カバー株式会社CEO 谷郷元昭、バーチャルタレントに求められる資質 個々の“やりたい”を伸ばすホロライブの徹底したサポート力

バーチャルタレントの資質は“やりたいこと”と“目標”を持っていること

ーー最近では東京観光大使にさくらみこさん、がうる・ぐらさん、森カリオペさんが就任するなど、ホロライブプロダクション所属タレントの活躍の舞台も多岐に亘っている印象です。世間に対するバーチャルタレントの認知についても、その広がりを感じる部分はありますか?

谷郷:ようやく「聞いたことはある」というレベルになってきたのかな、という感覚で、「まだまだ大きくは変わっていない」と思います。ファンのみなさんの裾野は広がってきていて、以前は20代中盤~30代前半の年齢層の方々が見てくださっていたものが、現在では中高生のリスナーさんが非常に増えています。また、そのご家族が子供の趣味を通じてホロライブのタレントを認識してくださるケースも増えていて、ホロライブを知ってくださる方々の層は年々広がっています。

 ただ、一方で、実際に配信を見たことがあるかというと、その部分はまだまだファンの方のみにとどまっているのが現状です。もちろん、近年はコンビニとのコラボ企画で「ああ、これがホロライブなんだ」とビジュアルを認識していただいたり、音楽でヒットチャートに乗ることで、知らないうちにVTuberのコンテンツにYouTube以外で接していたりすることも増えてきました。我々としては、よりYouTube以外での露出も強化していきたいと思っているところです。

ーーホロライブプロダクションを運営する際にみなさんが大切にされていることはどんなことですか?

谷郷:それはやはり、「ひとりひとりがやりたいことをサポートしていくこと」に尽きると思います。ホロライブプロダクションには雑談が得意な人、歌が得意な人、ゲーム実況が得意な人など様々なタレントがいて、ひとりひとり個性も違いますし、目標も違います。ですから、みんなでグループを盛り上げるために「年一回のフェスはやりましょう」ということは決めていますが、普段の活動についてはこちらから押し付けることはせずに、あくまでそれぞれのタレントのやりたいことや夢を叶えるサポートをすることが大切だと思っているんです。

ーーあくまでタレントさんが何をやりたいかが大切なのですね。

谷郷:そうですね。ホロライブのタレントは基本的にはSNSタレントなので、YouTuberと同じで、ひとりひとりがクリエイターで、ひとりひとりが主体となって活動しています。日々自分が前面に出て配信をしたり、様々な活動をしたりしているので、我々はその活動をサポートする存在として、ひとりではできないことをやれるような環境を整えたり、会社の規模を大きくすることで、できることを広げていきたいと思っています。

ーー谷郷さんご自身も、「YAGOO」の名称でタレントのみなさんやリスナーさんから慕われていると思います。この辺りについてはどう感じていますか?

谷郷:そうですね……タレントからは特に慕われてはいないんじゃないかな、と思っているのですが……(笑)。リスナーのみなさんからそういった声をいただけることはとてもありがたく感じています。私としては、あまり自分が前に出たくはないのですが、VTuberプロダクションを運営していく上で、まだ知らない方に信頼を感じていただくことはなかなか難しいと思っているので、自分が出ていくことで「こういう人が運営している会社なんだな」という一定の信頼感を醸成していけているのかな、と思っています。ただ、基本的にはいなくても成立した方がいいと思っているので、自分が出ていなくとも「この会社だったら安心だ」と思ってもらえるようなことを目指していけたら、それが理想的ですね。

 VTuberという職業は、「自分がやりたいこと」がなければやっていけない職業で、日々色々な形で前に出てお客さんを喜ばせなければいけない。「楽しそうにやっているよね」というだけで成立するような甘い職業ではありません。ひとりひとりがプロフェッショナルとして目標を持って活動したり、磨くべき技術を持ったりしていることがとても大切な職業です。そして我々は、あくまでそのサポート役として、「タレントたちがやりたいことに応えられるアセットを用意したい」「機会提供をしたい」と思っています。メジャーレーベルさんと連携することもそのひとつですし、日本武道館でライブをしたいという方のために武道館を抑えられるような会社になることもそのひとつです。そんなふうに、所属タレントのそれぞれの夢を実現できるようなケーパビリティを獲得していきたいな、と思っています。

ーーVTuberに必要な資質はどんなものだと思われますか?

