IVE、NewJeansら全員10代でデビューする例も K-POPアイドルにおける“低年齢化”のメリットと問題点

 日本を含む海外ファンの間ではパフォーマンスや楽曲のクオリティによって語られることが多いK-POPだが、その本質は「アイドル」である。日本に第一次K-POPブームが到来した2010年前後は、K-POPアイドルといえば「完成品として世に出てくる」という言説が当たり前で、練習生になるのも高校卒業前後の年齢であることが多かった。結果的に10代後半から20代前半でデビューするケースが多く、10代前半からデビューすることは珍しくない日本のアイドルと対比されたりもした。

 しかし近年、「K-POPアイドルの低年齢化」が進んできていると言われている。第二世代と呼ばれる2000年代後半から2010年前後にデビューし、現在も活躍中のグループを見ると、SUPER JUNIORはデビュー時最年長は22歳で最年少は18歳、2PMは20歳〜18歳。男性グループよりもデビューが相対的に早い傾向にある女性グループではAPinkはデビュー時、最年少は14歳(韓国年齢では15歳)だが、最年長は20歳で成人していた。当時低年齢と言われた少女時代は18歳〜16歳、SHINeeは18歳(韓国年齢では19歳)〜14歳だったが、そのような状況だったため逆に差別化ができて成功した面もあるだろう。

 しかし、2010年頃のアイドル業界やメディアでは、すでに「アイドルの低年齢化」についての議論が出ていた。最近も2021年デビューのIVE、2022年デビューのNewJeansはメンバー全員が10代で、中学生を含むグループがチャートを席巻したことで再び「アイドルの低年齢化」が話題に。YGエンターテインメントからデビュー予定のBABYMONSTERも最年少メンバーは14歳という若さだ。しかし実際は90年代から女性アイドルに関してはS.E.Sなど10代でデビューし、人気を得たケースも珍しくなかった。問題は「アイドルの低年齢化」というよりも、「練習生の低年齢化」と「デビュー可能な年齢の低年齢化」と言った方が正しいかもしれない。

 生活全般をコントロールしたり、圧倒的な練習量と過酷な競争で知られるアイドル練習生だが、2010年代半ばを境にオーディション受験者の年齢がぐんと下がり、小学生の志願者が目に見えて増えたという(※1)。第二世代のアイドルでもSHINee・テミン、少女時代・ユナ、ソヒョン、BIGBANG・G-DRAGON、SOL など小学生で練習生生活を始めた人たちはいるが、これらは非常に稀なケースだった。2015年に教育部と韓国職業能力開発院が調査した小学生がなりたい職業ランキングで「歌手」が7位に初めて入った(※2)。それまでも「芸能人」という括りでランキング入りしたことはあるが、「歌手」というより具体的な職種としてランクインするようになった。以降、順位を変えながらも2021年までTOP10の常連職種となっている。

 このきっかけとなったのは、この時期に韓国で大流行した『PRODUCE 101』のようなTVのデビューサバイバル番組と言われている。オーディション番組を通じて4カ月でスターになったI.O.IやWanna Oneなどは、子供たちにとって実際に夢を成し遂げた同年代という身近なロールモデルとなった。子供向けの職業を題材にした絵本や書籍には医者や弁護士と並んで「アイドル」の項目があり、BTSやBLACKPINKといったグループは、すでに子供向けの偉人コミックの題材になっている。現在、アイドル志願者たちの多くが小学生や中学生で、20代ではオーディションを受けること自体が困難なケースも増えているという(※3)。練習生の経歴がほとんど、あるいは全くないような10代がデビューし始めた結果、オーディションで20代までを見る必要がなくなってきているということだろう。トレーニングに入る年齢が低年齢化したことで、結果的にアイドルがデビューして人気を得る年齢も低くなっているのだ。

 練習生としてトレーニングを始める年齢が低くなっていくと、10代でも十分な訓練を受けた上で、ある程度の技能を持ってデビューすることができるのはメリットと言えるだろう。同時に、10代というのは心身共に大きく成長し変化していく時期でもあるため、ファンが一緒にその変化を目の当たりにすることで、「成長」や「見守る」というキーワードが生まれてくることも、ファンダム側にとってはより支持を強固にさせる、サバイバル番組に似たメリットもあるかもしれない。また、男性アイドルと比べると未だにアイドルとしての「賞味期限」という社会的目線を短く見積もられがちな女性アイドルにとっては、「若さ」がそのまま活動期間を伸ばすメリットとなる。一方、男性グループの場合は韓国籍を持っていれば必ず訪れる兵役の時期までの活動期間が長くなる。

 例えば2016年のデビュー当時、最年長が17歳で最年少は14歳というSHINee以上の低年齢ボーイズグループとして話題になったNCT DREAMは第3世代に分類されるグループだが、キャリアとしては中堅と言ってもいい7年目の現在でも時折「第4世代」に入れられてしまうほど「若いグループ」の印象を持たれている。実際の年齢も2019年以降デビューの第4世代達とほぼ同世代でもあり、低年齢でデビューしたことがグループ人気を保つにあたってプラスに働いた実例だろう。

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