まもなく最終告白迎える『オオカミちゃんくん』 劇中でBGM 麗奈「好いひと」が果たす役割

『オオカミちゃんくん』麗奈の曲が果たす役割

 ABEMAの大人気恋愛番組『オオカミ』シリーズの最新作『オオカミちゃんとオオカミくんには騙されない』(以後、『オオカミちゃんくん』)も、残すところあと数話となった。真実の恋を探す男女の等身大の姿を追いながらも、その中に「好きではないのに好きなフリをする嘘つき“オオカミ”」が紛れていることで物語はより複雑になり、切なさが倍増していくのが本作の見どころだ。シリーズ史上初、男女どちらにも恋をしない“オオカミ”が1人以上潜むという新ルールが導入された今作では、三角関係が形を変え複数見られた。

 三角関係の裏では自ずと報われない恋が生まれるわけだが、番組で片想い側の視点が映し出される時、あるいはその切実な想いが打ち明けられる場面を、毎回そのちょっぴりほろ苦くて緊張感の漂う空間ごと優しく包み込んでくれるBGMが流れる。麗奈の「好いひと」だ。

 一度聴くと魅了されてしまう不思議な引力と揺らぎのある歌声と、報われぬ恋をそっと掬い上げ、それを賛美しすぎるのでも悲観しすぎるのでもない、心地いい距離感で紡がれる真っ直ぐな歌詞は何度も味わいたくなる。ストリーミング再生数は毎週伸び続け、TikTokは現時点で870万回再生を超え、YouTube、SNS等での再生数は概算でトータル1,000万回を突破。TikTokやInstagramではUGCも1,000本近くアップされ、若者を中心に広がりを見せているのも頷ける。そもそも麗奈自身、チャンネル登録者680万人を超えるYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」が開催した一発撮りオーディションプログラム「THE FIRST TAKE STAGE」にて、全国各地から約5,000組以上集まった応募者の中から見事グランプリに輝いた新星。オーディション以降、“僕三部作”として「僕だけを」「僕らの明日」「ぼく」と、自身の心の中のメッセージを歌ってきたが、メジャーデビューシングルとして“恋三部作”の第一弾「キミをアイス」に続きリリースされたのが「好いひと」だ。

 『オオカミちゃんくん』では特に「好きな人が笑っていてくれたらそれで良い」と自分の気持ちや幸せは後回しにして相手から笑顔を引き出すことを望んだり、自分の本音を飲み込み少し離れた場所から見守っている、そんな健気なメンバーが紡ぎ出すサイドストーリーが至るところで光っている。そんなある意味「恋愛」という舞台においては“脇役”とも言える片想いをしている側の優しさや努力、葛藤を見逃さず、そっと寄り添ってくれるのがこの曲だ。それを「好いひと」として、どこか自虐的に切り取りつつも、それでもその中にある、その立場でしか味わえない幸福や希望、強い意志など片想い側の矜持が盛り込まれている。儚げなのに力強い。

 祈るような、心に染み入るような麗奈の伸びやかでどこか懐かしい歌声とアコースティックギターの音が一体となり、恋の醍醐味でもある“届きそうで届かない”距離感を物語る。それもそのはず、麗奈の音楽のルーツは幼少期に家族が聴いていたフォークソングにあるようだ。どこか影を落としつつも温かみがあるその歌声は“片想い”の悲哀と静かな決意を感じさせる。切なさも滲むが、オーディエンスからの安易な同情は惹きつけまいとする強さも感じられる。「人の幸せをあなたの尺度で測らないでほしい」というメッセージも暗に込められているようにも思える。

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