なぜサッカーとロックは相性がいい? RADWIMPS、ONE OK ROCKからKing Gnuまで、歴代アンセムの共通項

 このように、ひと口にサッカーアンセムといっても、その方向性や個性はアーティストごとに大きく異なるが、それでも多くに共通しているのは、リスナーも一緒に歌いたくなるパートが含まれていることだ。「Mugen」のイントロのコーラス、「君と羊と青」のBメロの叫び、「Aoi」や「We are」での楽曲全体を彩る壮大なコーラス。つまり、サッカーファンがスタジアムで声援を送っている光景のイメージが、どの楽曲においても制作の鍵になっているのではないかと思う。

 だが、2018年にNHKサッカーテーマソングを担当したSuchmosは、「VOLT-AGE」というまた新しいタイプのサッカーアンセムを生み出した。この曲は疾走感を重視していない。かといって壮大な演奏とも少し違う。シンガロングを促すようなパートもない。聴いているうちに、少しずつ熱を帯びていき、ジワリと胸が熱くなってくる楽曲なのだ。

Suchmos 「VOLT-AGE」2018.11.25 Live at YOKOHAMA ARENA

 よくよく考えるとサッカーは、いきなりフルスロットルで盛り上がるスポーツではない。サッカー観戦も、手に汗を握りながら、緊張したり興奮したりを繰り返す。「VOLT-AGE」はその様子が音楽にも表れている、サポーターの心の動きに寄り添ったサッカーアンセムなのだ。そして2022年にNHKサッカーテーマソングとなったKing Gnuの新曲「Stardom」も、同様にジワリと熱量を帯びていき、少しずつリスナーの心を奮い立たせるような楽曲だ。彼らもサポーターの気持ちに寄り添うアンセムを作ったと言える。盛り上げることも重要だが、寄り添うことも必要なのだ。

 こうした人々の心に刻まれるサッカーアンセムには、必ず共通しているものがある。それは応援する人の気持ちを昂らせる手助けをしていることだ。時代が移り変わっても、その軸がぶれないサッカーアンセムは、人の心に残り続けることだろう。

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