谷郷:基本的には、何かしら他の人と比べて突出した魅力を持っていることだと思います。ダンスが上手いのか、歌が上手いのか、ゲーム実況の中でもRPGが上手いのかFPSが上手いのかと種類は違っても、その人ならではのスキルが必要です。そしてその技術を磨くためにも、モチベーションの源泉になる「目標」がすごく大事なのかな、と思います。タレントのみなさんは、VTuberとして長い時間をかけて活動することになりますから。もちろん、セルフプロデュースを出来る人と出来ない人がいるので、「こういうことがやりたいです」というタレントに「そのためには何をやっていけばいいか」とこちらでマネジメントできる部分もありますが、自分自身で何かやりたいことを持っていて、そのために進んでいけるような方でないと、活動を続けることはなかなか難しいんじゃないかと思います。

ーー長く活動していくことを見据えて、自分で考えていける方であることが大切なのですね。所属タレントについて、意識の変化を感じることもあれば教えてください。

谷郷:たとえば、ホロライブがはじまった初期の頃に入ってきてくれたタレントは、まだVTuberが職業として成り立つかどうか分からない中で飛び込んできた方たちで、ものすごいベンチャースピリッツを持って入ってきてくれたと思います。そういったタレントたちが、今は短期的なものにとらわれずに、腰を据えて活動をされているような感じになってきているな、ということは見ていて感じます。たとえば、1期生の白上フブキさんもそのひとりだと思うのですが、彼女はおそらくVTuberの活動を「これはすごい機会なんだ」と捉えてくれていて、我々と一緒に初期から成長してきてくれた中で、今の状況がそう簡単に実現したものではないことも実感していると思います。ですから、最近は特に、焦らずにしっかりと、浮足立たずに活動をするように変わってきているのかな、と感じます。

 一方で、新しく入ってきてくれたタレントたちも、きっとすごく大変だと思っています。というのも、すでに一定の人気がある中でグループに入るということは、最初から期待値が高い状態ではじめなければいけないと思いますから。ですが、みなさんVTuberを職業として捉えてくれて、プロ意識を持ってやってくれているのを感じています。

ーーホロライブENやホロライブIDの海外のタレントさんについてはいかがでしょう? 

谷郷:ENやIDのみなさんについては、コロナの影響で最近までなかなかスタジオに来られない状態が続いていたので、会社としてもまだまだしっかりサポートできている状況にはないと思っています。しかし、日本発のカルチャーとしてVTuberを世界に届けていくためには、ENやIDの海外のタレントのみなさんのサポートもとても大切です。単に3Dスタジオでの配信をすることだけではなく、それぞれの地域でのライセンシーを含む様々な事業を展開していきたいと思っています。日本では最寄りのコンビニなどでもホロライブに触れられる状況が出来つつありますが、海外はまだまだそこまで実現しているわけではないので、タレントのみなさんの認知が拡大していくように努力していきたいと思っています。

ーー海外のリスナーさんからの熱気を感じる機会も増えているのではないでしょうか?

谷郷:そうですね。我々は昨年21個ほどの海外のアニメ系のイベントに出展していて、これはおそらく他のVTuber事務所さんはなかなかやっていないことだと思っています。私も直接現地にうかがう機会がありましたが、そのたびに、それぞれの国にホロライブのリスナーさんがいて、熱量高く応援してくださっていることを実感します。今まで、コロナ禍でなかなか思うように活動をサポートすることが出来ていませんでしたが、今後さらに海外のファンのみなさんに、ホロライブENやホロライブIDのタレントたちの魅力を伝えていきたいですし、さらにいいコンテンツを届けていきたいと思っています。

ーープロダクションのこれからについてお2人が感じていることも教えてください。

谷郷:我々の場合、あくまで「タレントのやりたいことが実現できている」ということが一番ですが、「世界中のファンの方々にコンテンツを届けていけるような存在であり続けたい」とも思っています。その結果、久しぶりに日本から生まれたカルチャーでもあるVTuberというものの魅力を、世界に届けていけると嬉しいです。おそらく今後、海外で日本のアニメルックではないVTuberも多く誕生してくるだろうと思いますが、「VTuberという文化が海外でも根付いていく」という意味でそれ自体はいいことだと思いつつも、その中でもしっかりと、日本発のVTuberプロダクションとして業界をリード出来る存在であり続けたいですし、世界中のファンの方々にタレントの魅力を届けて、VTuberというコンテンツでの存在感をしっかり保っていきたいな、と思っています。

