back number、“ユーモア”に表れるバンドの本質 2年半ぶりの全国アリーナツアーで届けた全身全霊の思い

back number、“ユーモア”に表れる本質

 今回のライブにおいて最も輝かしいハイライトを担ったのが、コロナ禍で生まれた新たな代表曲「水平線」であった。清水は、会場に集まった一人ひとりの観客が歩むそれぞれの人生に思いを巡らせながら、「100点満点じゃないかもしれないけれど、それでも、あなたの人生は『特別』なんだって俺らが証明し続けるんで、これからもback numberを聴き続けてください」と渾身の想いを語った。学校や会社、家事や子育て、そうした日々の生活の中で、誰にも助けを求められずにしんどい思いをしている人がいるかもしれない。周りに気を遣いながら、自分自身は毎日ギリギリのところで踏ん張って生きている人もいるかもしれない。そうした一人ひとりの“あなた”に向けて届けられた「水平線」が、満員のフロアに響きわたっていく光景は、涙が出るほどに美しいものだった。この曲の終盤で歌われる〈誰の心に残る事も/目に焼き付く事もない今日も/雑音と足音の奥で/私はここだと叫んでいる〉という言葉は、この不条理なコロナ禍の中で、それでも懸命に一歩ずつ前に進もうともがく私たちの人生を、優しく照らし出し、そして、ささやかに肯定してくれた。数え切れない人が、清水が代わりに叫んでくれたあの言葉に、たしかに救われたのだと思う。

 清水が「ありがとう!!」という万感の想いを叫んだ後に披露された「高嶺の花子さん」、「また絶対に迎えに来るから!」という約束と共に届けられた「スーパースターになったら」で締め括られた本編。清水の瞳には、はっきりと涙が滲んでいた。本編終了後、鳴り止まない拍手を受けて再びステージに登場した3人とサポートメンバー。アンコール1曲目「僕の名前を」の後のMCで、清水は次のように語った。

「俺たちなりのやり方で、あなたの人生にとって意味のあるバンドになりたいって腹の底から思ってます」

「しんどい時こそ、言葉にして大丈夫って言えば大丈夫だから。そこにきちんと俺たちの曲がいられるように、堅苦しい曲だけじゃなくて、どんな場面にも寄り添えるバンドになっていきたいと思っているので、これからもよろしくお願いします」

 back numberの表現において、日常を彩るユーモアが大切なエッセンスであることを、改めて深く感じさせてくれるMCであった。そしてこの日のライブは、「日曜日」「そのドレスちょっと待った」の2曲をもって美しい大団円を迎えた。

 「俺らまだ日本一じゃないし、自分たち自身に満足してないんで」と最後に清水が語っていたように、back numberは、これまでにいくつもの堂々たる功績を残してきたバンドであるにもかかわらず、今の3人はまるでデビュー1年目の新人バンドのようにギラギラとしている。約3時間にわたりフルスロットルで届けてくれた彼らは、終演後もまだまだここから駆け上がっていくと言わんばかりの熱くフレッシュな覚悟を燃やしている。気持ちが昂るあまり時にブレーキが効かなくなるような不器用な一面もあるけれど、だからこそ彼らは、私たちにとって等身大のロックバンドであり続けている。その愚直で誠実な姿に、私たちは今日も奮い立たされている。メンバーは何度もフロアに感謝の想いを伝えていたが、感謝を伝えたいのはリスナーも同じだっただろう。

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