access、デビュー30周年迎えてもなお強くなる“最先端”への渇望 90年代から現在までブレない創作スタンスとは?

access、デビュー30周年インタビュー

「音楽が持ち歩ける時代だからこそ、その場でしか聴けない音を提供」(浅倉)

access 「JEWELRY ANGEL」from [access 30th Anniversary ELECTRIC NIGHT 2022]

ーー直近の大きなターニングポイントは、2015年春から始めたツアー『ELECTRIC NIGHT』だと思います。お二人にとって、どういう存在ですか?

浅倉:スタート当初からボクの中では、やりたい音は見えていました。

貴水:リアルタイムリミックス。

浅倉:そう。ライブと同時進行でリミックスしていく、まったく新しい試み。だから、HIROは不安だっただろうし、PAスタッフに説明する時間も必要でした。ボクのコンピュータからパラ(パラレル)で音をPAコンソールに送り、そこで左右のステレオに振り分けて整えてもらい、普通はそれを会場に出すけど、それをステージ上のボクのミキサーに戻して、ボクがリミックスした音をまたPAコンソールに送るという……。ライブ中、突然、ボクがミキサーですべてのトラックをオフる可能性もあるわけで。そうすると、まったく無音の中でも、HIROは歌い続けなくちゃいけなくなるから。それを可能にするためにどうするかとか。細かい打ち合わせが必要でした。

ーー誰もやったことのないスタイルですね。

浅倉:だから、スタッフも前のめりになって面白がってくれました。原宿ルイードの時代は、CDと同じ音をライブで再現するためには、10台以上のハードシンセとか、プロじゃないとできないシステムが必要でした。でも、2010年代中頃になると、PCが1台あれば、誰でもライブで再現できるようになったので、もっと上というか、もっと前に行かないと、エンターテイメントとしては面白味に欠けますよね。同時に、スマホで音楽が持ち歩ける時代だからこそ、その場でしか聴けない音を提供したいって思いも強かったです。

ーー規格外の発想ですが、一般論としては、ボーカリストが難色を示しそうですが……。

浅倉:ですね。ボーカリストには厳しいスタイル。

貴水:僕は、基本、面白いことが好きだから。ステージ上で大ちゃんがリミックスするとなると、音がどうなるか予想できない。1秒先すら予測できないじゃないですか。つまり、大ちゃんのリミックスに反射的に対応できるかの勝負。そんなエキサイティングなチャレンジは他ではできませんから。大ちゃんとのaccessだけ。だから、面白いし、新鮮だし、やり甲斐もあります。

浅倉:DJが音楽をかけるだけじゃなくて、クリエイターになった時代でしたね。「曲を発売します」じゃなくて、「トラックをドロップします」みたいな表現に最先端感が出た時代というか。そういう時代背景の中、打ち込みの音楽は、ライブでの再現性が究極まで行きつきました。つまり、音楽的ハプニングがほぼなくなったわけです。だけど、生演奏のスリルもライブの醍醐味のひとつであることは変わらないから。打ち込みの音楽でその醍醐味を求めたら、リアルタイムでのリミックスも大きな選択肢ですよね。

貴水:でも、あのスタイルでやっているのは僕らだけ。その意味では、accessの必殺技になっています。

ーー一般的にボーカリストが「勘弁して」と言う(笑)。

貴水:僕は、もっともっとアグレッシブにやりたい。だから、もっともっとリアルタイムリミックスライブの新しさや楽しさを打ち出したいです。思ったほど、大ちゃんもそこを推さない(笑)。

浅倉:もっと言ったほうがいい?

貴水:どんどん言ってこ。

浅倉:もともとインストゥルメンタルだったせいか、言葉での説明が苦手なんだよね。

貴水:じゃあ、僕が声を大にして言うよ(笑)。

浅倉:30年前は、ライブのMCもうまく話せなかった。

貴水:当時のMCは、必要最低限のことしか喋らなかったよね。今は、「もういいよ」って言われるくらい喋る(笑)。

浅倉:舞台監督から「今日のMCは30分」と呆れられるくらい(笑)。話が長くなったとき、HIROがどうやって曲に戻ろうか苦労しているのはわかってる。

貴水:あ、わかってたんだ(笑)。

浅倉:でも、自分ではどうしていいかわからない。で、HIROに放り投げる(笑)。だって、お客さんに向かって「行くよ!」とか、「もっとやるよ!」とは、自分としては恥ずかしくて叫べない。

ーー30年経っても無理?

浅倉:無理(笑)。

貴水:話が終わるかなと思ったら、いきなり別の話題に飛んだりもするけど、僕の中では、大ちゃんが満足するまで絶対止めないって決めてる(笑)。

「原点を見つめ直そうというか、精神的な原点回帰」(貴水)

ーーちなみにMUSIC CLIPのお話も少し聞かせてください。たとえば「SWEET SILENCE」。二人でじっと座っているシーンが印象的でした。「座ってるだけ!?」と(笑)。

貴水:そうだったような、どうだったか、記憶が曖昧です。それくらいスケジュールが詰まっていましたね。

浅倉:リミックスのため、ツアー先に機材車が来て、ホテルの部屋にリミックスができるようにセッティングしてもらったこともあります。今ならPC1台で済むけど、あの頃はそれなりの機材がないとリミックスすらできなかった。

貴水:僕が一番鮮明に覚えているのは、大ちゃんがレコーディングスタジオでひたすら電卓みたいなボタンをカタカタ叩き続けている姿。永遠とカタカタやっていた。何してるんだろう?と、本当に最初は不思議だった。

