神はサイコロを振らないが見据える新たな地平線 現時点での集大成示した野音ライブ『最下層からの観測』東京公演

神サイ、日比谷野音ライブレポ

 メジャーデビュー以降の歩みを初のメジャー1stフルアルバム『事象の地平線』によって総括し、次の地平へ向けて大きな一歩を踏み出した神はサイコロを振らない(以下、神サイ)。今回は、2022年3月20日に日比谷野外大音楽堂で開催された野音Live 2022『最下層からの観測』東京公演の模様をレポートしていく。

 今回の公演は、計20曲の楽曲を2枚のCDにコンパイルした『事象の地平線』を軸としたものであった。それはつまり、この日のステージには、「それまでの活動における一つの集大成を示す」という大きな意義が宿っていた、ということである。先に結論から書いてしまえば、そうした4人の覚悟と気概が、熱くダイレクトに伝わってくる一夜であった。

 その熱い想いは、「パーフェクト・ルーキーズ」をはじめとした数々のロックナンバーにみなぎっていたように思う。また、強靭な4つ打ちのリズムをもってロックの高揚感を増幅させていく「イリーガル・ゲーム」も圧巻であった。柳田周作(Vo)は、轟かしいバンドサウンドを追い風にするようにして自らの感情を昂らせながら、何度も「心の中で歌ってくれ」とフロアに向けて叫んでいた。その声を受けた観客は、それぞれに拳を挙げたり手を振ったりしながら目一杯に応えていく。今はまだ自由に声を出すことができないものの、その光景はとても美しいものだっだ。

 そしてもちろん、神サイの楽曲は決してロックナンバーだけではない。彼らは、ポストロックやシューゲイザーをルーツとして持ちつつ、エレクトロの要素を大胆に取り入れたダンスチューンや、丁寧に歌心を伝えていく端正なポップスなど、絶え間なく変化を繰り返しながら、新しい音楽性に挑戦し続けてきたバンドである。そして、その変化の度に自らを上書き保存するのではなく、そのままバンドの表現の振り幅を拡張していった。そうしたこれまでの歩みを、一曲一曲を通して再現していく展開は、とても感動的だった。

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