GRAPEVINE『another sky』はなぜキャリアの転機となったのか? 20年越しの再現ライブで示した“バンド活動の変遷”
西原はベーシストであることに加え、作曲も多く手がけており、1stシングル表題曲「そら」や『Lifetime』収録の「25」といったポップチューンを得意としていた。このステージで演奏した「BLUE BACK」も西原の楽曲だ。
GRAPEVINEらしい骨太なバンドサウンドが一段とスケール感を持って響き、間奏では田中と西川が力強いギターソロを聴かせた。今よりもルーツロック寄りの演奏をしていた当時を彷彿とさせながら、現在の彼らならではの楽曲にしている。これこそが、GRAPEVINEが存続しているという西原へのプレゼンテーションだったのではないだろうか。
再現ライブと謳っている公演ではあったが、再現ライブを1部とし、2部では最新作『新しい果実』からの曲やお馴染みの曲も演奏しており、その中に西原が作曲した「コーヒー付」「Scare」が加えられていた。どちらも3rdアルバム『Here』収録曲だが、これは4人が揃って制作した最後の作品になる。この選曲もまた、西原への3人の思いを感じさせるものだった。安易にステージに呼んだりせず、今の自分たちを伝えることでバンドを退いた西原の思いに応えたのが、何よりGRAPEVINEらしい。このライブを見た西原は「すごく好きでカッコいいバンド。僕は音楽を続けているが、(彼らを見て)悔しい思いもしている」と明かしている。今も互いをリスペクトし合い、それぞれに進んでいる4人は見ていて清々しい。
今では高野と金戸を加えた5人がGRAPEVINEだと田中たちは言うが、実質的にメンバーとしてクレジットされるのは田中・西川・亀井の3人だ。高野や金戸は他のアーティストのサポートなども多く手がけているといった事情もあるのだろうが、3人にとっては西原と組んだ4人がGRAPEVINEだという気持ちもあるのではないかと思ったりもする。飄々と活動を続けてメジャーデビュー25周年を迎えたGRAPEVINEだが、内には痛みも忸怩たる思いもある。そんなことを思わせる再現ライブ『grapevine in a lifetime presents another sky』で、彼らの足跡を改めて確認したい。
■映像作品情報
GRAPEVINE
Live Blu-ray & DVD『in a lifetime presents another sky』
2022年12月21日(水)発売
<商品仕様>
・Blu-ray+LIVE CD:¥7,480(税込)
https://www.jvcmusic.co.jp/-/Linkall/VIZL-2136.html
・DVD+LIVE CD:¥6,380(税込)
https://www.jvcmusic.co.jp/-/Linkall/VIZL-2137.html
※LIVE CD(1CD/60min Size)
公演1部『another sky』再現ライブ音源CD
■配信情報
GRAPEVINE
「アナザーワールド(in a lifetime presents another sky live at Hitomi Memorial Hall 2022.07.02)」
2022年11月4日(金)配信開始
ダウンロード/ストリーミングはこちら