THREE1989、最新曲「幸福論理」で広がる音楽の世界 ドラマや映画主題歌の経験で手にした歌を軸とした深い普遍性

THREE1989が手にした深い普遍性

 現在放映中のMBSドラマ特区『あなたは私におとされたい』。ウェブ発の人気コミックを原作とした、「ゼッタイに不倫しない男×ゼッタイに不倫させる女」という刺激的なコピーが躍るスリリングなドラマだ。そのドラマのエンディング主題歌として流れているのがTHREE1989による「幸福論理」。ニュアンスたっぷりのボーカルと濃厚なブラックミュージックのグルーヴがアダルトなムードを醸し出すミドルチューンだ。

幸福論理 / THREE1989 [Lyric Video]

 THREE1989はShohei(Vo)、Shimo(Key)、Datch(DJ)からなるグループ。3人全員が1989年生まれであることからこのバンド名が付けられた(ちなみに読み方は「スリー」)。結成は2016年。同年に1stシングル「High Times」をリリースすると、その後もコンスタントに楽曲をリリースし、同時にライブの場でも着実にファンベースを築いてきた。世の中に彼らの名前が知られるようになったきっかけとしては2017年にフロントマンのShoheiが本名の上村翔平名義でリアリティショー『テラスハウス』に出演するというトピックもあったし、サウンドやビジュアルからもかなりオシャレでイケイケな印象を受けるかもしれない。だがそうしたイメージとは裏腹にというべきか、フェス出演をかけたオーディションに出たり武者修行的に海外でのライブを行ったり、ある意味泥臭く活動を展開してきたグループでもある。サポートメンバーを加えて行われるライブでは強烈な求心力をもつShoheiの歌を中心にスキルフルな演奏陣が脇を固め、サンプラーやターンテーブルを駆使してリーダーのDatchが飛び道具的にオーディエンスを盛り上げる。エンターテインメントとしても純音楽的にも作り込まれた、ハイクオリティなパフォーマンスを繰り広げる実力派集団なのだ。

 そんなTHREE1989は2021年1月、過去曲のリテイクやリアレンジバージョンを集めたベストアルバム『THE BEST THREE1989 -Don't Forget Dancing-』で満を持して<avex / rhythm zone>よりメジャーデビュー。その後全26曲・73分59秒(CDの収録時間ギリギリ!)のメジャー1stアルバム『Director’s Cut』を経て、昨年には初の映画主題歌(泉原航一監督『いてもたっても。』)となった「待ち逢わせ」をリリースするなど、さらなるスケールアップのための挑戦を続けてきた。そんな流れの中で生み出されたのが、前述のドラマタイアップ曲「幸福論理」だ。

 「幸福論理」はイントロから鳴り響くオーケストラヒットとシンプルに構築されたビート、そこに挟み込まれるスクラッチがオールドスクールヒップホップを感じさせる、懐かしいタッチの楽曲。だが通り一遍にならないのは、Shoheiの歌うメロディラインと声のニュアンスがとてもモダンだからだ。過剰にエモーショナルになることなく、どこか冷めた感じももった彼の声が楽曲のバランスを整え、喉越しのいいポップソングに仕立てている。この曲だけではなく、これまでリリースされたどの曲でも、そうしたバランス感覚はTHREE1989の大きな特徴だといえるだろう。ShoheiだけでなくDatchも元々はシンガーソングライターだったそうで、サウンド的には好奇心旺盛にエリアを広げながらもあくまで「歌」を真ん中に置くという意識が本能レベルで刷り込まれているのかもしれない。

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