THREE1989、最新曲「幸福論理」で広がる音楽の世界 ドラマや映画主題歌の経験で手にした歌を軸とした深い普遍性
「70年代、80年代、90年代のサウンドを取り入れ、ダンスミュージックを織り交ぜた、現代的かつ懐かしさを感じる楽曲が特徴」とプロフィールでは説明されているが、それは要するに「気持ちよければ何でもあり」ということでもある。実際、彼らのディスコグラフィを見ればわかるとおり、このグループは異常なまでに多作で、自分たちの楽曲に加え他アーティストのプロデュースワークや楽曲参加、企業コラボなども合わせれば、とんでもないペースで音楽を生み出していることがわかる。それほど多くの、そして幅広い楽曲を生み出しながらも、決してとっ散らかった印象にならないのは、バランスを取りちょうどいいところに着地するメンバーのコンビネーションとセンスが抜群だからだろう。
まずは「幸福論理」と昨年リリースされた楽曲たち、そしてアルバム『Director’s Cut』を聴いてほしい(それだけでも36曲あるのだが)。ファンキーな「夏ぼうけ」にオルタナR&B風の「エゴイスティック渋谷」、Shoheiの個人的な心情を歌い上げるハートウォーミングな「結婚前夜」、シンセが鳴り響く切ないアッパーチューン「モナリザの涙」、ラーメンへの愛を歌っているのになぜかやたらセクシーなエキゾチックチューン「Asian Funky Ramen」……とにかくその振れ幅に驚くはずだ。アルバムに収録されている「ココロゴト feat.川畑要」や「愛の処方箋 feat.asmi」、「SAKASAMAの世界 feat.あっこゴリラ, ケンチンミン」などで呼び寄せている客演陣も「どういうコネクション?」と言いたくなるほどバラエティ豊か。ゲストそれぞれのキャラクターを引き出しつつTHREE1989の土俵に引き込む手腕も見事だし、アルバムに関していえば意外な竹内まりやのカバー「恋の嵐」も、つなぎと呼ぶにはあまりにも作り込まれすぎているインタールードも、とにかく全方位で半端ではないエネルギーが注ぎ込まれている。
とはいえ、THREE1989がセンスだけでいい感じの曲を量産するクリエイター気質の集団かというと、決してそういうわけでもないのが味わい深いところ。歌詞は主にShoheiが書いているが、響きを大事にしてユーモアや言葉遊びをふんだんに取り込みながらも、ふと差し込まれるピュアでセンチメンタルな心情には表現者としての彼の真摯で、だからこそときに孤独な姿が浮かび上がる。映画主題歌として書き下ろされた「待ち逢わせ」などそのいい例だろう。この曲は当初は映画のストーリーに沿って書かれていたそうなのだが、レコーディングの直前にShoheiの祖母が亡くなり、その経験を経て彼は自分ごととして歌詞を書き直したのだという。結果的に彼の個人的体験や記憶と結びつくことで、「待ち逢わせ」の歌詞はぐっと人間味を増し、それゆえにより深い普遍性に辿り着くことができたといえるだろう。それは「幸福論理」も同様。ドラマのストーリーやテーマに寄り添いながらも、たとえば「幸福論理」の英語表記を「Kofuku Lonely」とするところには率直な気持ちが滲んでいるように思える。理性と衝動の間で揺れ動く心の葛藤をシンプルな言葉で書きつけた歌詞も、ドラマ云々を離れて多くの人にシンクロする余地を持っている。
メジャーデビューから2年、THREE1989の音楽の世界はさらに広がりながら、同時にその深度も深めつつある――そんな進化を物語る「待ち逢わせ」や「幸福論理」。音楽的にはどうなっていくのか想像もつかないし、それは彼ら自身もそうだろう。だが「歌」を軸にしながらさらなる普遍性へと突き進んでいく、そのベクトルはいっそう確かなものになってきている気がする。
■リリース情報
「幸福論理」
2023年1月6日(金)リリース
https://three.lnk.to/kofuku_lonely
MBSドラマ特区「あなたは私におとされたい」エンディング主題歌
■関連リンク
THREE1989 Official HP
https://www.three1989.tokyo
THREE1989 Complete Playlist
https://open.spotify.com/playlist/6HR5lJgnvDMOIded8nUEI9?si=5869af1c5691486d