Subway Daydream、好きなものに向かうひたむきな眼差し 『RIDE』リリースイベントのステージを観て

Subway Daydreamレポ

 2月11日、双子の藤島裕斗(Gt)と藤島雅斗(Gt/Vo)、そして幼馴染のたまみ(Vo)、Kana(Dr)による大阪発4人組バンド、Subway Daydreamが渋谷WWWにてライブ『“RIDE” Release Party -like a daydream-』を開催した。この日は1月に発売した1stフルアルバム『RIDE』のリリースイベントで、同じく大阪出身で現在は東京を拠点に活動しているYAJICO GIRLをゲストに迎えてのツーマンライブ。大阪のバンドシーンで生まれた同郷の2組が、東京の地で大きな存在感を示した一夜となった。

 開演すると、まずはYAJICO GIRLが登場。グルーヴィーなサウンドの中でボーカルの四方颯人が自在にステージを動き回り、伸びやかな歌声で観客を魅了する。レイドバックしたバラードで聴かせたかと思えば、メンバーとの軽快なトークで会場を温めていく。四方は大学時代の軽音楽部でKanaの先輩だったという意外な繋がりを明かし、この日が2組にとって特別なライブであることが観客にも共有された。最後は小気味よいリズムの楽曲を立て続けに繰り出して会場を後にした。

 続いてSubway Daydreamがステージに現れた。1曲目は「Skyline」。冒頭の突き刺すようなフィードバックノイズと堂々としたベースのフレーズによって、YAJICO GIRLが温めた空気を冷ますことなく、会場の雰囲気をがらりと変えてみせる。

Subway Daydream(写真=KANA TARUMI)

 Subway Daydreamは、90年代の洋楽インディーロックを彷彿とさせるサウンドを土台に、聴く者の心をくすぐるようなキャッチーなメロディが魅力。裕斗と雅斗が奏でる重厚なギターの音像に胸が躍らされる。ドラムのKanaが刻むリズムは安定感抜群。その上で、ボーカルのたまみの歌声は、どの楽器にもかき消されない高く突き抜けるような存在感がある。だからこそ、バックのメンバーたちも自由に演奏できるのだろう。このバンドが奇跡的なバランスで成り立っていることが、序盤の数曲だけでも感じ取れた。

 印象的だったのは中盤に披露された「Teddy Bear」〜「Canna」の流れだ。暗めの照明によってメンバーたちのシルエットだけが確認できるステージ。そこで奏でられた疾走感ある演奏が見事だった。今まさに勢いに乗っているこのバンドの力強さ、若さ、瑞々しさが音になり、形となって表れ、まるで舞台上で光り輝いているようだった。

 歌い終えると、共演したYAJICO GIRLについて雅斗が「YAJICO GIRLはもともと関西にいた先輩たちで、今は東京で自分たちの好きなことを追求してるその姿勢に、ただただリスペクトの一心でお呼びしました」とコメント。こうした繋がりが起点となって、大阪のバンドシーンにも注目が集まりそうだ。

 そこから「Pluto」「Fallin' Orange」「Twilight」と間髪入れずに続けて行った。たまみは演奏中も多彩な表情や仕草でオーディエンスを虜にする。腕を広げてみたり、飛び跳ねてみたり、手拍子を煽ってみたり、曲間には「フ〜!」と歌ってみたりして、会場の空気を一手に握っていた。

 ライブが後半に突入したところで、再度MCタイム。今回のアルバム『RIDE』の発売が自分たちにとって「一つ大きなターニングポイントだった」と語る。さらにもう一つ自分たちにとって大きかったことが、TVアニメ『もういっぽん!』(テレビ東京ほか)のオープニングテーマに抜擢されたことだという。それが次に披露した「Stand By Me」だ。作詞作曲を担当した裕斗曰く「このアニメは好きなものにただただ真っ直ぐな女の子たちの物語。なので部活一筋だった学生時代や、バンドに打ち込んでいる今の自分たちの姿を照らし合わせながら曲を書いた」のだとか。

Subway Daydream(写真=KANA TARUMI)

 Subway Daydreamのライブを観ていると、音楽が本当に好きなんだなということがひしひしと伝わってくる。YAJICO GIRLへのリスペクトのコメントでも言っていたような“追求する姿勢”を彼らにも感じるのだ。「Stand By Me」のパフォーマンスにはまさにそんな姿勢が存分に表れていて、観ているこちらも何か突き動かされるものがあった。

 そして終盤、バンド屈指のキラーチューン「Radio Star」を披露。〈I Wanna Be Your Radio Star...〉と全員で大合唱すると、会場のボルテージは最高潮に。

 その後、結成してからこれまでのバンドの歩みを裕斗が振り返った。「バンドを始めてよかったなと思うこともあれば、バンドを組まなければこんなことで悩むこともなかったんだろうなと思うことも、色々あった3年間だった」と吐露する。また「メンタルが弱い自分は、このメンバーじゃないとバンドを続けられない人間だったかもなと思うことがあった」とも話す。そして「大好きなみんなとバンドができて本当に幸せです」と感謝を述べると、会場から温かな拍手が送られた。

 最後は「The Wagon」を披露して本編終了。アンコールは「ケサランパサラン」を歌い、大盛り上がりのままライブは幕を閉じた。

Subway Daydream(写真=KANA TARUMI)

 大阪発の2組が東京で共演を果たしたこの日。音楽の方向性は違えど、どこか両者には音楽に向き合う姿勢に共通のものを感じた。とりわけSubway Daydreamが持つ好きなものに向かうひたむきな眼差しは、会場にいた人々の心を揺さぶったに違いない。

■セットリスト
1.Skyline
2.Freeway
3.Dodgeball Love
4.Timeless Melody
5.シュガードーナツ
6.Teddy Bear
7.Canna
8.Pluto
9.Fallin’ Orange
10.Twilight
11.Stand By Me
12.Yellow
13.Radio Star
14.The Wagon
15.ケサランパサラン

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