ゴホウビ、挫折を経験した4人だからこそ鳴らせる音楽 関わる全員を幸せにするためのメジャーデビューとこれから

ゴホウビが語るメジャーデビューとこれから

 2018年11月2日に結成した4人組バンド、ゴホウビ。”みんなにとっての「ただいま」と呼べる場所になりたい。”をテーマに活動を続ける彼らが、1月18日にメジャーデビューシングルとなる「好きな服」をリリースした。そして2月8日には、メジャー2作目「kissしよ」をリリースする。

 メンバーのスージー(Vo/Key)、cody(Vo/Gt)、405(Ba)、むんちゃ(Dr/Cho)は、それぞれがかつてメジャーでの活動やバンドを経て、ゴホウビにたどり着いたという経験を持つ。初となるインタビューでは、今回のメジャーデビューまでの経緯やこれからの夢について語ってもらった。挫折を経験したからこそ届けられるものがあると語る、彼らが鳴らす音楽に込められたものとは。(編集部)

これが最後のチャンスだという気持ちだった

ーーもしかしてゴホウビでインタビューを受けるのは初めてですか?

スージー:初めてですね。自分たちでも誰がどう喋っていくのか分かっていない状態で(笑)。

ーー貴重な機会をありがとうございます。ゴホウビは元々別の活動をしていた4人が集まって結成されたバンドなんですよね。

スージー:はい。codyと405とむんちゃはバンド活動を、私はソロ活動をしていたんですけど、codyと405と私は同時期にメジャーデビューして、そして同時期にメジャーレーベルを離れることになって。それぞれの活動が一旦節目を迎えた時に、一緒にバンドを組もうという話になって、私たちがメジャーを離れるよりも前にバンドでの活動を終えていたむんちゃにも声を掛けました。405は大学の同級生で、私がソロ活動をしていた時にサポートメンバーとしてベースを弾いてもらったことがあったし、むんちゃにもサポートで叩いてもらったことがあったんですよ。

スージー

cody:僕とスージーは同じレーベルに所属していました。LINE LIVEでコラボして一緒に歌ったことがあったんですけど、その時に声のハマりがすごくいいなと感じたんですよ。僕自身、女性ボーカルと一緒に歌う機会がそれまではなかったんですけど、「一緒に歌うとこんな感じになるんだ」「なんかすごく気持ちいいな」と思った覚えがあって。

スージー:私も同じように思ってました。 codyも私もそれぞれ歌に自信を持って活動してきたし、ソロでも成立する声だと思うんですよ。そういう声が合わさった時に、パワーが増したように感じたんです。こういうツインボーカルはいそうでいなかった気がします。

cody:その時はお互いの活動があったので、今すぐ一緒に何かやろうという話にはならなかったんですけど、そのあと、お互い同じタイミングでメジャーレーベルから離れることになって、話す機会があって。僕の中には「あの時のコラボよかったよな」という記憶がずっと残っていたので、「何か一緒にやってみようか」という話になって、ゴホウビが始まったのは自然な流れでした。そうしてバンドを組もうと決まった時に思い浮かんだのが、元々スージーと繋がりのあった405とむんちゃだったんですよね。

cody

ーー405さんとむんちゃさんは、バンドに誘われてどう思いましたか?

405:バンドをやめたとき、「もうバンドをやることはないだろうな」と思ったんですよ。これからはずっとスタジオミュージシャンとしてやっていこうという気持ちだったんですけど、いい声を持っている、いい曲を作る2人に誘われたので「この人たちとなら面白いことができるかも」と思って。もう一度バンドをやってみようという気持ちになりました。

むんちゃ:私も、もう一度バンドをやるつもりは全くありませんでした。「1人で叩いている方が楽しいや」と思っていたので。メンバーと私を繋げてくれた方がいるんですけど、その人から「曲を聴いてみてほしい」「メンバーにも会ってほしい」という連絡をもらった時も、正直「別にバンドはやりたくないんだけどな」「お世話になっている人だから行くしかないか」という気持ちだったし、バンドへの加入は断ろうと思ってました。だけど、そこにいたのがスージーで。私、スージーの作る曲が大好きなんですよ。昔サポートで叩かせてもらった時も「ありたがいな」と思っていたくらいなので、そんなスージーから声を掛けてもらえたのが嬉しかったし、これは断れないなと思って。それで「やります」と答えて、バンドに入ることになりました。

