d4vd、アメリカ出身で話題のシンガーがバイラル好調 現行シーンと80年代UKロックをつなげる“新感覚な歌唱リズム”

参照:https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2022-09-14

 Spotifyの「Daily Viral Songs(Japan)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top Songs」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感・共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたランキング。同チャートの9月14日付のTOP10は以下の通り。

1位:THE SUPER FRUIT「チグハグ」
2位:NewJeans「Hype Boy」
3位:d4vd「Romantic Homicide」
4位:藤井風「死ぬのがいいわ」
5位:NewJeans「Attention」
6位:さユり「花の塔」
7位:Eliza Rose & Interplanetary Criminal「B.O.T.A (Baddest Of Them All) - Edit」
8位:INI「Password」
9位:NewJeans「Cookie」
10位:AURORA「Cure For Me」

 今回は3位となったd4vd「Romantic Homicide」をピックアップする。本曲は9月3日付のデイリーバイラルチャートで13位に初登場。9月10日には10位まで順位を上げると、以降も同チャートでじわじわと上昇し続け、本記事執筆中の9月15日付のデイリーバイラルチャートではついに1位を獲得している。

 d4vdーーほとんどの人が初めて目にした名前なのではなかろうか。日本公式ホームページが公開されたのが9月16日。まさに突然現れたニューカマーである。d4vdと書いてデヴィッドと読むこの名前は、2022年9月現在で17歳になる彼の本名・David Anthony Burkeのステージネーム。アメリカ出身のd4vdは、人気ゲーム「Fortnite」の中でオリジナル音源を発表していった際、他のプレイヤーや視聴者から注目を集め、リリースを後押しされたことが、音源のデジタルリリースのきっかけになった(※1)。

 2021年に初音源を発表してからは、かなりハイペースで楽曲をリリースしている。つい先日、d4vd本人がSpotifyで公開したプレイリスト「d4dv:Complete Collection」によれば、現在まで17曲を発表。ヒップホップ、チルホップ、エレクトロニカ、ポストロックとジャンルは多岐に渡るが、どれもクオリティが高い。メロディ云々、バックトラック云々というより、彼のボーカルも含めすべての要素で作り出す音像は、聴く者の聴覚を一瞬で捉えるほどの個性と、1曲を最後まで聴かせる強烈な吸引力がある。この吸引力こそd4vdの魅力である。

 8月23日にリリースされた「Romantic Homicide」は、TikTok上に楽曲を使用した映像が25万件近くも投稿されたことがきっかけで話題に(※2)。同曲をちょっと乱暴に例えるなら“ラップトップミュージック meets  80年代UKポストロック&ニューウェイヴ”。シンプルなギターコードがループする中、端正で流麗なサウンドスケープが抒情的に進行していく。漂うようにゆっくり起伏するd4vdのボーカルアプローチも、低音を喉に戻すようにして響かせたり、トーンの母音を刻むように揺らしたりと、The Cureのロバート・スミスからの影響が窺える。しかしながら、聴いていて憂いや耽美といった言葉が浮かんでこない。それはバックトラックの一音一音がクリアなこと、サウンドのレイヤーが少ないこと、セレクトしている音色が当時(=80年代)と違うことなども関係していると思うが、d4vdのリズム感によるところが最大の要因だと思う。ジャストよりもほんの少しディレイ気味にして歌うことで出てくるニュアンスが、実に個性的なのだ。どこか現在進行形のブラックミュージックのフレーバーを感じさせつつも、ソウルやファンクのフレーバーはない。かといって、“ブラックロック”でもない。そういう意味では、これまでにないバランス感覚で楽曲が成立していると言ってもいいだろう。

d4vd - Romantic Homicide (Official Music Video)

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