帰ってきた夏の『TIF』で見た、アイドルとファンの新しいコミュニケーション 何度も蘇る7つの思い出

今年の『TIF』で見た7つの思い出

4. 先祖代々受け継がれる宝があるぜ

Juice=Juice:8月5日 SMILE GARDEN、HOT STAGE

Juice=Juice

 「Fiesta! Fiesta!」が始まったその瞬間、信じられないほど涼しいSMILE GARDENは常夏の国に一変。

 新メンバー不参加、さらに2名がお休みという不測の事態で歌割りもフォーメーションも普段と変わっているはず。想定と違う曲が流れて皆「あれーーー?!」と叫ぶも(段原瑠々さんのマンガみたいなびっくり顔がかわいすぎた)、数秒でフォーメーションを組み直し歌い出しまで完璧にキメる、メンバー全員の堂々たるプロフェッショナリズムが圧巻だった。まるで、そのスキルの高さを見せつけるための演出だったのかと思ってしまったほど。

 段原さんの歌唱の凄さは知っていたけれど、他のメンバーも全員の声が予想以上にパワフルだった。松永(里愛)さんの艶やかさ、植村(あかり)さんの真っ直ぐに届く強さ、段原さんの情熱的フェイクの安定感……。

 以前からビジュアルが大好きだった江端(妃咲)さんは、歴戦の覇者たちに囲まれたキュート担当で、可愛くてキュンキュンしたのと同時に、お姉さんメンバーの表現力をどんどん吸収していく可能性を感じられてこの先が楽しみになった。

 HOT STAGEトリとしてラストに「Magic of Love(J=J 2015Ver.)」。植村さんが歌詞に合わせてギュッと自分を抱きしめる姿があまりにもかわいすぎて、今この地球全部が植村さんに抱きしめられているような気持ちで幸せいっぱい。

つばきファクトリー:8月6日 SKY STAGE、SMILE GARDEN

つばきファクトリー

 自分の中の最強夏アイドルソング「今夜だけ浮かれたかった」、女の子の複雑な切なさと、日本の夏の湿気と怠さが絡まり合って心の中だけで打ち上がる花火のような1曲を、ついに夏の野外という最高のシチュエーションで観ることができた。

 身長も体格もバラバラで、まるで女子校の1クラスのような集団。揃えるところを揃えたら後は自由、個人の癖をそのままにした12人が一丸となる様は、色々な花が咲く、多種多様なお花畑のようで、全人類こうで在って欲しい……と祈りたくなる。

 鬼気迫る迫力と猫科の動物のような目力、皆と同じ振り付けのはずなのに飛び抜けて振りが大きく見える、ラテンの風が香り立つスパイシーな岸本ゆめのさん。対照的に、華奢で小柄な体躯から、強く太い歌声が飛び出すギャップが印象的な、クールで細やかなダンスの福田真琳さん。2人の対比に釘付けとなった。

OCHA NORMA:8月6日 SMILE GARDEN、SKY STAGE

OCHA NORMA

 ハロプロの末っ子グループが初の外部イベントに出演。メンバーの名字をドデカく印刷したハロプロ研修生Tシャツ文化、背中に推しの名前とメンバーカラーを背負った観客が集結。

 16ビートというよりも祭りビートでぴょんぴょん飛び回る振り付けから、ラスト全員が扇子のように広がるポーズがビシッと決まり、武道の型を見ているようなカッコ良さ。デビュー間もない新人グループ、という先入観をまるっとひっくり返すベテラン感とMCでの初々しさのギャップ、鍛錬された身体の生み出す結晶を見た貴重な時間だった。

 BEYOOOOONDSの代打として、1フレーズごとにびっくり顔や困り顔などコミカルな表情がじゃんじゃん飛び出す嬉しいカバー「こんなハズジャナカッター」も披露。〈先祖代々 受け継がれる 宝があるぜ〉(OCHA NORMA「お祭りデビューだぜ!」より)とは、ハロプロのメンバーたちに脈々と受け継がれる愛と音楽とダンスのことなのだと実感した日々。

 わずか15歳にして自分の魅力の引き出し方を完璧に“わかっている”、山口百恵・中森明菜を彷彿とさせる北原ももさん、モーニング娘。「抱いてHOLD ON ME!」のセリフパート〈ねえ笑って〉のファムファタール感はステージ上でも異彩を放っていた。

5. 同じ今を生きていると伝える歌声

乃木坂46・5期生:8月8日 HOT STAGE

乃木坂46・5期生

 昭和歌謡好きとして楽しい乃木坂46 5期生のレギュラー番組『新・乃木坂スター誕生!』ファンが、初めて観るメンバーたち。テレビを見ているのか、現実なのかわからなくなり、手に持つオペラグラスがVRゴーグルに思えてきて、虚実の境目が曖昧になる感覚に襲われた。

 揃えられたスカートの裾があまりに綺麗過ぎて一人ひとりを認識できないほど。空を埋め尽くすオーロラを眺めているかのようで、けれど大音量で聴こえてきた生歌は、声の必死な響きから、彼女たちは確かに今同じ世界に生きていると伝えていた。ステージ上の美しい人たちを遠くから観ていると、天上界の女神が降臨されたように感じてしまうけれど、血と汗と涙を流し心臓が脈打つ同じ人間なのだと、気づかせてくれる歌声でもあった。

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