ーーそうしてゴホウビが結成されたのが2018年ですね。

スージー:私にとってはcodyとの出会いが一筋の光でした。曲を書いて歌うということをずっとやってきたからこそ、当時は「ここで立ち止まったら表舞台に立って音楽をやることはもう二度とないな」と思っていたんですよ。これが最後のチャンスだという気持ちだったし、今もずっとそう思っています。

cody:僕も同じです。昨年9月のWWWワンマンでのMCでも言いましたけど、前のバンドでは最終的に解散を選んだから、「これからも俺たちについてきてね」と伝えることができず、後悔が残っていたんですよ。そんな中で同じタイミングでメジャーレーベルを離れたスージーと出会って、もう一度バンドを組みたいと思うようになった。新しい活動を始めることに対する不安はあまりなくて、それよりも、ワクワクしている自分がいました。

スージー:結成した頃は無我夢中だったから、ちょっと記憶が曖昧なんですよ(笑)。

cody:バンドを組みたての高校生のような感じで、とにかく楽しかったよね。確か、元々あったスージーのソロ曲に僕の歌を乗せてみることから始めたんですけど、それも「スージーの曲に俺の声を入れたらどうなるんだろう? ワクワク!」というテンションで、とにかく自分たちがワクワクすることを積み重ねながら進んでいった気がします。実際に曲ができた時は「これはいくっしょ!」と手応えを感じて。

スージー:何曲か揃ったところで新宿のスタジオに入って、そこで初めてみんなで音を鳴らしたんだよね。だから「こういう感じでやっていこう」と決めたりはせず、この4人が持っている雰囲気を少しずつ見つけていくような始まり方だったのかな?

405:でもコンセプトは何となくあったよね。2人でお豆腐屋さんで「帰り道に聴きたくなるような音楽を作りたい」みたいな話をしたって聞いたけど。

スージー:あぁ、そうだったかもしれない。

ーー最初に発表した曲「ミッドナイトコンビニドラマ」は、まさに“帰り道に聴きたくなるような音楽”ですね。

スージー:そうですね。コンビニに行く男女の歌で、生活感のある曲だと思うんですけど、ずっとこの世界観でやっていきたいと思ったからこそ、1stシングルとしてリリースした記憶があって。“身近にある、見落としてしまいそうな一瞬の幸せに気づけたら、それが生きているなかでのゴホウビになる”というメッセージを最初に打ち出したかったんです。

「ミッドナイトコンビニドラマ」 - ゴホウビ [Official Video]

ーー同じく2018年11月にリリースされた2ndデジタルシングル「We Are ゴホウビ!!!」は、バンドが始まったタイミングにふさわしい決意表明ソングでした。みなさんのバックグラウンドが感じられる曲は他にもいくつかありますが、今年1月にリリースしたメジャー1stデジタルシングル「好きな服」もその一つでしたね。例えば〈焦がれた気持ちは/夢見た記憶は/ボロボロになっても/とわに輝くもんだ〉というフレーズはこのバンドが歌うからこそ説得力がある。

cody:「好きな服」はスージーが歌詞を書いた曲なんですけど、僕はこの歌詞を読んですごくグッときたし、今までの自分の音楽人生が浮かんできました。レコーディングでは「これは生き方を歌っている曲だ」と意識しましたし、今までの自分の経験や思いを乗せながら歌えたんじゃないかと思ってます。ここからまた新しいステージに進んでいくということで、メジャー1曲目にふさわしい曲になったなと感じていますね。

405:ゴホウビは4人とも挫折を経験しているけど、挫折を経験した人にしか書けない曲ってやっぱりあると思うんですよ。痛みや弱さを知っているからこそ鳴らせる音楽があるということはアレンジを考える上でもすごく意識しているし、そういう部分が、同じようなことを感じている人たちの心に響いているのかなと思ってます。

405

むんちゃ:そうだね。私自身もゴホウビの曲に救われている一人です。

スージー:夢を追って成功する人間なんてほんの一握りだと思うんですよ。私自身、一度チャンスをもらったけどダメだったし、闇期に突入して、その罰をずっと背負っているような感覚になったこともありました。だけど、自信がないからって沈んでばかりじゃ楽しくないから、ゴホウビをきっかけに心からちゃんと笑えるようになりたい。そういう気持ちを込めた曲はたくさんあります。

「好きな服」 - ゴホウビ [Official Video]

ーー活動開始から現在までの約4年間で配信シングル29作とミニアルバム2作をリリース。ものすごい多作家だなと思いました。

むんちゃ:私自身、ゴホウビの曲がとにかく大好きだからバンドをやっている人間なので、新曲がすごく楽しみなんですよ。多分、ファンの方と同じような気持ちなんじゃないかな。ゴホウビはいろいろな曲調があるから「次はどんな曲ができるんだろう?」と楽しみながらやっていますし、ちょっと難しそうな曲がきたら「できるかな? でもやってみよう!」という感じで自分の壁を乗り越えていけるのが嬉しい。自分の知らなかった世界に連れていってくれる曲ばかりだなと思います。

むんちゃ

スージー:むんちゃのドラムはすごく華があるんですよ。観ていて楽しいドラムを叩く人だなと思っていて。

むんちゃ:いいよ、私なんか見なくても! 

