桑田佳祐『ひとりROCK IN JAPAN Fes』が大盛況 キャリアを網羅するセットリストで伝えたソロ35周年の充実ぶり
「MONGOL800よかった! 関ジャニ! このあとネクライトーキー? またみんなで“神はサイコロを振らない”に会いたいと思ってます」などと『ROCK IN JAPAN(FES)』の同日に出演する予定だったバンドの名前を挙げるMCも粋。そして「コロナとは長い期間、戦っていかないといけないですから」という言葉から、「SMILE〜晴れ渡る空のように〜」(『ごはんEP』収録)を演奏。この楽曲の歌詞が発表されたのはコロナ禍前の2020年1月だが、〈世の中は今日この瞬間も/悲しみの声がする/次の世代に 何を渡そうか〉というフレーズはさらに重みを増している。一つひとつの言葉を丁寧に紡ぎ出すボーカルにも心を奪われた。
そしてブルースとサイケとエキゾチズムと歌謡が混ざり合った「ヨシ子さん」(シングル/2016年)から“ライブ”は早くもクライマックスへ。間奏部分に入ってくる言葉遊びは、歌詞が変えられ、「ロッキン! ロッキン! 海のそば」「ここは千葉」「みんなが大好きな『ROCK IN JAPAN』」など、桑田らしい粋な替え歌ラップとなり、この日この場限りのものとして披露されていく。「今日はホントにありがとネ! 5倍返しだ!」という煽りからはじまったのは、ソロデビュー曲「悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)」(1987年)。モータウン系のリズムと超キャッチーなイントロ、桑田流のフロウと普遍的な恋愛感情を描いた歌詞が一つになったこの曲は、タイムレス&エバーグリーン。リリースから35年経った現在もポップスとしての強度と斬新さがしっかりキープされているという事実に、改めて驚かされた。
ここで、5大ドームを含む全国ツアー開催と、ベストアルバム『いつも何処かで』のリリースが発表される。「私の大好きな曲、歌って帰っていいですか? 波乗りの歌はやりません!(ブーイングの声)」というMCから、まずは美空ひばり「真赤な太陽」をカバーし、そのままラスト「波乗りジョニー」(シングル/2001年)へ突入。“サーフィン・ホットロッド×歌謡”のスタイルは桑田の真骨頂。水着のダンサーがステージで踊り、大観衆が盛り上がるフェス会場を頭のなかで思い描きつつ、『ひとりROCK IN JAPAN Fes.生歌スペシャル!!』はエンディングを迎えた。
ソロアーティストとしてのキャリアを網羅したセットリスト、さらなる充実を感じさせるバンドサウンド、そして、コンディションの良さを存分に感じさせるボーカル。一夜限りの『ひとりROCK IN JAPAN Fes.生歌スペシャル!!』によって桑田は、11月からはじまる全国ツアーとベストアルバム『いつも何処かで』への期待値をしっかりと引き上げてみせた。ソロ活動35年を彩るビッグプロジェクトは、2022年後半の音楽シーンにおける最大のトピック。稀代のポップス歌手・桑田佳祐の現時点での集大成と、これからのさらなる進化と期待も込めて、日本中の音楽ファンとともに味わい尽くしたいと思う。