reGretGirl、失恋を歌うバンドが行き着いた“涙”の新境地 「今まで歌ってきたことを捨てるわけではない」
約2年ぶりとなるメジャー2作目のフルアルバム『tear』を完成させたreGretGirl。怒涛の勢いでライブを行い、その合間を縫うようにコンスタントにリリースを重ねてきた2022年を経て産み落とされた今作の彼らは、これまでとは一味違う。楽曲の振れ幅は明らかに広がり、これまでは見せなかった表情も随所で見せつつ、しかし彼らの王道である切ない恋愛ソングも健在、それらをすべて『tear』=涙という、それ自体がさまざまな感情を思い起こさせる大きな言葉で包み込む。とてもニュートラルでとても正直な、人間くさくて魅力的なアルバムである。
「失恋を歌うバンド」と形容されることも相変わらず多い彼ら。もちろんそれはreGretGirlというバンドを語る上で欠かせない切り口ではあるのだが、その「失恋」というテーマも含めて、より豊かな心の動きがこのアルバムの中には刻み込まれている。前作『カーテンコール』のときは意識的に広げようとしていたその表現の領域が、今作ではとても自然に自分たちのものになった、そんな手応えを感じる。なぜ今彼らはこういう作品を生み出すことができたのか。平部雅(Vo/Gt)、十九川宗裕(Ba)、前田将司(Dr)の3人に語ってもらった。(小川智宏)
「動いてない日が怖いっていう感覚がまだ残っている」(前田)
ーー2022年はリリースもライブもガンガンやって、かなり積極的に活動してきましたね。
平部:そうですね、本当に忙しくしていました。でもコロナ禍になってから思うように動けなかったことがたくさんあったので、この忙しさがすごく嬉しくて。本当に倒れるんじゃないかというくらいライブして、その合間に曲を作ったりレコーディングしたり、本当に息継ぎする間もなく、あれよあれよと過ぎ去っていったんですけど、やっぱり喜びの方が勝っていたなって思います。
前田:ほんまに駆け抜けたというか、あっという間で、気付いたら2022年が終わってました。逆に今は休みが怖いというか、動いてない日が怖いっていう感覚がまだ残ってますね(笑)。
ーーそれだけ、メジャーデビューしてから思うように活動ができない、やりたくてもできなかったということがずっと引っかかっている部分があった。
平部:そうですね。これは僕らだけではないと思うんですけど、今までのバンドシーンで考えても本当に初めてのことだったので。マジで手探りでずっとやってきて、やっと元々やっていたところにたどり着いたというか、一周回ってきた感じがしてきたなっていう2022年でした。
ーー『カーテンコール』から次にリリースした『生活 e.p』の間で、歌っていることやサウンドも変わったじゃないですか。変わったというのか、1回戻ったというのかはわからないですけど。その変化は、その後バンドをやっていく中で影響している部分はありますか?
平部:『カーテンコール』は新しいことに挑戦した感じが僕らの中ではあったんですけど、『生活 e.p』は元々reGretGirlを始めた頃にやっていたことに近いイメージだったんです。それを経て今回の『tear』は本当にその中間というか、また何か新しいところにたどり着いたなという感じがしています。
ぶっちゃけ言ってしまうと『カーテンコール』は結構背伸びをして、新しいところに挑戦してみようと思ってやったところがあったんです。今回はその背伸びの分、身長が伸びたみたいなイメージで。等身大が少し大きくなったっていう感じなんですよね。これは永遠に続けたいことやし、こうやってバンドの身長を伸ばしていけたらなって思いました。
前田:僕も『カーテンコール』に比べると小細工が減ったというか、よりシンプルにいい音で鳴らそうと思ってやっていましたね。
ーー昨年は3カ月連続リリースを2回行いました。そのペースで曲をリリースするのは結構大変だったと思うんですけど、あれはアルバムを見据えて制作をしていた感じなんですか?
平部:2023年の初頭にアルバムを出そう、というのはなんとなく決まっていて、そこに向けてリリースしていったというのはあるんですけど……でも見据えていたと言っても『生活 e.p』を出したすぐ後からもう制作は始まっていたので。正直、間に合わないんじゃないか? みたいな状況もありました。本当にがむしゃらにやっていましたし、それを楽しんでいる自分もいたんですけど。reGretGirlとしては初めて、作曲合宿みたいなことをやったりもしたんですよ。
ーーおお、合宿ですか。
平部:でもその作曲合宿も、楽しいんですけど、結局僕1人で曲のタネを作っている時間というのがすごく長くて……僕が大変やったな。
十九川:そうだね。
平部:なんか2人は先にバーベキューとか始めちゃって、「いやいや、まあええけど……」って(笑)。でも、3人でスタジオに何時間もこもることがここ数年全然できていなかったので、そういうのも刺激になって。その合宿がきっかけにできあがってきた曲もあったので、そう思うと新しいことにも挑戦しつつっていう感じでしたね。
十九川:合宿は、僕としてはバーベキューもできたので楽しかったです(笑)。やっぱりバンドなんで、3人で一緒にがっと演奏してみるみたいな、セッション的なことも絶対に大事だし、これだけ曲数あるんやったら、そうやってできてくる曲も欲しいですよね、やっぱり。
前田:僕も合宿は別に大変じゃなかった(笑)。平部、がんばれと思いながらお肉焼いて。
平部:2日間、バーベキューしたもんな。肉が余ってるからって。僕が曲を作っている外でやってましたよ。僕はあまり気にしないんで大丈夫なんですけど。でも作り方もいろいろな形ができてきて。昔は3人でスタジオに集まって作るみたいなことが多かったんですけど、最近は僕がデモを上げて、そこからメンバーに振ったり、合宿に入ってタネを作ったり、今回のアルバムはいろいろな方法でやれたなっていう印象がありますね。