スージー:ちょっと豆腐メンタルが出てますけど(笑)。

むんちゃ:私の一番の役割は曲の魅力を最大限に引き出すことなので、一番聴いてほしいのはドラムじゃなくて曲なんです。お客さんも、私なんかに気をとられちゃダメです……!

ーー(笑)。メジャーシーンで活動することのメリットもデメリットも誰よりも分かっている4人かと思いますが、そのうえで、ゴホウビはメジャーデビューした方がいいと思った理由は何だったんでしょう?

cody:前の活動で学んだことは、自分で動かなければどうにもならないということ、地に足をつけて自分たちで活動していく必要があるということでした。上手くいかなかったのは当時所属したレーベルのせいではなく、全部自分の責任。今はそう思えているので、メジャーに対してマイナスなイメージはなく、それよりも、「ゴホウビの音楽をもっと広げていくには自分たちだけではちょっと力が足りないかもな」という気持ちの方が強かったんです。例えば、新しくアー写を撮った時に、新たにチームに加わった各セクションの方から衣装やらスタジオやら、いろいろな提案をしていただいて、メンバーみんなすごく映えたんですよ。そういうふうに、いろいろなプロフェッショナルの方からアイデアをもらうことで、ゴホウビはもっとよくなっていくんだろうなと思いました。なので、バンドとしては、(メジャーデビューは)できるのならばしたいという姿勢でしたね。ただ、誰とでもいいというわけではなく、自分たちの想いを分かってくれる人と今回出会うことができたから、メジャーデビューしようと決めました。

ーーメジャーデビュー後の今の心境を聞かせてください。

スージー:もちろん嬉しいし簡単なことじゃないと分かっているんですけど、私にとってはゴホウビが続くことが一番大事で、これからも変わらず、お客さんたちと歩幅を合わせて歩いて行けるようなバンドであり続けたいという気持ちが強いんですよね。だからメジャーデビューがゴールじゃない。ここからが始まりだし、プロフェッショナルな人たちと関わる機会が増えると思うと、これからが楽しみだし……(言葉に詰まる)。

cody:……泣いてるの?

スージー:いや、違う。

むんちゃ:びっくりしたー。感極まったのかと思った。

スージー:そりゃね、リベンジだからいろいろ想いはあるよね。だけど大きなこととして受け止めちゃうと、また転んじゃうかもという気持ちもあるので。

cody:うん。

スージー:ゴホウビをずっと続けていきたいし、関わってくれる人たちみんなに笑顔でいてほしい。そのためには、ファンのみなさんにもっと大きな夢を見せられるような存在にならなきゃいけない。例えば、自信がないと言っていた自分たちが武道館に立てたら、それって大きな希望になるんじゃないかと。メジャーデビューをきっかけにさらに大きくなっていくという気持ちでいます。

cody:酸いも甘いも知ったうえでの2回目のメジャーデビューということで、気が引き締まる想いというか。ゴホウビのことをいいと言ってくださる事務所やレーベルの方が見つかって、これから一緒にやっていこうというタイミングなので、チームみんなで一緒に上にいきたいという気持ちがありますし、責任感もあります。ファンの方も含め、ゴホウビに関わってくれている全員が幸せになるように頑張っていきたいし、自分たちにできることを一つひとつ、全力でやっていきたいです。

405:ゴホウビは最初、メジャーデビューというものを“自分たちの音楽をよりたくさんの人に知ってもらうための通過点”と捉えながら、そこを目指して活動していたんですけど、これから頑張っていくぞというタイミングでコロナ禍に入ってしまい、思うように活動ができなくなったり、元々いたメンバーがやめてしまったり……もどかしさや悔しさも味わいました。そういった経験を経て、一緒にゴホウビを大きくしていこうという仲間(スタッフ)が増えたこと、こうしてまた新しいステージに立てるきっかけをもらえたこと、周りの人から「おめでとう」と言ってもらえたことが純粋に嬉しかったですね。だから今は「ここは所詮通過点だから」というドライな感じではないんですけど、スージーも言っていたように、それでもやっぱりゴールではない。どんなに大きくなっても初心を忘れず、これまでゴホウビが大切にしてきたことをこれからもずっと大切にし続けていきたいです。

むんちゃ:私は本当に豆腐メンタルなので、正直不安なんですよ。最初はメンバー以外の大人たちが増えるのも嫌だなと思っていました。だけどスタッフの人たちが、本当にみんないい人なんです。なので、ひとまず前に進めたんですけど……多分「私でいいのかな」という気持ちはなくならないと思います。でもゴホウビが好きだし、みんなに聴いてほしいし、だから頑張りたいし、私がやるしかないし。一歩ずつ着実に頑張ろうと今は思えています。

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