カバー株式会社CEO 谷郷元昭、バーチャルタレントに求められる資質 個々の“やりたい”を伸ばすホロライブの徹底したサポート力

 多くの人気バーチャルタレントが所属し、YouTubeチャンネル登録総数が7,000万を超えるVTuberプロダクションであるホロライブプロダクション。その1年に1度のビッグイベント『hololive 4th fes. Our Bright Parade Supported By Bushiroad』『hololive SUPER EXPO 2023』が2023年3月18~19日に開催される。

 2020年に開催された『hololive 1st fes. ノンストップ・ストーリー』以降年々規模を拡大し、VTuber界でも恒例の存在となったこのビッグイベントについて、そしてホロライブプロダクションならではの魅力について、ホロライブプロダクションを運営するカバー株式会社CEOの谷郷元昭氏と、『hololive 4th fes. Our Bright Parade Supported By Bushiroad』の運営にも関わる音楽担当スタッフの2人に聞いた。(杉山仁)

ホロライブプロダクション特集

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リアルイベントは“タレントがリスナーに会いに行く”機会

ーー今年は2度目の『hololive SUPER EXPO』、4度目の『hololive fes.』が行われます。それぞれのイベントはどんな想いのもと立ち上げられたのでしょうか?

谷郷元昭(以下、谷郷):2020年の最初にリアル会場でのイベントを立ち上げた経緯については、オンライン上でのコンテンツ提供が中心になっていた中で、「リアルな会場で、リアルにコンテンツを体感していただきたい」「タレントが本当に実在していることを感じていただきたい」という思いからはじめたものでした。我々は当初から「ホロライブ」というグループ単位での活動も大切にしていて、最初の全体ライブ『hololive 1st fes. ノンストップ・ストーリー』でも、統一アイドル衣装などを用意することでそれを実現してきました。そして前回の『hololive 3rd fes. Link Your Wish』にあたって、音楽以外でもファンのみなさんと交流できる機会を持てないかと考え、併設して『hololive SUPER EXPO』が立ち上がりました。

ーー昨年初開催された『hololive SUPER EXPO』の手応えはいかがでしたか?

谷郷:ファンの方々と直接交流できる場所をつくれたり、スポンサー企業さんにも入っていただいて、企業さんにもファンのみなさんとの交流の場所をつくっていただけたりしたことは非常によかったと思っています。一方で、初の取り組みということもあり、様々な面で課題も感じました。そのひとつが、『hololive fes.』を担当する音楽ライブの部署が中心に『hololive SUPER EXPO』の準備をあわせて進めたことでした。とにかく実現するだけで必死だったのが昨年だったと思いますし、その経験を通して「これは全社を挙げて取り組まないといけないことだな」と改めて実感しました。

ーーなるほど。それで『hololive fes.』と『hololive SUPER EXPO』の担当部署がそれぞれ分かれることになったのですね。

音楽担当:はい。私は『hololive fes.』を含む音楽面の担当で、昨年の『hololive SUPER EXPO』についても横で見ていた形にはなりますが、昨年の『hololive SUPER EXPO』では、実際にバーチャルで見ていたものを会場に再現していたのが印象的でした。

ーー「ホロのぐらふぃてぃ」(ホロライブタレントが出演するアニメ企画)にも登場するホロライブの事務所など、色々なものが再現されていました。

音楽担当:そうですね。会場内には事務所が再現されていましたし、タレントのみなさんの衣装も展示されていました。私たちとしては、日頃からリアルもバーチャルも垣根はないと思っていて、タレントがバーチャル上に存在していてもリアルに存在していても価値は変わらないとは思っているのですが、それでもリアル会場で事務所や衣装などを実際に目にしていただけたことはとても印象的でした。

 もちろん、谷郷が話したようにすべてが上手くいったわけではありませんでしたが、会場に神社を取り付けた「ホロライブ神社」ブースなどを筆頭にアトラクションとして楽しめる体験型の展示物を多く用意したり、一緒に写真やプリクラを撮れるブースを用意したりすることもできました。当日は谷郷も会場内の色々なところを回っていて、『ホロライブ・オルタナティブ』のブースではPVに登場していた荷台の前で写真を撮ってもらったりもしました。そうした様々なブースを通して、タレントやホロライブプロダクションの魅力をリアルに感じていただけたのではないかな、と思っています。

ーーグループ全体の音楽フェス『hololive fes.』のこれまでについてはいかがでしょう?

谷郷:2020年に開催した『hololive 1st fes. ノンストップ・ストーリー』の頃は、そもそもお客さんが集まってくれるかどうかも心配していました。また、当時はまだLEDなどもいいものを使える状態ではなく、それほど予算はかけられない中での開催ではありましたが、そんな中でも来場いただいたみなさんが盛り上がってくださったことがとても印象的でした。そして、『hololive 2nd fes. Beyond the Stage』、『hololive 3rd fes. Link Your Wish』と続いていく中で、前回の3rdフェスでは生バンド形式のARライブを実現し、とても迫力のあるライブを楽しんでいただけたのかな、と思います。それまでのフェスでは、タレントだけが出てきて歌唱を聴いてもらう形だったのに対して、昨年はそれ以外の要素も含めて、よりエンターテインメントとして楽しんでいただけるものにできたのかな、と思います。

ーー『hololive fes.』については、今や約1年に一度のペースで開催されるホロライブの恒例イベントとして、リスナーのみなさんにとっても恒例のイベントになっていますね。

音楽担当:年一回開催される、ホロライブのほぼすべてのタレントが参加するイベントですし、普段は積極的には音楽活動をされていないタレントもステージに上がるという意味でも、とても貴重な機会になっていると思います。もちろん、タレントの人数が増えるにしたがって開催日数も増えていますし、ライブ自体も長尺になっていますが、その辺りも含めてみなさんが待ってくれているものを提供できているのかな、と感じているところです。また、開催ごとに技術も進化してきました。今も発展途上ではありますが、まだ技術的に確立されていなかった1st Fes.を経て、2nd Fes.では終盤にAR演出が加わり、昨年の3rd Fes.では生バンドを迎えた有観客でのARライブが実現しました。

ーー特に昨年は、会場で観させていただいても臨場感や没入感をより強く感じました。

音楽担当:私たちは、普段はオンライン上でリスナーのみなさんがバーチャルな世界に没入していただくためのコンテンツを考えているので、その場合は「リスナーのみなさんがタレントに会いに行く」形になっていると思うのですが、リアル会場でのライブは対象的に、「タレントがリスナーのみなさんに会いに行く」機会です。そのため、我々としては「手を伸ばせば届くんじゃないか」と思ってもらえるような臨場感のあるステージを心がけていますし、それをすべてのタレントのファンのみなさんに体験していただきたいと思っています。そう考えると責任重大だとは思いつつ、私達自身も楽しく準備をしています。

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