浅倉:ヤマハのQXというシーケンサーに音やフレーズを入力していたんだよね。

貴水:指の動きが超速かった。やっている内容はわからないけど、あの速さだけで、きっとすごいことをやっているに違いないと(笑)。

ーー「MOONSHINE DANCE」は、アメリカの荒野での撮影。

貴水:ハリウッドの映画スタッフで撮りました。

浅倉:のちのちジュラシックパークの撮影地で有名になった場所ですね。ボクが忘れないのは、「TEAR'S LIBERATION」の白塗り事件(笑)。写真撮影でいう「飛ばす」という撮り方をやろうとして。強い光を当てて、「もうこれ以上は飛ばせません」という限界まで調整してもらったのに、イマイチ効果がわからなくて。誰が言ったのかな?「だったら、顔を白く塗れば、もっと飛んだ画になるんじゃないの?」と。で、急きょ、ボクの顔を白塗りにしてもらって撮影したら……。ただ、白塗りしただけの画になった(笑)。今、冷静に考えると、よくもまあ、あのアイデアにトライしたと思います。志村けんさんのバカ殿状態で、「さすがにこれはマズイ」となって、メイクを落として、撮り直しました。

貴水:あのとき、僕はドラマ班だったので(笑)。白塗りしないで済みました。

浅倉:「MISTY HEARTBREAK」の撮影も、今では考えられない昭和な手法でした。当時としては、最先端のCGを使っているけど、実写とCGをシンクロさせるテクノロジーがまだまだ普及していなかったので、監督さんが「1、2、3」とか、動くタイミングを指示してくれたり。完成形は、当時としてはデジタル感満載だったけど、撮影現場は超アナログ(笑)。

貴水:今話したような撮影の裏というか、メイキングのいくつかは『30th ANNIVERSARY MUSIC CLIPS COLLECTION BOX』で観ることができます(笑)。

ーーサウンドもビジュアルも先取りしているaccess。 先取りヒストリーを収録したBlu-ray3枚組です。

浅倉:実は、アルバムタイトルもかなり先取りしていました。

貴水:それももっと言ったほうがいいよ。どんどん言ってこ。

浅倉:『Rippin' GHOST』のリッピング、『Secret Cluster』のクラスター、『Heart Mining』のマイニングとか。

ーー今では、どれも耳なじみのある言葉ですね。

浅倉:スティーブ・ジョブズがiTunes Music Store(現iTunes Store)を始めた頃、きっと音楽のあり方も変わると思って、アルバムタイトルにリッピングを入れたら、数年後には世界中でリッピングするようになったり。コロナ禍でクラスターという言葉が広く知られて、広く使われるようになったり。マイニングも、ビッグデータや仮想通貨が知られるようになった昨今、広く使われていますよね。

貴水:次からアルバムタイトルについてももっと語ろうよ(笑)。

浅倉:30周年のツアー·タイトルが『primitive heart』です。

貴水:primitiveは原始的な、昔の、本来の、という意味で。Heartは心、感情、熱意とか。原点を見つめ直そうというか、精神的な原点回帰というか。

ーーライブでは、どの曲もニューバージョンになる傾向が強いaccessですが、ツアータイトルにprimitiveが入っているからには、オリジナルバージョンも聴けそうですか?

浅倉:全曲オリジナルとはならないですね。最先端の音を作りたい気持ちに曇りはありません。ただ、オリジナルを聴きたい気持ちもわかります。ニューヨークまで大好きなPet Shop Boysのライブを観に行ったとき、リミックスバージョンを演奏したんですね。そのとき、「オリジナル聴きたかったなー」と思いました(笑)。だから、そこはバランス。

貴水:前に進みたいaccessを広い心で受け入れてくれるのがファンのみなさん。だから、『ELECTRIC NIGHT』みたいな斬新なライブで盛り上がってくれるし、一般的なバンド編成のライブも喜んでくれるし。グルーヴが一新するニューアレンジも、オリジナルも同じように受け止めてもらっています。そんなスタンスをキープしてくれるのは、僕らのファンの人たちだけだと思います。本当に感謝しています。

浅倉:その優しさがあればこその30周年。支えたり、支えられたりしながらの30年。これからもヨロシク。

■リリース情報
新曲ベータ版のレコーディング音源配信開始
「新曲M-1」https://linkco.re/MND24G2a
「新曲M-2」https://linkco.re/pVNvrdNC

『30th ANNIVERSARY MUSIC CLIPS COLLECTION BOX』
2022年11月23日(祝・水)発売
完全生産限定盤 3BD  品番:MHXL 125~7 ¥16,500(税込)
スペシャルブック、フォトカード付、三方背BOX仕様
詳細:https://www.sonymusic.co.jp/artist/access/info/546043
予約・購入:https://lgp.lnk.to/6VBKSVxn

■ライブ情報
『access 30th Anniversary TOUR 2022 primitive heart』
11月05日(土) 埼玉 サンシティ越谷市民ホール
11月26日(土) 東京 立川ステージガーデン
11月27日(日) 東京 立川ステージガーデン
12月02日(金) 東京 中野サンプラザ
12月11日(日) 兵庫 神戸国際会館こくさいホール
12月17日(土) 愛知 日本特殊陶業市民会館ビレッジホール

■関連リンク
access Official Website
https://www.access-web.jp/

access Official Twitter
https://twitter.com/access_official

access official YouTube channel
https://www.youtube.com/user/accessofficial

access Sony Music Official Site
https://www.sonymusic.co.jp/artist/access/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる