I Don't Like Mondays. 挑戦の一年を締めくくる見事な大団円 新章への期待膨らんだ『Black Thunderbird TOUR』レポ

アイドラ、全国ツアー最終公演レポ

 I Don't Like Mondays.(以下、アイドラ)が、全国ツアー『Black Thunderbird TOUR』の最終公演を12月4日 KT Zepp Yokohamaにて開催した。アイドラにとって2022年は、年明けの「PAINT」(TVアニメ『ONE PIECE』主題歌)のリリース以降、次々と新しい扉を開き続けてきた一年間であり、このツアーは、そうした挑戦の一年を締めくくる非常に意義深いものとなった。今回は、メンバーたちにとって、そしてファンにとっても忘れられないであろうツアーファイナルの模様を振り返っていく。

 ライブ冒頭、まず驚かされたのが、サングラスをかけたメンバーたちが身にまとう80's風の衣装だった。4人それぞれにピンスポットの照明が当てられる演出も施され、1曲目「ダイナマイト」の間奏ではメンバー全員が一緒に左右にリズムを踏む場面もあった。また、バンド演奏のキメに合わせて的確にポーズをとっていくYU(Vo)の佇まいは、まるでマイケル・ジャクソンを想起させるほど華麗で、その堂々たるステージパフォーマンスに強く引き込まれる。1曲目から、一切衒いのないエンターテインメントショーを提供しようというメンバーの気概がメラメラと伝わってきて、4人が今回のライブにかける意気込みに思わず胸が熱くなる。

 続けて、ダンスミュージックの快楽性とロックサウンドの高揚感を掛け合わせた「STAR DRIVE」、また、CHOJI(Gt)、KENJI(Ba)、SHUKI(Dr)による各パートのソロの応酬が繰り広げられる「美しき世界」が披露され、フロアからはライブ序盤とは思えないほどの大きな手拍子や拍手が巻き起こった。

 この日初めてのMCパートでYUは、今回のツアーファイナルに辿り着いた感慨を語った上で、「今日は、君たちが飛び立つ日ですよ!」「全国のどこよりもヤバいライブを見せてくれ!」と満員のフロアをアジテートしてみせた。その後、自分たちを新しい世界に導いてくれた「PAINT」への想いを語り、「君たちを新しい世界へ連れていくよ」という言葉と共に同曲を披露した。アイドラは長い間、R&Bやファンクを基調としたクールでアダルトな楽曲をメインに打ち出してきたが、この曲は疾走感が溢れる爽快なロックナンバーであり、それ故にリリースされた時は驚いた記憶がある。しかし、今や「PAINT」は彼らのライブのハイライトを担う新たな代表曲の一つになっている。瑞々しく躍動するバンドサウンドが、会場に所狭しと響きわたっていく景色はとても美しく、まさにYUの言葉のとおり、アイドラの新たなライブ体験を堪能する時間となった。

 その後も、研ぎ澄まされたクラブミュージックと剥き出しのバンドサウンドが結合したアイドラ流のミクスチャーロックが次々と披露されていく。そして、ライブ中盤のハイライトを担ったのが、今年リリースされた新曲の一つ「重ね色」であった。ブルージーな味わいをもたらすギターのロングトーンの音色を合図に、次第に重厚なハードロックサウンドが轟き始め、そこに同期も加わり壮大でシンフォニックなサウンドスケープが立ち上がっていく。そうして幕を開けた「重ね色」は、アイドラ史上最も直球なロックバラードだ。一つのライブを通して、万華鏡のように次々と景色が移り変わっていくのがアイドラのライブの醍醐味だが、この楽曲がレパートリーに加わったことで、彼らのライブの世界の奥行きと深みが何段階も増した印象を受けた。「重ね色」は、まさに「PAINT」が開いた新しい扉の先に掴んだ彼らにとっての新基軸の楽曲であり、改めて2022年がアイドラにとっていかに大切な年であったかが伝わってくる。

 環境問題をテーマに掲げた「ミレニアルズ ~just I thought~」で、一人ひとりの観客に考えるきっかけを手渡した後、ここからライブはクライマックスへ。クールでありながら、同時にギラギラとした熱量を滲ませたバンドサウンドが享楽的なダンス空間を生み出していく展開は、まさにアイドラのライブの真髄。特に、「ロンリーゾンビーワンダーランド」におけるCHOJIのリミッターがぶっ壊れてしまったかのような轟音ギターソロは圧巻だった。それに負けじと、スラップを多用したKENJIのベースソロ、パワフルさと華麗さを兼ね備えたSHUKIのドラムソロも凄まじい熱量を放ち、アイドラのライブバンドとしての底力を強く思い知らされた。

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