DYGL、音楽への愛に満ちた自由な空間 大きな飛躍を予感させた『JAPAN TOUR 2023』初日公演レポート

DYGL『JAPAN TOUR 2023』初日レポ

 1月20日、DYGLの『JAPAN TOUR 2023』初日公演がSpotify O-EASTで開催された。DYGLは、昨年12月に4thアルバム『Thirst』をリリースしたばかり。彼らにとって新年一発目となったこの日のライブは、その新作に収録されている楽曲を軸としたセットリストが展開された。本稿では、新作の制作を通して大きな進化を遂げた姿を堂々と見せつけたツアー初日の模様を振り返っていく。

 1曲目は、『Thirst』のオープニングナンバーでもある「Your Life」。ギターの温かなアルペジオに導かれるようにして、次第にゆっくりと、雄大で豊かなバンドアンサンブルが立ち上がっていく。曲が後半に向かうにつれて、歌や演奏に滲む熱量がじわじわと高まっていくが、しかし、決して熱くなりすぎない絶妙なクールさも感じさせる。また、オートチューンによって全く新しい響きを得た秋山信樹(Vo/Gt)の歌声が、サポートメンバーを迎えたトリプルギター編成の厚みのあるバンドサウンドと重なることで、今までの彼らのライブでは味わったことのない鮮やかなアンサンブルが生まれている。まるで、これこそが最新型のDYGLであることを高らかに宣言するようなパフォーマンスで、いきなりグッと惹き込まれる幕開けだった。

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 その後も、新作の楽曲が立て続けに披露されていく。「Euphoria」では、各サビにおけるキメの連続が果てしないスリルと快感をもたらしてくれる。何より、音源以上にバンドサウンドのアタック感とオートチューンの効いたボーカルがグッと前面に出ていて、まさにライブだからこその気迫だ。疾走感に溢れる「Phosphorescent/Never Wait」からは、メンバーがこの日のライブを心から楽しんでいる様子が存分に伝わってきて、ツアー初日にして、今このバンドのモードが絶好調であることを強く感じさせた。

 この日初めてのMCパートで、秋山は、完成された”ショー"よりも、一人ひとりの観客が自由に主体的に参加できる"パーティー"のほうが好きであることを告げた。そして、「パーティーしましょう!」「隣の会場で楽しそうなことやってたら、ちょっと覗いて、また戻ってきてください。そんなノリで!」という秋山の呼びかけを合図に、その後も過去作の楽曲を交えつつ、次々と新作のナンバーを披露していく。シンセサイザーや打ち込みのリズムトラックを用いる楽曲も中にはあるが、各メンバーの生音を徹底的に磨き込み、それらを有機的に重ね合うことで濃厚で濃密なグルーヴを生み出していく、というDYGLの基本的なスタンスは不変である。これまで幾度にわたり開催してきた海外公演を含め、ライブを重ねる中で大切に育んできた彼らの豊かなバンドアンサンブルは、やはり絶品だ。

 そして今回のライブを通して感じたのは、バラエティ豊かな新作の楽曲がセットリストに加わったことによって、ライブそのものも大きくアップデートされたということだ。「Road」のように、時おり堰を切ったかの如くバンドサウンドが激しく流れ出すバラードもあれば、「Dazzling」のように、まるでリミッターが壊れてしまったかのような暴発的なテンションで爆走するパンクチューンもある(秋山は同曲を披露した後、「1.3倍増し(のスピード)でお届けしました」と笑いながら振り返っていた)。これらの新作の楽曲たちは、さっそく今回のライブにおける重要なハイライトを担っていて、DYGLが誇るライブバンドとしての圧倒的なポテンシャルを示していた。

 終盤では、「今年はいっぱい曲を書きます。そしてもう書きました」という秋山の言葉を受けて、まだ音源化されていない新曲が披露された。たおやかな歌のメロディが壮大な景色を描き出していくロックバラードで、とても晴れやかなバイブスでフロア全体を満たしてくれた。まだ『Thirst』がリリースされ、ツアーも始まったばかりであるが、すでにその先の2023年のアクションへの期待が膨らむような名演だった。

 じわじわとフロアの高揚感を高めていく演奏を通してバンドの成熟を見せつけた「Loaded Gun」などを経て、いよいよライブはクライマックスへ。「I Wish I Could Feel」では、メンバーたちがまるで全ての力を出し尽くすかのように渾身の轟音を叩き付ける。そして、オートチューンの効いた秋山の鮮烈なボーカルが、空を突き刺すように高らかに響きわたる。そのカオスティックなパフォーマンスは圧巻で、フロアにはこの日一番の熱気が生まれていた。まさに、DYGLの新たなライブアンセムの誕生の瞬間だった。

 本編ラストは、彼らが長年にわたり大切に磨き込み続けてきた「Don't You Wanna Dance in This Heaven?」、そしてアンコールは、同じく初期の代表曲「Let It Out」「A Paper Dream」「Waste of Time」の3連打。圧巻のフィナーレであった。フロアを見渡すと、それぞれの観客が、自分の好きなように手を上げたり、飛び跳ねたり、独自のリズムに合わせて体を揺らしたり、また、ステージ上のメンバーたちを撮影したり(DYGLのライブは常に全編撮影OK)していて、まさに秋山の言う自由なパーティー空間が広がっていた。秋山はアンコールで、「やっぱ音楽が好きかもしれないです、僕。音楽が好きです」と万感の想いを語っていたが、まさに、メンバーや一人ひとりの観客の音楽への愛に満ちた、とても美しい時間・空間であった。『JAPAN TOUR 2023』は、まだまだ始まったばかりで、2月19日には渋谷CLUB QUATTRO、3月10日には沖縄・那覇Outputで、DYGLが注目するゲスト出演もある追加公演が発表。その直後には『US TOUR 2023』も控えているが、2023年はDYGLにとって大きな飛躍の年になることを確信させてくれるようなツアー初日だった。

■DYGL オフィシャルサイト
https://dayglotheband.com/

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