(sic)boy、海外シーンとも共振する“孤独”や“死”を昇華した音楽 エモラップの寵児 nothing,nowhere.とのコラボが意味するもの

(sic)boy、国内外で注目されるアーティスト性

 まずは、(sic)boyが国内シーンの中で、特異かつ貴重な存在であることを認めるところから始めよう。

 Soundcloud出身、ロールモデルの1人としてL'Arc~en~Cielのhydeからの影響を公言する(sic)boyは、いわば内性と外性、その両方を併せ持つアーティストと言える。内と外。この言葉を扱うには慎重にならなければいけないが、(sic)boyのアーティスト性にはあらゆる意味でその言葉が浮かばずにはいられない。

 例えば、その音楽性である。海外のエモラップに接続するような、孤独や死などのダークな主題を含む内省表現とフロウを携えながら、ラウドネスあふれる歌唱と捻ったメロディセンスによって、時に曲自体は外に開かれるような、解放的な様相を湛える。

 また、ミクスチャーやポップパンクなどのロック音楽的文脈との接続をサウンドで持ち、上記のエモラップへの共振も含め、グローバルでジャンルレスなサウンドを奏でる一方で、KMをはじめとして、国内ヒップホップのトップランナーであるプロデューサー陣と精力的にタッグを組むことによって、国内シーンの文脈も確実に捉え、その中で存在感を強める。

 それらは、まさにKMとの共作である2つの作品、EP『(sic)’s sense』やアルバム『CHAOSE TAPE』を聴けば容易く確認できるだろう。独特のワードセンスとフロウが目立つラップと、トラップサウンドをベースとした良質なヒップホップ作品でありながら、独自のバランス感覚で、ロックジャンルと接続し、歌唱とラップを行き来するエキサイティングな2作だと言える。

 さらに、昨年リリースしたアルバム『vanitas』はLAでのレコーディングを実施。収録曲ではlil aaronやphem、Wes Periodといった海外アーティストと共演し、上記の音楽的な文脈を、説得力を携えながら固めていった。

Afraid?? feat. nothing,nowhere. (Visualizar by JACKSON kaki)

 国内シーンとグローバルなサウンドの文脈を同時に携えながら、精力的に活動をする(sic)boy。そんな中で11月23日にニューシングル「Afraid?? feat. nothing,nowhere.」をリリース。いかにも彼らしい、孤独と混沌、そして死について歌ったダークでエネルギッシュなこの楽曲で、USのアーティスト nothing,nowhere. とコラボレーションを果たした。

 今、nothing,nowhere.と(sic)boyが合流したことは必然とも言える。(sic)boyと同じくSoundcloud出身というルーツを持つnothing,nowhere. は、リル・ピープやXXXテンタシオン亡き後、近年のエモラップの寵児として、ダークな内省世界を表現し、本国のメディアから高く評価されてきた。過去のインタビュー(※1)でも彼のファンであることを公言してきた(sic)boyにとっては、まさに念願のコラボとなったが、当然というべきか、両者の音楽性は非常に近いものだと言える。

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