中嶋ユキノ、浜田省吾との運命的な出会いから『新しい空の下で』に至るまで “今”を重ねていった先にある未来

中嶋ユキノ、浜田省吾との運命的な出会い

アルバムの一貫した答えは“今を重ねていった先に自分の未来がある”

――では1曲ずつ伺います。1曲目「はじまりの鐘」は?

中嶋:子供の頃から歌が好きで、高校の頃に宇多田ヒカルさんに衝撃を受けてシンガーソングライターになりたいと思ったんですが、当時楽器が弾けなかったので、自分で書いた歌詞にアカペラでメロディをつけていたんです。「はじまりの鐘」はその頃みたいにアカペラで作ったメロディに後からコードをつけて、歌詞を書いたんです。初めは頑張っているサラリーマンやOLさんの日常を描いていて。大変な日常でも夢はいくつからでも始められる、という歌にしようと。でも浜田さんにアドバイスをいただいて、自分に置き換えて考えたら、新幹線に乗ってメンバーと合流して、楽器を機材車に積んでライブに出かける、という歌になりました。

――浜田さんに出会った時に「夢を諦めるのは早い」と言われたことと通じるのかなと思います。

中嶋:そうかもしれないですね。挫折してもまだ頑張れる、という繰り返しで人生を歩んでいる気がするので、それが表れているのかもしれません。「あの頃より幸せでいたい」というのがこの曲の核にあって、あの頃は良かったと振り返る瞬間もあるけど、常に自分をアップデートしていきたい。未来はわからないけれど今の幸せを大切にしたいというのが根底にありますね。アルバムがこの曲から始まることで、「行くぞ!」って気持ちが表れたと思います。

――2曲目「なんでなの!?」は対照的に自嘲気味な歌で。

中嶋:これは女性なら共感していただけるかな?というポイントがいっぱいあるんですけど、ラララでメロディを作って、お天気良くて気持ちいいしお茶でも飲む? みたいな歌詞にしようと思っていたんですが、なんかつまらないなと思って。ギターを弾きながら「中嶋こんなに頑張ってんのに何とかならないの、なんでかな〜!?」って冗談で歌ってたら、これ面白いかもと思ったのがきっかけで。うまくいかないOLさんのドタバタストーリーを描きました。

中嶋ユキノ『なんでなの!?』(Music Video)

――中嶋さん自身のカリカチュアというイメージもありますね。

中嶋:そうですね、自分にもこういう面はあるなって。歌詞にハンバーグをストレス解消に作るってあるんですけど、最後にパンパン!と叩くじゃないですか。これがストレス解消に繋がるんですよ。餃子だと丁寧に包まないといけない(笑)。この曲では生焼けになったというオチですけど、私はむしろ焼きすぎるタイプ。最後に〈なんでなの!?〉って歌っているんだけど、私だけじゃなくてみなさんもそうことあるよね!?って。ゆくゆくはライブでみんなで叫びたいですね。

――3曲目「誰かにそっと」はまたガラリと雰囲気が変わって孤独感漂うバラードです。

中嶋:これは、すごく落ち込んだ日があって。帰宅してポツンと座ってたらギターが目に入って、おもむろに手に取ってマイナーコードでポロンポロンと弾いて歌い始めたら、いつの間にか曲を作っていて。 “あなた”をかき消そうと“誰か”を探しているんだけど結局は“あなた”に戻ってしまうという主人公にしたくて。なので、“あなた”という言葉が最後にしか出てこない。自分の中で新しい書き方をした曲ですね。

――新しい書き方ができたと気づいた時は?

中嶋:部屋の中でガッツポーズ!うまくいかない時はうまくいかないんですけど、うまくいく時は歌の主人公が勝手に頭の中でドラマを作り出している。そうすると手が勝手に言葉を生み出し始める。これが歌詞の面白いところなんですけど、なんとも言えない感覚で、ドラマの1話から最終話まで一気に繰り広げてくれる。それで書けた時は、よし! って。この曲はその書き方でした。最初は恋愛ソングにしようとは思ってなかったんですけど、やっぱり最後に行き着いたのは“あなた”でした。

――よく作家さんが、書いているうちに主人公が一人歩きすると言いますけど、歌詞も同じなんですね。さて4曲目「虹」は、Fairlifeの曲ですね。

中嶋:これは、原曲では岸谷香さんが歌われていたんですけど、浜田さんが「中嶋さんの歌声と歌い方に合うんじゃないか」と。ライブでも映える曲になるんじゃないかとご提案いただいてカバーさせていただきました。

――浜田さんのライブなどで歌ったことは?

中嶋:聴いたことはありましたが歌ったことはなかったんです。自分では表現できない言葉、書けない言葉をどんな風に歌うか考えて練りながらレコーディングをした曲ですね。〈あなたの記憶が/碇(いかり)となって 私をとどめている〉って、すごいですよね。作詞の春嵐さんは小説家の小川糸さん。この表現は自分では書けないなと、すごく勉強になりました。

――歌った感覚はどうでした?

中嶋:この曲の主人公は別れた人と住んでいた部屋にまだひとりでいて、引っ越せないままでいる。好きな人には幸せになってほしいけど自分はまだその人のことを思っている。その半々の気持ちで歌うといいねというお話を浜田さんとして。大人のラブソングで、感情を込めるより、淡々と言葉を紡ぐように歌いました。

――浜田さんの反応は?

