初音ミク×オーケストラが届けた、リアルとバーチャルを越境する音楽 『初音ミクシンフォニー2022』横浜公演レポ
前半はフルオーケストラによる荘厳かつ厚みのあるサウンド中心の構成だったが、後半は様々な楽器をフィーチャーしてのコンチェルト（協奏曲）が並んだ。まずはマリンバ奏者の塚越慎子を迎えた「ビターチョコデコレーション」（syudou）、「ショウタイム・ルーラー」（カラスヤサボウ）、「テレキャスタービーボーイ」（すりぃ）と、軽快な中にも毒や狂気を感じさせる小粋なナンバーのメドレー。さらにMEIKO、KAITOのMCを挟みバイオリンコンチェルトでの「上弦の月」（黒うさP）から「黄泉桜」（仕事してP）メドレーと、秋の夜長にぴったりの名曲が並んだ。前半終了前のナンバーから続くオフボーカルのメドレーは、楽曲そのものの味をさらに引き立てる。ボーカロイド楽曲制作者が、ソングライターとしていかに非凡なスキルを持っているかが、オフボーカルの協奏曲でさらに際立つと同時に、そのような才能を、インターネットを通じて世に送り出してきたバーチャルシンガーの偉大さを肌で感じる。
そしてボーカル曲に戻り、164と40ｍPによる「1640mP」のヒットナンバー「タイムマシン」（ミク、MEIKO、ルカ、リン）。バックに流れるのは、巨大なミクがタワーを作る、有名なPVだ。このライブは映像演出も素晴らしく、曲によってはオリジナルPVだけでなく、セガの音楽ゲーム「初音ミク -Project DIVA-」バージョンのPVも盛り込まれるなど、演奏と一体となってライブを盛り上げていた。本編ラストは、この横浜公演のために書き下ろされた楽曲「青を焚べて」。楽曲制作者のkeenoは、初音ミクの音声ライブラリーの中でも落ち着いて大人びた声である「Dark」の使い手として知られている。悲しくも透きとおった初音ミクのボーカルが印象的なナンバーで、ライブは締めくくられた。
大きな拍手に応えてアンコールへ。本編からガラリと雰囲気が変わり、「大江戸ジュリアナイト」（Mitchie M）、「千本桜」（黒うさP）とアップテンポの和テイストナンバーで盛り上がった後、抒情的なオリジナルPVに乗せた「Fire◎Flower」（halyosy）へと続く。9月下旬とはいえまだどこかにある夏の残り香をオーディエンスの胸に刻み込みながら、ラストナンバーとして「SPiCa」（とくP）を披露。清冽な調べがオーケストラアレンジに乗って横浜の秋の夜に溶け、観客が送る鳴りやまないスタンディングオベーションによってライブは幕を閉じた。
クラシックがロックやポップスのライブと大きく違うのは、セットリストが事前に公開されていること。クラシックのオーディエンスは、その曲がどのように演奏され、どう解釈されているかを味わうためにやってくる。『マジカルミライ』などはセットリスト予想も焦点のひとつになっているが、『初音ミクシンフォニー』はバーチャルシンガー楽曲の幅広い楽しみ方を提示してくれる。リアルとバーチャルとの新たな関係を体感できる『初音ミクシンフォニー2022』は、11月23日にラストを飾る大阪公演（ザ・シンフォニーホール）が行われる。次はどんな音楽の風景を見せてくれるのか、期待は尽きない。
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■公演情報
『初音ミクシンフォニー2022』
【大阪公演】
11月23日（水・祝）
ザ・シンフォニーホール
14:30開場/15:30開演
指揮：栗田博文
演奏：関西フィルハーモニー管弦楽団
パイプオルガン：石丸由佳
司会：下田麻美
※大阪公演はフルオーケストラによる生演奏となります。初音ミクをはじめとする歌唱やスクリーン映像による演出はございません。
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【初音ミクシンフォニー】オフィシャルサイト
https://sp.wmg.jp/mikusymphony/
【初音ミクシンフォニー】オフィシャルツイッター
https://twitter.com/mikusymphony
＜参考情報＞
▼「初音ミク」とは https://piapro.net/
クリプトン・フューチャー・メディア株式会社が開発した、歌詞とメロディーを入力して誰でも歌を歌わせることができる「ソフトウェア」です。大勢のクリエイターが「初音ミク」で音楽を作り、インターネット上に投稿したことで一躍ムーブメントとなりました。「キャラクター」としても注目を集め、今ではバーチャル・シンガーとしてグッズ展開やライブを行うなど多方面で活躍するようになり、人気は世界に拡がっております。
※ 「鏡音リン」「鏡音レン」「巡音ルカ」「MEIKO」「KAITO」もクリプトン・フューチャー・メディア株式会社が展開するバーチャル・シンガーです。
https://piapro.net/
