伊藤美来、成長づくめな5周年を経て ライブツアー『What a Sauce!』で繰り広げた挑戦の舞台裏

伊藤美来、最新ライブツアー舞台裏

「CDとは違うアレンジを自分で判断できるようになった」

ーーそういう驚きもあり、前回のインタビュー(※1)で「歌うのが難しそう」と話していた「パスタ」も見事に歌いこなしていました。楽曲単位で聴いたときは、ちょっと独特な節回しだなと思っていたけど、今回のライブの流れで聴くとまったく違和感がなかったですよ。

伊藤:食事ブロックの流れで最後が「パスタ」、しかも実食までさせていただいて。「パスタ」という曲を作ったのはいいものの、ライブでどう見せるかというのをスタッフさんたちもみんなすごく悩んでいて。特に「青100色」と「パスタ」は大きいライブで初披露になるので、ちょっとインパクトを残す演出にしたかったんです。それですごく頭を悩ませて、「じゃあもう食べよう」と(笑)。MVでずっとパスタを食べていたから、ライブでも食べればいいんじゃないかみたいな流れで決まりました。だけど、リハでは一回も食べて歌ったことがなくて、大阪で初めて挑戦したんですよ(笑)。

ーーMCでもおっしゃっていましたが、最初は食べる量の加減が難しかったとか。

伊藤:大阪公演ではうまいことフォークに巻けたから、それを頬張ったら逆にMCで喋れなくなるという(笑)。それで、東京公演では頑張って巻く量を減らしたんですが、オイル系パスタだったのでツルツル滑ってうまく巻けなくて。最後は諦めて、吸うっていう方向で食べました(笑)。

ーー映像で手元を確認すると、確かに最初は上手に巻けていませんが、あれはそういう事情だったんですね。

伊藤:そう、音に合わせてとかじゃなくて、巻けなくてひとり焦っていたんです(笑)。うまく巻けなくて「曲が終わっちゃう……(汗)」って。

ーーにしても、ライブ中に演者さんが食事をするという演出も、なかなか攻めていますよね(笑)。

伊藤:確かに(笑)。しかも、最初に上から登場して、パスタまで食べて。演出だけ見るとぶっ飛んでますよね。ライブを観に来てくれた方から「食べてたね!」とびっくりされましたから(笑)。

ーー序盤はそういう印象的な演出がありつつも、それ以降は正統派といいますか、曲の世界観に合った見せ方で観客をどんどん歌の世界に引っ張り込む、そういう内容でした。

伊藤:自分で言うのもなんですけど、これまで作っていただいた楽曲は素晴らしいものばかりで、ライブ映えする曲も多いので、前半がショーパートだとしたら後半は曲に浸りながら一緒に楽しんでもらう感じにできたかなと思います。

ーー中には久しぶりに歌う楽曲も含まれていましたよね。

伊藤:「Morning Coffee」とか「ミラクル」とか、「土曜のルール」や「ルージュバック」もそうですね。

ーーレコーディングしたときや最初にライブで披露した頃と比べて、今歌うことで受ける印象に違いを感じることはありましたか?

伊藤:以前と全然違いました。前にこの曲たちを歌っていたときは、とにかくレコーディングのことを思い出して、レコーディングと同じように歌うことが一番かなと考えていて。それはレコーディングに時間をかけて、この曲が一番よく聴こえる歌い方をディレクションしてくれているはずなので、出来上がったCD音源に近いのがこの曲を一番綺麗に表現できると思っていたんです。だから、以前は音源を聴いて「ここは地声だった、ここは裏声だった」とかチェックしてライブに向けて練習していたんですけど、今はたくさんいろんな経験をさせてもらったことで自分が出しやすい音とか「こうしたらうまく伝えられる」というのもわかってきたからこそ、CDとは違うアレンジを自分で判断できるようになったと感じました。

ーーそういうところにも、積み重ねの成果が表れていると。そういう過去の楽曲たちは今の伊藤さんが歌うことによって、完全に「2022年の伊藤美来の歌」として成立していると感じられました。

伊藤:たぶんMCでも言っていたんですけど、そういうふうに成長した感じとか大人になった姿を見せたいと思っていたので、そう感じ取ってもらえていたらうれしいです。

ーーそういう意味でも、最新の楽曲「気づかない?気付きたくない?」のあとに「土曜のルール」「ルージュバック」という初期の楽曲が並んでも違和感なく、新しい曲を聴いている感覚で楽しめたんですよ。

伊藤:「土曜のルール」や「ルージュバック」は久しぶりに歌ったけど、よりいい感じに馴染んでくれていたのかなと。それこそ、昔からディレクターさん、プロデューサーさんが考えてくださっていた音楽性がブレずにここまできているからこそ、昔の楽曲と最新の楽曲が並んでもまったく違和感なく、計算されて作られているように聴こえるのかもしれませんね。とはいえ、当時の私は何もわかっていなくて、ついていくことに必死だったんですけど、当時からそんなことまで考えて作ってくださっていたんだなと、大人になった今改めて感じます。

ーーそれがより顕著に表れていたのが、「青100色」と「泡とベルベーヌ」の並び。最新シングルとデビューシングルを並べることで、伊藤さんの成長した姿、現在の見せたい方向性やその歌のカラーがしっかり表せていたと思います。

伊藤:そうですね。「青100色」を作ったときもデビュー曲「泡とベルベーヌ」のことは頭にありましたし、5周年イヤーにリリースされる楽曲ということで「ここまで来られたけど変わらないところもあるよ」というのをファンの方に聴いて感じてもらえたらうれしいなというところもあって。なので、「この2曲は連続で歌いたい」ということは最初のセットリスト会議のときから決まっていました。

 とはいえ、この2曲を歌うのはすごく緊張しましたね。「青100色」はライブ初披露でしたし、その次にデビュー曲、しかも結構久しぶりに歌ったので。かつ、歌う直前のMCで強気なことを言っちゃったのもあって、よりプレッシャーを感じてしまったんです。なので、より頑張るぞと気合いの入ったブロックでした。

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