初音ミク、キズナアイ、『アイドリッシュセブン』……モーションアクターの仕事とは? 奥山敬人&荒木結花が語り合う

 アニメ作品やVTuberなど、今や二次元コンテンツに欠かせないのが、モーションキャプチャーで動きを記録するためにダンスや演技を行うモーションアクターという仕事だ。アイドルを題材にした作品や、音楽活動に力を入れるVTuberが増える中で、その需要は増す一方。今回リアルサウンドでは、LiSAのライブに帯同するなどダンサーとしても活躍しながら、初音ミクの振り付け・モーションアクターを手掛ける荒木結花と、声優としても活動し、『アイドリッシュセブン』関連楽曲の振り付けをはじめ、最近ではゲーム『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』のモーションアクターも務めた奥山敬人の対談を企画。ダンスや振付との出会い、今の仕事を始めた経緯はもちろん、それぞれの視点からモーションアクターのやりがいや難しさなど語ってもらった。(編集部)

モーションアクターならではの“ちょいダサ萌え”

――お2人がダンスに出会ったきっかけを教えてください。

奥山敬人(以下、奥山):高校のときにダンス部に入ってダンスを始めました。新入生歓迎会でダンス部のパフォーマンスを見て、やってみようって思ったのがきっかけですね。振り付けは高校時代は全くやっていなくて、今の事務所(スタイルキューブ)に入ったときに当時のマネージャーでソリッド・キューブの代表の原田に「やってみる?」と言われて始めました。

荒木結花(以下、荒木):声優さんとしての活動はそのあとに始められたんですか?

奥山:ほぼ同時期ですね。今所属している事務所が声優もマネジメントしていて。ダンス部が楽しかったからしそういう仕事ができたらいいなと考えていたときに、最近は声優さんも踊って歌うという話を聞いて、声優っていう道もあるんだって。調べたらたまたま今の所属事務所のオーディションがあって、ダンスレッスンもあるとのことだったので応募して拾っていただいたんです。なので声優とダンスの仕事を並行して始めた感じですね。

奥山敬人

――荒木さんはどんなきっかけでダンスに出会ったんですか?

荒木:私は小学6年生のときに友達がダンスを習っていたのを見て、「私もやりたい」と思って始めました。本当に好きなものを見つけられたという感じで、始めたときからダンスを仕事にしようと決めて。小6のときの卒業文集に「(将来は)バックダンサーになります」と書いたり、ダンスの専門学校に行ったり、ダンスを仕事にしていくために頑張ってきましたね。

荒木結花

――お2人ともモーションアクターとしての活動もされていますが、この仕事に出会った経緯は?

奥山:この事務所が元々モーションアクターの仕事もやっていたんです。僕が振り付けとかもできるようになったときに、モーションアクターのお話をいただいたのが始まりですね。この事務所に入るまでモーションアクターという仕事自体知りませんでした。最初は「これ、本物の人間がやってるんだ」みたいな驚きがありました。

荒木:私も最初はダンサーの仕事がメインだったんですけど、あるときゲーム系のモーションアクターの仕事をいただいたのが出会いでした。ダンスと出会ったときのような楽しさを感じて、もっとやりたいなと思っていたときにKizuna AI(キズナアイ)ちゃんとの出会いがあって。そこからバーチャルアーティスト界隈のお仕事が増えていきましたね。

――自分自身として踊る経験をしている一方、バーチャルアーティストの振り付けやキャラクターのモーションアクターを担当していると、モーションアクターならではの面白さや難しさ、やりがいも感じるのではないでしょうか?

奥山:色々なキャラクターになれるのが醍醐味ですね。あとは振り付けをしているとき、生身だったらかっこよく決まらない動きでも、このキャラクターがやったらすごくキマるんじゃないかなと思うこともありますね。ちょいダサ萌えというか(笑)。そういう動きをあえて入れることができるのも面白いなと思います。

荒木:ちょいダサ萌え、分かります!

奥山:ありますよね。生身の人間がやったらちょっとキマらないかもしれない動きでも、このキャラクターがやったら可愛く見えるんじゃないか、と考えたり、生身とはちょっと違う味を出せるのは楽しい部分ですね。

荒木:ちょいダサな振りを入れるのも難しいんですよね。

奥山:そうなんですよ。本当にダサくなってしまうときもあるので。

荒木:同感です。あとモーションアクターをしているときは自分の動きがモーションキャプチャーでキャラクターに反映されるんですが、そのときにキャラクターが誰かに動かされているのではなくて、自らの意思で動いているように見せたいなと思っているんです。自分が「この顔の角度がかわいいな」と思う振り付けを持っていっても、いざキャラクターがやるとちょっと違うこともあるので、現場で調整することもあって。自分の感覚は全部捨てて、キャラクターの感覚を宿して振り付けるっていうのは難しくもやりがいを感じる部分ですね。

――荒木さんは前にTwitterで、キャラクターが可愛く見える角度や髪の流れも意識していると書いていましたよね(※1)。

荒木:私は今髪の毛が短いんですけど、自分がとんでもないロングヘアだと思って踊ったりしますね。あと髪を耳にかけている側を見せた方が顔がよく見えるとか、左足にスリットが入ってる衣装だったら左足を見せた方がセクシーになるとか、どんな髪型、服装をしているのかというのもすごく重要なポイントだと思います。

――モーションキャプチャーを通して自分の動きを見ていると、無意識に出るダンスの癖と向き合うタイミングもあったかと思うんですが、そういう部分で苦戦することはありましたか?

奥山:ありました。初めの頃はどうしても、キャラクターに寄せようとはしてるけど自分が踊っていると感じることがすごく多かったですね。それをスタッフさんに指摘してもらって、このままじゃ駄目だなと思ってより勉強するようになりました。日常生活や、配信動画等を意識して見て、「この人の動き方、このキャラっぽいな」と思ったらメモしたり。アウトプットだけだといけないと思ってるので、どんどんインプットしてそれをモーションアクターの仕事に反映する作業を繰り返しやってます。

荒木:最初は演じながら動くのは難しいですよね。私はダンサー出身なので、自分がずっと踊ってきたスタイルや体の動かし方があるんですが、それだとキャラクターに合わないと思うこともあって。演じながら踊らないといけないことに気づいた瞬間が私にもありました。

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