音楽担当:音楽活動についても、0から1を生み出す方々の、その「1」をいかに広げてあげられるか、もしくは新しい知識を持ってそれを「10」にしたり「20」にしたりできるかを考えていきたいと思っています。もちろん、タレントの中には、0から1を生み出して、それを自分で「10」にも「100」にも出来てしまう方もたくさんいます。ですが我々も、そんなタレントたちをしっかりとサポートしていける存在でありたいと思っています。

『hololive SUPER EXPO 2023 Supported By Bushiroad』
主催:カバー株式会社 / hololive production
冠協賛:株式会社ブシロード
運営・制作協力 : 株式会社LIVE FORWARD / 株式会社ブシロードムーブ

【開催日時】
2023年3月18日(土)、19日(日)2DAYS
開場 10:00 / 開演 10:00
※両日ともに上記の時間です。

【会場】
幕張メッセ 国際展示場1-4ホール

『hololive 4th fes. Our Bright Parade Supported By Bushiroad』
主催:カバー株式会社 / hololive production
冠協賛:株式会社ブシロード
運営・制作協力 : 株式会社LIVE FORWARD / 株式会社バンダイナムコミュージックライブ /
株式会社LATEGRA / 株式会社LOGIC&MAGIC / 株式会社VARK / 株式会社FIREWORKS

■hololive stage DAY1 : 2023年3月18日(土)
現地・配信 開場 17:00 / 開演 18:00

■hololive stage DAY2 : 2023年3月19日(日)
現地・配信 開場 17:00 / 開演 18:00

■holo*27 stage : 2023年3月19日(日)
現地・配信 開場 12:00 / 開演 13:00

【会場】
幕張メッセ 幕張イベントホール

<hololive stage DAY1>出演者
ときのそら / ロボ子さん / AZKi / さくらみこ / 夜空メル / 赤井はあと / 癒月ちょこ / 大空スバル / 不知火フレア / 白銀ノエル / 角巻わため / 姫森ルーナ / 尾丸ポルカ / ラプラス・ダークネス / 鷹嶺ルイ / 博衣こより / 沙花叉クロヱ / 風真いろは / アユンダ・リス / アイラニ・イオフィフティーン / クレイジー・オリー / 小鳥遊キアラ / 一伊那尓栖 / ワトソン・アメリア / 七詩ムメイ

<hololive stage DAY2>出演者
星街すいせい / アキ・ローゼンタール / 白上フブキ / 夏色まつり / 湊あくあ / 紫咲シオン / 百鬼あやめ / 大神ミオ / 猫又おかゆ / 戌神ころね / 兎田ぺこら / 宝鐘マリン / 天音かなた / 常闇トワ / 雪花ラミィ / 桃鈴ねね / 獅白ぼたん / ムーナ・ホシノヴァ / アーニャ・メルフィッサ / パヴォリア・レイネ / 森カリオペ / がうる・ぐら / IRyS / セレス・ファウナ / オーロ・クロニー / ハコス・ベールズ

<holo*27 stage>出演者
ときのそら / さくらみこ / 星街すいせい / 夜空メル / 紫咲シオン / 百鬼あやめ / 癒月ちょこ / 大神ミオ / 猫又おかゆ / 兎田ぺこら / 不知火フレア / 天音かなた / 姫森ルーナ / 雪花ラミィ / ラプラス・ダークネス / 鷹嶺ルイ / 博衣こより / 沙花叉クロヱ / 風真いろは / ムーナ・ホシノヴァ / アイラニ・イオフィフティーン / クレイジー・オリー / 森カリオペ / 小鳥遊キアラ / がうる・ぐら / 七詩ムメイ / ハコス・ベールズ

公式サイト:https://hololivesuperexpo2023.hololivepro.com/
チケット詳細:https://hololivesuperexpo2023.hololivepro.com/ticket/

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