ハリー・スタイルズ、5年ぶりの来日公演を見逃せない理由 ソロアーティストとして進化し続ける“全方位的な表現力”

ハリー・スタイルズ、来日公演を見逃せない理由

 ビリー・アイリッシュにレディー・ガガ、ブルーノ・マーズと海外アーティストによる空前の来日公演ラッシュが続く2022年。この勢いはRed Hot Chili PeppersやThe 1975の公演が決定している来年も続きそうだ。その流れをさらにプッシュするかのように、とびきりのビッグニュースが届いた。

 ハリー・スタイルズ、約5年ぶりとなる来日決定である。2023年3月24日、25日、東京・有明アリーナで開催される予定だ。この報を聞いて筆者個人としてはすでに浮足立っているのだが、本稿ではなぜ今回の公演が「絶対に見逃せないライブ」なのか、3つの側面から語っていきたいと思う。

(1)70〜80年代へのリスペクトに溢れた音楽性で、ソロアーティストの評価を確立

 もしかしたら、ハリー・スタイルズという存在に対して、未だに「元One Direction」のイメージを強く抱いているという方は多いかもしれない。だが、現在の彼はその肩書きを必要としないほどに、ソロアーティストとしての確固たる地位を確立している。

 2017年のソロデビューを経て、1stアルバム『ハリー・スタイルズ』(2017年)、2ndアルバム『ファイン・ライン』(2019年)はそれぞれ世界的な大ヒットを記録。特に、シングル「ウォーターメロン・シュガー」(2020年)では自身初となる全米シングルチャート1位を記録するだけではなく、『第63回グラミー賞』において「最優秀ポップ・ソロ・パフォーマンス」を受賞し、セールス面に加えて批評面においても成功を収めている。

 その成功の鍵となったのが、自身がリスペクトしてやまない1970年代・80年代のポップ/ロックミュージックへの愛情がたっぷりと込められた音楽性だ。デビュー曲「サイン・オブ・ザ・タイムズ」の時点でデヴィッド・ボウイやPink Floydからの影響を彷彿とさせるような重厚なロックバラードを披露(タイトルもプリンスから拝借したのではないだろうか)しているように、良い意味でトレンドに左右されることなく、自分にとってのルーツである音楽と正面から向き合い、その時々の自分らしさを表現するのがハリーのやり方である。それは、もしかしたら徹底的に大衆と向き合ったOne Direction時代の反動なのかもしれない。だが、そんな内省的な在り方こそが現代を覆うムードと重なったのだろう。心地良いベースラインに乗せて、どこまでもスウィートに逃避主義的な感情を歌い上げた「ウォーターメロン・シュガー」の大ヒットは、そんな彼のポップシーンにおける受容の在り方を象徴していた。

Harry Styles - Sign of the Times (Official Video)
Harry Styles - Watermelon Sugar (Official Video)

 そんなハリーの現時点での集大成が、今年リリースした3作目のオリジナルアルバム『ハリーズ・ハウス』だ。全米・全英チャート1位という大ヒットを達成し、収録楽曲の「アズ・イット・ワズ」は全米シングルチャートで通算15週に及ぶ1位を記録。間違いなく今年のポップシーンを代表する作品といって良いだろう。a-ha(アーハ)の「テイク・オン・ミー」を再解釈したかのような同楽曲が示す通り、今作においても70年代/80年代の音楽と向き合う作風は継続しており、ニューウェイヴからサイケデリックロックに至るまで、幅広いジャンルのエッセンスを取り入れた至高のポップソングが展開される。だが、今作のユニークな点は、ただ過去の音楽をオマージュするだけではなく、常に心地よく感じられる、聴き手を包み込むような音像を作り上げている点だろう。「ミュージック・フォー・ア・スシ・レストラン」や「デイライト」といった楽曲に象徴されるように、バンド全体から生み出される圧倒的なサウンドスケープも絶品だ。このような楽曲の数々が実際のライブ演奏によってどのように変貌を遂げるのか。それこそが、今回の来日公演における最大の見どころと言っても良いはずだ。

Harry Styles - As It Was (Official Video)
Harry Styles - Music For a Sushi Restaurant (Official Video)

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