からぶつかり合うにあたり、雅やかさ、艶やかさ、美麗さ、そして切実さの表現において卓越したスキルと経験を誇る椎名の力を求めたのではないだろうか。
また、4月1日にオンエアされた第1話「死罪人と執行人」を観て、もう一つ感じたことがある。それは、主人公である死罪人の画眉丸(CV:小林千晃)と、死罪人の打ち首執行人である佐切(CV:花守ゆみり)の関係性は、常田と椎名の間に芽生えているであろう関係性に通じるものがあるのではないか、という直感であった。「死罪人と執行人」というタイトルが象徴しているように、画眉丸と佐切の間には、常にスリリングな緊張感が横たわっている。しかし同時に、謎の島における熾烈な戦いに共に身を投じていく両者の間には、次第に絆にも似た深い繋がりが生まれていく。常田と椎名の間にも、単なる先輩と後輩という間柄を超えた深い連帯が生まれているのではないだろうか。その連帯とは、クリエイターとしての業を背負い、真摯に、妥協なく、自身が理想とする世界を徹底的に追求し続けてきた2人の間にこそ生まれ得る深い繋がりである。冒頭で“待望のコラボレーション”という言葉を用いたが、椎名とのコラボを誰よりも切望していたのは、他ならぬ常田自身だったはずだ。