甲田まひる、水森亜土やバド・パウエルらが共存する世界 多面的なアーティスト性を構築した人生のルーツとは?
私はドラムの音の規定を超えたいんです
ーー甲田さんは90年代のヒップホップがお好きなんだとか。
甲田:好きになったのは比較的最近ですけどね。4年前とか。私がジャズのアルバム(『PLANKTON』)を出した16歳の時、ロバート・グラスパーの『ブラック・レディオ』の影響でジャズミュージシャンの界隈でヒップホップが熱かったんです。そのタイミングでA Tribe Called Questが『ウィ・ゴット・イット・フロム・ヒア・サンキュー・フォー・ユア・サービス』をリリースして。
ーーあの作品は生っぽい音作りでしたもんね。
甲田:そうそう。Q・ティップの声が衝撃でした。そこから私もヒップホップに興味が出てきて、どんどん遡って聴き始めたんですね。そしたら昔の作品のほうがもっと好きだった(笑)。しかもジャズをサンプリングしてMPCで叩いてる。そこもポイントでしたね。あと石若駿さんと知り合って、セッションでJ・ディラの曲を演奏していたのにもびっくりしたんですよ。ジャンルにとらわれなくていいんだと。
ーージャズミュージシャンがトライブやJ・ディラが好きというのはわかるんですが、甲田さんはクルックリン・ドジャーズがフェイバリットというお話を伺いました。あまりにシブいというか……。
甲田:クルックリン・ドジャーズの1994年の「Crooklyn Dodgers (Special Ed, Masta Ace & Buckshot)」はQ・ティップがプロデュースしたんですが、翌年のDJ プレミアがプロデュースした「Return of the clookyn dodgers ’95」のほうが好きでした。遡っていろいろ聴いてく中で、Company FlowとかBlack Moon、Boot Camp Clikみたいなダックダウンのアーティストが好きになったんですよ。もう「ここだ!」となりまして(笑)。
ーー極端な話、ドラムの音はデカけりゃデカいほど良いみたいな。
甲田:そう! 私はドラムの音の規定を超えたいんです。ただなかなか理想のサウンドにならないので、日々試行錯誤しています。
ーー理屈や楽理ではないところにあるブラックミュージックの本質に近づこうとしていく感覚は、バド・パウエルのピアノを耳コピして「なんでこの跳ねた音がでないんだろう?」と切磋琢磨してた8歳の頃から変わらないですね。
甲田:そうかもしれないです(笑)。
ブラックミュージックと同じくらい女の子っぽい洋服で容姿を飾るのが好き
ーーとはいえ、『California』や『夢うらら』といった過去のEPはハイパーポップ以降の感覚で作られたR&B寄りのポップスですよね? あとK-POPもお好きなんだとか。
甲田:それは私がファッションが好きだから。ゴリゴリのブラックミュージックと同じくらい容姿を飾るのが好き。女の子っぽい洋服も好き。さっきトライブにハマった話をしましたが、その過程でThe Fugeesを知り、ローリン・ヒルを知り、アリアナ・グランデやリアーナとかも好きになるんです。あの人たちのルーツにあるのはローの出たサウンドじゃないですか。でも歌がうまくて、かわいくて、踊れる。「私がやりたいのはこれじゃん」って。クルックリン・ドジャーズやバド・パウエルは好きな音楽。甲田まひるの考えてることは水森亜土の世界観なんです。だから音楽を作るとドラムの音色にはこだわっちゃう。と同時にこういうファッションで着飾るのも大好き。
ーーなるほど。そうなると自然にK-POPも好きになりますよね。
甲田:そうそう。NewJeansとかLE SSERAFIMとか今流行ってる子たちはみんな大好きです。でも特に好きなアーティストはIUさんです。彼女の作詞の世界観や歌声、幅広い表現力がとても魅力的で。そういう面ではZICOさんも好きです。作曲家としてもすごく尊敬してますね。ボイスメモで録った弾き語りの動画とかもすごくかっこいいと思いました。
ーー日本人だとどんなアーティストがお好きなんですか?
甲田:宇多田ヒカルさんと松任谷由実さんです。自分で作って自分で歌う女性。私も同じスタイルで活動しているので、お二人からは常に影響を受けてるし、かっこいいと思います。小袋成彬さんも大好きです。あとは歌とダンスを兼ね備えた安室奈美恵さんの佇まいにも憧れますね。
ーーなるほど。今作でSUNNY BOYさんと共作した理由も理解できました。
甲田:SUNNY BOYさんはいろんなアーティストの作品をプロデュースされてて、私がやりたい理想像に近い活動をされているので、ぜひご一緒させていただきたいと思ってオファーさせていただきました。
ーー実際に共作された感想を教えてください。
甲田:めっちゃ楽しかったです! SUNNY BOYさんはとにかくすべてが早い。「Snowdome」は2日でできました。それぞれ5時間くらい一緒にスタジオに入って。
ーー難しかったことはありますか?
