神はサイコロを振らない、オーディエンスの“声”に感涙 試練を乗り越えて辿り着いたドラマティックなステージ

神サイ、オーディエンスの“声”に感涙

 「Monthly Winter Release“冬の大三角形”」と題し、昨年11月から今年1月まで3曲をマンスリーでリリースしてきた神はサイコロを振らない(以下、神サイ)。彼らが全国5都市で開催したZepp Tour 2023『雪融けを願う飛行船』のファイナル公演が、2月5日、東京・Zepp Hanedaにて行われた。

 定刻になりステージに現れた4人。楽器をセッティングしながらフロアに向けて拳を突き上げるなど、演奏前からオーディエンスを煽り、会場は早速ボルテージマックスへ。力強く踏み鳴らされるキックに合わせて自然発生的にハンドクラップが鳴り響き、バンドサウンドとエレクトロが有機的に混じり合ったアッパーなナンバー、「巡る巡る」でライブがスタート。切なくも高揚感あふれるサビのメロディを柳田周作(Vo)が歌い上げるとフロアが大きく揺れた。

神はサイコロを振らないライブ写真

 「巡る巡る」のエンディングで吉田喜一(Gt)が咆哮のようなフィードバックノイズを発し、それを合図に黒川亮介(Dr)がドラムのテンポを徐々に下げていく。メドレーのように間髪入れず披露されたのは、アニメ『ワールドトリガー』3rdシーズンの主題歌として彼らが書き下ろした「タイムファクター」。グルーヴィーな16ビートに乗せ掛け合いのコーラスをオーディエンスがシンガロングする光景に、思わず胸が熱くなる。コロナ禍の2020年にメジャーデビューを果たした神サイが、これほど多くのファンが“声出し”をしている姿を見るのは初めてのことだろう。

 縦横無尽に飛び交うストリングスと、冷ややかなピアノのフレーズがえも言われぬ緊張感を醸し出すのは、ドラマ『愛しい嘘~優しい闇~』(テレビ朝日系)主題歌に起用された「イリーガル・ゲーム」。シンプルだが躍動感あふれる黒川のドラムと、その上で幾何学的なフレーズを繰り出す吉田のギターが強烈なコントラストを生み出している。そんな、絶妙なバランスで成り立つアンサンブルの隙間を、絡み合いながら縫うように進む柳田のボーカルと桐木岳貢(Ba)のベースがこの上なく官能的だ。

神はサイコロを振らないライブ写真

 「ツアーファイナル、よろしく!」と叫んだ柳田が、ここでツアータイトル『雪融けを願う飛行船』に込めた想いを話し始めた。

 「コロナ禍でずっと失われていたライブ、夢見ていたその場所を取り返すという意味で、『雪融け』という言葉を使いました。福岡から始まり名古屋、大阪、札幌と開催してきたこのツアー、ファイナルにしてついに“声出し”も解禁! これは俺たち持ってるよね、持ってるとしか思えない。バンド結成して以来、いつかこの日が来ることを願って僕らはシンガロングできる曲を作ってきました。楽しむ準備はできているか!」とフロアに向かって問いかけると、ひときわ大きな歓声が会場いっぱいに響き渡った。

神はサイコロを振らないライブ写真

 8ビートのミドルチューン「LOVE」は、神サイの中でもとりわけポップなメロディが印象的。パントマイムのようなジェスチャーを交え、満面の笑みで歌う柳田のキュートな魅力が存分に発揮される楽曲でもある。サビでは両手でハートマークを作ったオーディエンスが、頭の上で掲げる様子も微笑ましかった。さらに「1on1」では、全員でタオルを振り回しながら同時にコール&レスポンスも行う、名づけて「Call & Towelponce」を実践するなど、ようやく解禁になったライブならではの演出を、思う存分に楽しんでいる4人の嬉しそうな表情が心に焼きついた。

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