JO1、INI、BE:FIRST…ボーイズグループシーン隆盛の礎を築いたDa-iCEの存在 情熱と新鮮さで続く躍進
日本の音楽シーンは、ボーイズグループ群雄割拠の時代に突入している。かつて日本の“歌って踊れる”、いわゆる男性ボーカル&ダンスグループといえば、ジャニーズ事務所もしくはLDH所属のアーティストを思い浮かべる人が多かった。しかし、現在は両者の勢いは衰えぬままに、さらに多くの個性と実力を兼ね備えたグループがしのぎを削っている状態だ。それは今年の年末年始特番の出演アーティストを見ても明らか。特に『第73回NHK紅白歌合戦』には結成5年にも満たないJO1とBE:FIRSTが初出場することになり、世間を驚かせた。
こうした目覚ましいボーイズグループの活躍は、ここ数年で盛り上がりを見せている公開オーディション文化と切っても切り離せない関係にある。日本でも80〜90年代にかけて、数々の大型新人を発掘した『スター誕生!』(日本テレビ系)や『ASAYAN』(テレビ東京系)などのオーディション番組が人気を博したが、21世紀に突入する頃には徐々に衰退。それと入れ替わるように、お隣の韓国では2009年に放送開始となった『スーパースターK』(Mnet)を皮切りに、練習生たちが時に熾烈な競争を繰り広げ、また時には切磋琢磨しながらデビューを目指すサバイバル型オーディション番組ブームが巻き起こる。そして、そのブームはWanna OneやIZ*ONEが生まれた番組『PRODUCE 101(プデュ)』シリーズで不動のものに。これらの番組は日本でも有料チャンネルや動画配信サービス「ABEMA」でも視聴することができ、もともとK-POPファンの間では人気があった。
だが、2019年に“プデュ”シリーズの日本版『PRODUCE 101 JAPAN(日プ)』がスタートするやいなや、一気に日本でもサバイバル型オーディション番組の人気に火がつく。同番組ではまだデビューしていない練習生101人が集められ、さまざまなミッションに挑戦。最終的に“国民プロデューサー”と呼ばれる視聴者の投票で選ばれた11人が見事デビューを果たすことになる。
前述したJO1は、この“日プ”から誕生した初代ボーイズグループだ。2020年3月に『PROTOSTAR』でデビューした彼らはこれまでに6枚のシングルを発表しているが、いずれもオリコンデイリーシングルランキングで1位を獲得している。今年10月リリースの6thシングル『MIDNIGHT SUN』は初日売上が自己最高となる36.5万枚を記録。アジア最大級となるK-POPの音楽授賞式『Mnet Asian Music Awards(MAMA)』では2020年、2021年と「Best Asian Artist Japan」を受賞しており、今年の「Favorite Asian Artist」で3年連続受賞となった。12月7日に放送された『2022 FNS歌謡祭』(フジテレビ系)でのパフォーマンスを見れば、ここまでの快進撃が続く理由も納得である。同番組でWham!の名曲「Last Christmas」をカバーした彼らは、全員白の衣装に身を包みステージに登場。その華やかさに見惚れていると、ミディアムテンポのナンバーに合わせたムーディなダンスと切なくも甘い歌声に心を掴まれた。世界の頂点を目指す彼らの魅力に改めて世間が気づくきっかけになったのではないだろうか。
こうしたJO1の活躍も相まって、“日プ”第2弾で誕生したINIは2021年11月のデビュー当初から注目度が高かった。1stシングル『A』は初週売上50万枚を超え、デビューシングルの初週売上としては当時歴代5位の記録に(ちなみに1〜4位はすべてジャニーズグループである)。デビューからわずか1カ月で『輝く!日本レコード大賞』(TBS系)の新人賞を受賞した。その後も勢いは一切衰えることなく、CDが売れないと言われているこの時代に「Billboard JAPAN」で3作連続でハーフミリオンを突破している。JO1にも言えることだが、練習生101人から視聴者の投票により選ばれた精鋭だけあって、パフォーマンス力の高さはもちろんのこと、メンバー1人ひとりの人間性が素晴らしい。JO1、INIともにファン出資による応援広告が度々話題となるが、それは努力をいとわないストイックぶりもさることながら、仲間やファンへの感謝も忘れない彼らの“愛され力”の賜物だ。
またJO1がデビューした頃、日本ではソニーミュージックとJYPエンターテインメントによる共同プロジェクト『Nizi Project』が世間を賑わせていた。のちにガールズグループのNiziUを生み出すこの番組が大成功を収めたことで、日本発のオーディション番組もまた続々と制作されることに。特に『Nizi Project』と同様に朝の情報番組『スッキリ』(日本テレビ系)でも特集が組まれたことで大きな話題となったのが、SKY-HIが私財を1億円以上投じたボーイズグループ発掘オーディション『THE FIRST』だ。その出資額からも分かるようにSKY-HIの気合の入り方は尋常ではなく、オーディション中も幾度となく涙を流しながら、真剣に練習生たちと向き合っていた。プロデュースにおいてSKY-HIは何よりも一人ひとりの個性と才能を尊重する。だからだろうか、彼のもとでデビューしたBE:FIRSTはどのパフォーマンスにおいても団結力があるにもかかわらず、むしろ一人ひとりの色が際立つ。発表する楽曲もバラエティ豊かで私たちを飽きさせることがない。そんなBE:FIRSTは年末に『紅白歌合戦』と『日本レコード大賞』の両方に出場。後者では優秀作品賞を獲得した2ndシングル曲「Bye-Good-Bye」を披露する。