甲田:私は普段はテーマを決めずにまずビートを組んで、そこに合わせて歌や歌詞をつけることが多いんですね。でも今回は先にテーマを作ることにしたんです。誰かと一緒に作る上で、それも必要な能力だと思って。なので切ないラブソングというテーマを決めて詩を書いていきました。それをSUNNY BOYさんにお伝えして、一緒に制作を行った感じですね。
全部で“甲田まひる”だから好きに作りたい
ーーカップリングの「SECM (Sausage Egg & Cheese Muffin)」はyung xanseiさんがアレンジされてるんですね。
甲田:私はJP THE WAVYさんとか現行の日本語ラップも大好きなので、yung xanseiさんのビートのファンだったんです。そしたらこの前、日本でやったキッド・カディのライブで偶然お会いして。その時はちょっとお話しただけだったんですけど、後日正式にオファーしたら受けていただけました。
ーーソーセージエッグマフィンへの愛をめちゃかっこいい言い回しでラップしてますね。
甲田:そうなんです。もう私、ソーセージエッグマフィンがほんとに大好きなんです。「ただのパンじゃん」って人もいると思う。でも私にとっては全然違う。そこにこだわるのが私のスタイルなんです。がっつりラップする曲は初めてだから、強気のレペゼン系でいこうと思いました。
ーーリリックにある“BOP”とはどんなニュアンスなんでしょうか?
甲田:単語本来の意味は破壊とか壊すとか。でもそれがスラングになって“イケてる”みたいな使われ方をしてるんですよ。私自身のルーツであるビバップ(bebop)とはまた違うニュアンスなんですけど、今は“イケてる”って意味のスラングになってる。それが面白いと思ってリリックに使いました。
ーーちなみにビバップとはどんな音楽なんでしょうか?
甲田:まさにさっき挙げたバド・パウエルとモンクの音楽ですね。あの2人はビバップを極めた人たちです。最初にニューオリンズで生まれたジャズは人々が踊るために演奏する音楽だったんです。バックバンド的な。でもそこから割とすぐ40年代とかに奏者が主役になる早弾きスタイルになるんです。簡単に言うとそれがビバップです。
ーー誰かのためのトラディショナルではなく、荒々しいストリートのバイブスということですね。そこは甲田さんがクラシックからジャズにいった経緯にも通じますね。
甲田:はい。と同時に私の中には「Snowdome」のような面もあって。いろんなチャンネルがある。その中のどれかじゃなくて、全部で甲田まひるです。だから好きに作りたい。そこを大切にしたい。むしろそこだけを意識してます。そして最終的には最初に描いていた自分の中でのポップスに近づけていけたらいいなと思っています。
■リリース情報
3rd Digital EP 『Snowdome』
配信日:2022年12月23日(金)
先行配信日:2022年11月25日(金)
EP収録内容(全3曲収録)
甲田まひる「Snowdome」配信リンク
https://mahirucoda.lnk.to/snowdome
1、Snowdome(読み方:すのーどーむ)
作詞作曲:甲田まひる、SUNNY BOY
編曲:SUNNY BOY for TinyVoice,Production
Produced by SUNNY BOY for TinyVoice,Production
2、SECM (Sausage Egg & Cheese Muffin) (読み方:そーせーじえっぐちーずまふぃん)
作詞作曲:甲田まひる
編曲:yung xansei
3、Snowdome (Instrumental)
作曲:甲田まひる、SUNNY BOY
編曲:SUNNY BOY for TinyVoice,Production
Produced by SUNNY BOY for TinyVoice,Production
■関連リンク
甲田まひるオフィシャルサイト https://mahirucoda.com/
3rd Digital EP『Snowdome』特設サイト https://mahirucoda.com/Snowdome
甲田まひるオフィシャルInstagramアカウント https://www.instagram.com/mahirucoda/
甲田まひるオフィシャルtwitterアカウント https://twitter.com/mahirucoda
甲田まひるオフィシャルTikTokアカウント https://www.tiktok.com/@mahirucodasaid
甲田まひるオフィシャルFacebookアカウント https://www.facebook.com/mahirucoda
サイン入りチェキプレゼント
甲田まひるのサイン入りチェキを1名様にプレゼント。応募要項は以下の通り。
応募方法
リアルサウンド公式Twitterか公式Instagramをフォロー&本記事のツイート、または応募ツイートをRTしていただいた方の中から抽選でプレゼントいたします。当選者の方には、リアルサウンドTwitterアカウント、もしくはInstagramアカウントよりDMをお送りさせていただきます。※当選後、住所の送付が可能な方のみご応募ください。個人情報につきましては、プレゼントの発送以外には使用いたしません。
※当選の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。
※チェキはランダムでの発送となります。指定はできません。
※当該プレゼントは、応募者が第三者へ譲渡しないことが応募・当選の条件となります(転売、オークション・フリマアプリ出品含む)。譲渡が明らかになった場合、当選は取り消され賞品をお返しいただく場合がございます。
リアルサウンド 公式Twitter
リアルサウンド 公式Instagram
<締切:12月21日(水)>