『第73回紅白歌合戦』から見えた“新時代” ダンスとアニソン、存在感を強めた2つのキーワード

 もちろんアニメ映画『ONE PIECE FILM RED』に登場し、アニメキャラとして史上初の出場となったウタの「新時代」(歌唱はAdo)もそうだ。同時にこのステージでは、3Dとなってステージ上で歌うウタのバックで他の出演歌手が踊る演出もあり、「踊る紅白」のハイライトのひとつにもなっていた。

 そして象徴的だったのは、氷川きよしだ。巨大な不死鳥のセットの上に乗り、『ドラゴンボール超』の主題歌「限界突破×サバイバー」を熱唱した。氷川は今回の『紅白』をもって歌手生活を一時休養することになっている。その彼が、節目のステージでずっと歌ってきた演歌や歌謡曲ではなくアニソンを歌ったことは、アニソンがかつての歌謡曲の地位を取って代わりつつあるようでもあり示唆的だ。

 音楽面だけでなく、番組のフォーマットという面でも『紅白』の変化は続いている。

 一昨年、2021年の『紅白』では司会に「紅」と「白」という区別を設けないことが話題になったが、そのスタイルは今回も踏襲された。大泉洋も橋本環奈もただ「司会」とされた。さらに今回は、まったくと言っていいほど紅白の対抗色はなく、勝敗の発表もきわめてあっさりした簡素なものだった。どちらの組が優勢という中間発表もなく、優勝旗の贈呈といったこともない。つまり、“歌合戦”の要素が年々薄まってきているのは明らかだ。

 このように、さまざまな点において『紅白』が新たな時代に向かっていることは間違いない。むろんその背景には、ネット文化の浸透、グローバル化する音楽状況、多様性を尊重する社会への志向などがあるだろう。だが「国民的テレビ番組」という重い看板を背負った『紅白』にとって、今までの伝統を踏まえつつそうした新時代に適応することはそう簡単ではない。最終的な着地点がどこなのかはまだ誰にもわからないというのが正直なところだろう。その試行錯誤が感じられた今回でもあった。

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