星街すいせい、音楽の力で刷新する“VTuber”への先入観 「THE FIRST TAKE」出演で一歩近づいた理想の未来

星街すいせい、刷新する“VTuber”のイメージ

 星街すいせいが、2ndアルバム『Specter』をリリースした。同作にはAyase、じん、田淵智也、ナナホシ管弦楽団ら豪華クリエイターが楽曲を提供。1stアルバム『Still Still Stellar』はアイドル・星街すいせいの名刺代わりになるような作品だったが、今作には彼女の内面性をより深く表現したダークさが滲む尖ったポップソングがラインナップされている。

 1月20日にYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」に出演し、同時視聴者数16万人、公開3日で500万回再生という驚くべき数字を叩き出した星街すいせい。日々の配信で娯楽を届けるVTuberであり、音楽で感動をもたらす歌手でもある彼女は、新たなエンターテインメントの地平を開拓するパイオニアとして国内外から高い注目を集めている。

 星街曰く、歌うことは普段行っているVTuberとしての配信では出せない気持ちを発散する行為だという。今年11月に音楽活動5周年を迎える今、彼女は『Specter』にどんな想いを託したのか。アルバム制作秘話と共に、“VTuber 星街すいせい”のさらに奥にある、彼女の素顔の一端にも触れていきたい。(編集部)

VTuberも普通の存在、1人の人間であると思う

星街すいせい - Stellar Stellar / THE FIRST TAKE

ーー1月20日に公開されて大きな反響を呼んだ「THE FIRST TAKE」のお話から伺いましょう。星街さんは代表曲である「Stellar Stellar」を一発録りで披露されました。

星街すいせい(以下、星街):まずは本当にありがたいなっていう気持ちがあって。「THE FIRST TAKE」にバーチャルの存在が出るのは初めてだと伺っているので、その“初めて”に選んでいただけたことが本当に光栄だし、嬉しいです。VTuberはまだちょっとアングラな感じのジャンルだと思われている方が多いと思うんですよ。でもVTuberという肩書きではあるけど、そこにはアーティストがいたり、アイドルがいたり、ストリーマーがいたり、他にもいろんな特技を持ってる人がいて。そう考えれば、VTuberも普通の存在、1人の人間であると思うんです。私はそういう部分を浸透させていきたい気持ちが以前から強かったので、今回の「THE FIRST TAKE」への出演は私が望む未来への1歩になったのかなと思っています。

ーー収録は緊張しましたか?

星街:さすがに緊張感はありました(笑)。ライブであれば、たとえ音を外してしまったとしてもライブだけの味になったりするとは思うんです。でも「THE FIRST TAKE」は作品として、オープンな場所でずっと残り続けていくものですからね。とは言え、緊張しすぎてもダメだと思ったので、己を上手くごまかしながらなんとか歌いました(笑)。

ーー圧倒的な歌唱だったと思います。アコースティックなアレンジもすごく素敵でしたね。

星街:そうですね。ギターは楽曲を制作してくださったTAKU INOUEさんに、ピアノは永山ひろなおさんにお願いして3人のパフォーマンスになりました。今回のアレンジもお二人に特別に制作いただきました。

ーーどんな反応が届くか楽しみですね(取材は「THE FIRST TAKE」公開直前に実施。歴代トップの同時視聴数16万人を記録し、1月25日の時点で再生数は600万回を突破している)。

星街:あの動画をVTuberという文化を知らない人が見たときにどんな感想を抱くのかなっていうのが楽しみでもあり、ちょっと怖かったりもしますね。アニメのキャラクターではなく、ちゃんと人なんだよっていうことがたくさんの方に伝わってくれたらなって思います。

ーー振り返れば星街さんが音楽活動をスタートさせてから今年の11月で丸5年になりますね。その時間はご自身にとってどんなものでしたか?

星街:本当にもうあっという間の5年だったので、そこまで気持ち的な変化はないかもしれないです。「次はどんな曲を歌おうかな」「みんなはどんな曲を喜んでくれるかな」ということを常に考えて走り抜けてきたので、活動を立ち止まって考える瞬間もあんまりなかったんですよね。

ーーVTuberをスタートさせた時点では音楽活動をするつもりはなかったという発言を過去にされていましたよね。にもかかわらず、コンスタントに楽曲をリリースしながら5年もの間、活動を続けてきた理由はどこにあったんでしょうか?

星街:そもそも歌をやるつもりがなかったのは、自分の歌にあまり自信がなかったからだったんですよ。音楽で食べていけるのは本当に一握りの、本当に歌が上手い方たちだけだと思っていたので、私はそこで売るのではなく、ただただ自分が楽しいと思うことをしようかなって。ただ、ホロライブに入ったタイミングから腰を据えて音楽活動をやれることになったので、そこからはとにかく一生懸命頑張ってきた感じで。音楽がずっと好きだった、っていうのがひとつの大きな理由かもしれないですね。

ーー星街さんの歌を求めるファンがどんどん増えていったのも大きな後押しになったところもあったでしょうしね。

星街:もちろんそうですね。個人勢(個人で活動しているバーチャルYouTuber)の時代に曲を上げたことがあったんですけど、今はその時とは比べ物にならないほど、本当に段違いの方々に見て、聴いてもらえているので。そういった方の期待を裏切らない音楽を届けたいなっていう気持ちが原動力になっている部分もあると思います。自分が楽しいと思うことを音楽として吐き出して、それに共感してくれる人がいたときの達成感は格別ですしね。

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