中嶋:「やっぱり合いますね」と。この曲を選んで良かったと言ってくださいました。浜田さんご自身も好きな曲みたいで。歌えて良かったです。

――「All or Nothing」は、また自分を鼓舞するような曲ですね。

中嶋:この歌は、ノンフィクションソングと言っていいのではないでしょうか。歌い出しの、〈朝っぱらから YouTube 開いて〉〈心のどこかで いいね!をつけてしまう〉って旅先のホテルで実際に起きたことで。これも元は違う歌詞だったんですけど、浜田さんから自分自身のことを書いたらどうですか?と言っていただきました。誰かに憧れたり誰かと比べたりしてしまう自分が、どこかにいるんですよね。でもその人にはなれないし、真似しようとしても自分は全然違うし。自分自身に向けて歌った曲ですね。

――こうして赤裸々に自分のことを歌うというのは、中嶋さんにとってどうでした?

中嶋:以前「わたしのはなし」という自分自身の曲を書きましたが、それ以来で新鮮でした。〈お腹は空いてしまうし/寝たら半分くらい忘れちゃうけど〉って実話ではあるんですけど、浜田さんからは「この部分は、聴いた人が共感できるような人間味が出ていますね」と。

――そういう風に書くことに今までは抵抗があったんですか。

中嶋:今まではあったんですけど、これができた時に、意外と曝け出すのも悪くないなって思いました。普段は、これを言ったら傷ついてしまう人がいるだろうとか思っていたけど、実は人ってそんなに他人のこと気にしてないかもって。客観的に見た時に、そんなに重たいことでもなかったかなと思いますね。

――もっと掘り下げた中嶋さんがこれから見えてくるのかもしれませんね。最後の「新しい空の下で」は、この作品のきっかけということでしたが、これを最後に置くことで見えてくるものがありそうですね。

中嶋:そうですね。明日がどうなるかわからない、未来がどうなるかわからないと誰もが思うことなんですけど、この曲で私が最終的に行き着いたのが、今この瞬間のひとつひとつの積み重ねが明日や未来に繋がっていく、ということでした。だから今に答えがある、っていうふうに最後を締めたんです。

――哲学的でもありますが、どっしりスケール感があって深遠な曲ですね。そして答えは風の中ではなく今にある、と。

中嶋:漠然と不安を抱えているんですけど、考えても、今この瞬間に見えてるものを一番大事にしないといけない。このアルバムの一貫した答えは、今を重ねていった先に自分の未来がある、ということなのかなと思います。

――今作のテーマはそこなんですね。そしてこれを携えてのツアーも始まります。前回のようにトリオで回るんですか。

中嶋:コロナ禍になってからベースが加わったので4人編成で。今までで一番濃いツアーになりそうです。私自身もコロナ禍でライブをしてきて、皆でここで歌ったら楽しいだろうなと思う瞬間がたくさんあったんですけど、声出しできなかった期間を経ていよいよ一緒に歌える日がきました。皆さんとコミュニケーションしながら、楽しめるライブにしたいなと思います。

『新しい空の下で』
『新しい空の下で』

■リリース情報
『新しい空の下で』
2023年3月15日(水)Release
価格:¥1,980(税込)
<収録曲>
01.はじまりの鐘
02.なんでなの!?
03.誰かにそっと
04.虹
05.All or Nothing
06.新しい空の下で

■ツアー情報
『中嶋ユキノ アコ旅2023 〜新しい空の下で〜 』
※終了分は割愛
2023年3月25日(土) 福岡 ROOMS
時間:開場 16:30 / 開演 17:00
ドリンク代¥600
お問合せ:BEA 092-712-4221(平日 12:00~17:00)

2023年4月2日(日) 札幌 cube garden
時間:開場 16:30 / 開演 17:00
ドリンク代¥600
お問合せ:WESS info@wess.co.jp

2023年4月8日(土) 大阪梅田 BANANA HALL
時間:開場 16:30 / 開演 17:00
ドリンク代¥600
お問合せ:YUMEBANCHI(大阪) 06-6341-3525(平日 12:00~17:00)

2023年4月9日(日) 愛知名古屋 BL cafe
時間:開場 16:30 / 開演 17:00
ドリンク代¥600
お問合せ:サンデーフォークプロモーション名古屋 052-320-9100(12:00~18:00)

2023年4月15日(土) 富山 富山県民小劇場 ORBIS
時間:開場 16:30 / 開演 17:00
※ドリンク代なし
お問合せ:FOB企画 076-232-2424(平日 11:00~17:00)

2023年4月22日(土) 広島 Live space Reed
時間:開場 16:30 / 開演 17:00
ドリンク代¥600
お問合せ:YUMEBANCHI(広島) 082-249-3571(平日 12:00~17:00)

2023年4月23日(日) 岡山 MO:GLA
時間:開場 16:30 / 開演 17:00
ドリンク代¥600
お問合せ:YUMEBACHI(岡山) 086-231-3531(平日 12:00~17:00)

2023年4月27日(木) 東京 SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
時間:開場 18:30 / 開演 19:00
ドリンク代¥600
お問合せ:ディスクガレージ 050-5533-0888(平日 12:00~15:00)

前売り¥4,500(税込) 当日¥5,000(税込)
※全席自由席(整理番号付)/整理番号順のご入場となります。
※ドリンク代 各会場により別途必要
※3歳よりチケット必要(3歳未満入場不可)

公式サイト:http://nakajimayukino.com/

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