宮野真守&水樹奈々、大規模会場でのライブ成功の秘密は? 「足し算の美学」とも言えるエンタメ要素満載のステージ

ライブに仕掛ける「てんこ盛りなエンタメ要素」

 宮野・水樹の両名ともライブに何かしらのテーマ性を持たせてタイトルが冠されることがある通り、その内容をかなり作り込んでいるパターンが多い。

<12/31まで公開>【EXCITING!】ARENA LIVE TOUR 2018【期間限定ダイジェスト】

 宮野のライブでは、例えば『MAMORU MIYANO ARENA LIVE TOUR 2022〜ENTERTAINING!~』では、中盤にこれまで宮野のライブで登場してきた数々の映像が流れ始める。そして「宮野真守は次の一手を悩んでいる」というナレーションとともに、宮野と、これまでの幕間映像にも出演している俳優・声優の髙木俊による漫才がスタート。“豪華客船で起こる事件”をネタにした漫才でひとしきり会場を笑わせると、宮野の「行こう!」の合図と共に、自身の楽曲「行こう!」へと移っていったのが印象的だった。

 「音楽ライブの途中で、いきなり漫才が始まる」という宮野のエンターテインメント性やキャラクターがあってこその急展開。彼を長く応援するファンならば一気に盛り上がり、彼のライブを初めて観たひとはあっけに取られるかもしれない。博打のようでもあるが、『ENTERTAINING!』と冠されたライブタイトル・狙い・バリューで足を運んでくれたファンを楽しませようという野心すら感じられる。

 漫才パート以外にも、宮野のライブでは随所にポップ&カラフルなミュージカル的展開が持ち込まれることが多い。その様はシアトリカルという言葉がしっくりくる。

<12/31まで公開>【EXCITING!】ARENA LIVE TOUR 2018【期間限定ダイジェスト】

 一方、水樹といえば、アニメ作品のタイアップの有無に関わらず、楽曲の中で時として壮大な世界観が描かれることがあり、その世界観に引っ張られるかのように遠大・極大な言葉がライブタイトルに冠されることがある。

 筆者がまず思い浮かべるのは、数年前に公開されたYouTube再生リスト「NANA MIZUKI LIVE 乗り物編」だ。

 テレビ出演時に時折話題に上るのが、“水樹奈々のライブではおかしな乗り物が登場しがち!”というネタだ。気球・戦闘機・機関車・ホウキ・ロボットなどなど、観客を驚かす狙いがあるとはいえ、こうして単体でアップされた動画を見ると「それはやりすぎだろ!?」とついツッコんでしまう。

水樹奈々「Glorious Break」(NANA MIZUKI LIVE GALAXY 2016)

限られた公演数だからこその「足し算の美学」

 大規模会場で公演ができるというのは、決して多くのアーティストに与えられた機会ではない。しかも声優業を行いながらのライブ活動ということもあり、限られた公演数の中でチャンスに恵まれたとあれば、彼らのライブは誠実に音楽を表現するだけではなく、数多くの工夫を仕掛け「観客に爪痕を残したい」「楽しみにやってきたファン達の期待値を超えるエンターテインメントを届けよう」という一心で生まれた産物なのが容易に想像できる。

 2人のライブはダイナミックで、そして見るものに鮮烈な印象を残す。それは2人に通底する、「引き算の美学」ならぬ「足し算の美学」があるからだろう。音楽のライブとしてだけではなく、演劇的なショータイムをも見据えたシアトリカルな公演として楽しめるはずだ。

水樹奈々、ライブとファンへの愛 『LIVE RUNNER 2020 → 2022』『LIVE HOME 2022』2つの公演を通して届けた思い

水樹奈々が、Blu-ray&DVD『NANA MIZUKI LIVE HOME × RUNNER』を12月21日にリリースした。…

宮野真守、アリーナツアーで見せた自らのエンターテインメントの集大成 埼玉公演2日目をレポート

声優・俳優・歌手として活躍する宮野真守のアリーナライブツアー、『MAMORU MIYANO ARENA LIVE TOUR 20…

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる