KALMA、オーディエンス一人ひとりと駆け抜けた熱狂のステージ 大合唱によって生まれた『NO BORDER』の新しい姿

KALMA『NO BORDER』の新しい姿

 そしてここで間髪入れず投下されたのが「1分間の君が好き」。タイトルどおりのショートチューンだが、短距離走のようなこの曲をバンドは何度も何度も繰り返した。1回終えて、「みんなで一緒に歌える?」と「2分目」、そしてメジャーデビュー3周年ということで「3分目」。いつの間にかマイクは客席に預けられ、知らない誰かの声がスピーカーから響いている。「あんまりここに馴染めない人! ここに来るなら今だぜ!」。畑山の声に「もう1分!」とフロアから声が飛ぶ。その声の主に「歌える?」とマイクをパスする畑山。その“ボーカル”のカウントから突入して「4分目」。誰がバンドで誰が観客かもよくわからないことになっている。ぐっちゃぐちゃになって止まったりしながら、結局この「1分間の君が好き」はトータルで5回も演奏された。懐かしいような新鮮なような、ライブハウスの風景。短い曲だが、ライブの空気やKALMAと観客の関係性という意味で、間違いなくこの日のハイライトだったと思う。

 終盤、「ロックバンドをやっていて本当によかったし、今日も生きていてよかった。みんなに会えてよかったです」という言葉とともに演奏された「めぐり」、そして「これでいいんだ」をみんなで大合唱すると、「ボーダー」で本編は終了。ただ、もちろんそれで終わるはずがない。アンコールの声に導かれてステージに戻ってきた3人。畑山は差し入れの寿司を頬張ったまま出てきた。そして、5月開催の対バンツアー『チャレンジャーツアー 2023 ~初夏~』の一部ラインナップを発表すると、金田がすでに上京して東京での暮らしを始めていること、そして畑山と斉藤の2人もこの春に東京に拠点を移すことを報告する。地元を離れる寂しさを口にしつつ「札幌をより大事にするために東京に行きたいと思った。『北海道・札幌、KALMAです』って胸を張って言えるようになるためにこの街に来たいなって僕は思いました。これからも応援よろしくお願いします」と決意を口にすると、フロアからは拍手が送られた。そして披露された「マイシティ」。地元への愛を率直に表現したこの曲に込められた思いがじんわりと会場を満たしていく。

 その後も「blue!!」で大合唱を巻き起こしたり、「スローでイコー」で大団円を迎えたはずが予定外のダブルアンコールを「勝手に」(斉藤)やったり、まだまだライブは続いた。ちなみにダブルアンコールで演奏されたのは「俺たちの始まりの歌」と紹介された「ハレルヤ」、そしてこの日6回目となる「1分間の君が好き」。最後の最後まで、KALMAはオーディエンスと一緒に走り切った。

KALMA オフィシャルサイト

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