Deep Sea Diving Club、メジャーデビュー発表の記念すべきステージ　次なるフェーズへ踏み出した第一歩

　福岡発＆在住の4人組バンド・Deep Sea Diving Clubが、2月11日に下北沢・ADRIFTで行ったFIVE NEW OLDとの2マンライブ『SIMCITY presents～FIVE NEW OLD×Deep Sea Diving Club～』で、5月10日にメジャーデビューすることを発表した。2019年、谷 颯太（Gt/Vo）、出原昌平（Dr/Cho）、鳥飼悟志（Ba/Cho）、大井隆寛（Gt/Cho）で結成されたDeep Sea Diving Club。以来、自らの音楽を「TENJIN NEO CITY POP」と称し、「Miragesong」「Left Alone feat. 土岐麻子」など、その時点での最新シティポップを提示し続けている。そんな彼らの記念すべき今回のステージは、次なるフェーズへの第一歩として、その奥深いポテンシャルを見せつけるものとなった。

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　サポートの中野ひより（Key）を加えたメンバー5人が姿を見せると、フロアが拍手で迎え、ライブの幕が開ける。オープニングは「おやすみDaydream」だ。跳ねたリズムに合わせて自然と体が弾み、テンションが高まる。大井が奏でるギターのカッティングも鮮やかで、どこか懐かしさを覚える音色も心地いい。

　続いて、谷の「最後まで踊っていってください」という言葉とともに「SARABA」へ。すると一転、出原のアタックの強いドラム、鳥飼の重厚感のあるベースが響き合い、ダイナミズム溢れる演奏を繰り出していく。それに呼応するように、谷もエモーショナルなシャウトを交え、会場内の空気を熱くする。

　ここで谷が、この日の共演アーティストにリスペクトと感謝のメッセージを贈りつつ、「今日は素敵な夜になるな、と思いながら福岡からやって来ました。最後まで楽しんでいってください」と挨拶。続く都会的なソウルナンバー「CITY FLIGHT」では、メロウかつ甘美なムードで魅了。小気味いいラップやフェイク、またファルセットを駆使した表情豊かなボーカル、透明感のあるサウンドにもぐっと引き込まれる。

　再び場内がダンスフロアとなった「Just Dance」では、よりリズミックにオーディエンスを躍動させ、Rin音とのコラボレーションで話題を呼んだ「フラッシュバック’82」ではクールな世界観へと誘う。ロック、R&B、ファンク、ジャズなどのエッセンスを昇華したサウンドメイクは実に変幻自在。フィジカルにしてハイセンスなパフォーマンスが五感を刺激する。そんな中で、彼らの多様な音風景に一貫しているのは、卓越したグルーヴ感だろう。そのうねりによって観客は体を揺らして踊り、エキサイトする。それが顕著に感じられたのが、「cinematiclove」だ。スロービートなナンバーだが、だからこそ、そこで生まれる音の“波間”や余韻が、高揚感をもたらす。

　そして終盤にさしかかると、ついに谷が「お知らせがあります。トイズファクトリーからメジャーデビューすることが決まりました！」とアナウンス。すると会場内が歓喜で沸き立ち、「これで一流のミュージシャンと同じラインに立てたのかなと思ってますので、末永くよろしくお願いします！」というMCでは、ファンたちから温かい拍手が送られた。

　その後に披露された「フーリッシュサマー」では、爽やかな風が吹き抜けるような清涼感に包まれ、開放的な雰囲気を堪能。それでいて、80s’フレーバーが香るコード感がノスタルジーを掻き立てる。この非凡な表現力は、楽器陣の“あうんの呼吸”による秀逸なプレイに裏打ちされたものだが、同時に、てらいがなく、自然体。ボーカルも、ナチュラルな音の空間を自由に浮遊しているようで、とても伸びやかだ。

　さらに「Interlude (for Early Summer)」から最後の1曲「T.G.I.F.」へと続き、あっという間にフィナーレへ。ダブのリズムなど、変則的なビートがたゆたう中で、オーディエンスも思うままに身を委ね、音の深海に浸る。その光景を目の前にしたメンバーたちも、充足感に満ちた表情をみせていた。

　メジャーデビュー作となるEP『Mix Wave』を5月10日にリリースするDeep Sea Diving Club。谷が語っていた「やっと何者かになれた」という言葉は、今のバンドとしての率直な思いなのだろう。Deep Sea Diving Clubは、いよいよ大海原へ向けて船出の時を迎える。