映画『夏へのトンネル、さよならの出口』トーク付き試写会レポ eill×富貴晴美×松尾亮一郎が明かした音楽面でのこだわり
アニメーション映画『夏へのトンネル、さよならの出口』が9月9日に公開されることを記念して、主題歌・挿入歌を担当するeillと音楽を手がける富貴晴美、制作プロデューサー・松尾亮一郎が登壇するトーク付き試写会が8月19日、東京・神楽座で開催された。
映画『夏へのトンネル、さよならの出口』は、第13回小学館ライトノベル大賞において「ガガガ賞」と「審査員特別賞」をW受賞した、八目迷(はちもく めい)の小説を原作にしたアニメーション作品。二人の主人公の声優を人気の若手俳優・鈴鹿央士と飯豊まりえが務めていることでも注目されている。
とある田舎町に住む高校2年生の男子・塔野カオルと、東京から転校して来た花城あんずが通う高校では、入れば何でも欲しいものが手に入るという「ウラシマトンネル」が噂になっていた。ある日、ひょんなきっかけでウラシマトンネルを見つけた二人。しかしウラシマトンネルには、願いを叶える代わりに大きな代償が。カオルとあんずは、それぞれが欲しいもののために協力関係を結び、不思議なトンネルの調査を開始する。二人が欲しいものとは? ウラシマトンネルで二人はどんな体験をするのか? 心に傷を負った二人の高校生が繰り広げる冒険のストーリーだ。
主題歌「フィナーレ。」、挿入歌「プレロマンス」と「片っぽ – Acoustic Version」を、昨年アニメ『東京リベンジャーズ』ED主題歌「ここで息をして」でメジャーデビューした、シンガーソングライターのeillが担当。劇伴をNHK大河ドラマ『西郷どん』、アニメ『ピアノの森』などの音楽を手がけている富貴晴美が担当。青く澄み渡った夏の空と海、怪しくも神秘的なウラシマトンネルの情景という美しく繊細な世界観を、eillの情緒的な歌声と富貴晴美の温かい音楽が彩っている。イベントにはeill、富貴晴美、制作プロデューサー・松尾亮一郎が登壇し、映画の感想や楽曲の制作裏話などが語られた。
まず、完成したものを観てどう感じたかという司会者からの質問に、「匂いまで感じさせる臨場感に感動した」とeill。富貴も「とにかく映像が美しい」と絶賛。主題歌「フィナーレ。」の制作にあたって苦労した点やこだわった点について聞かれたeillは、ウラシマトンネルの中で時空が歪んでいる様子をどう表現するかにこだわったと話した。「三連符のリズムから、サビでは時計のカチカチという音のような四分音符に変わるんです。それによって、時を超えるとか時空を超えるというテーマを表現しました」。時計の音を使った表現は、原作者の八目迷もすごく喜んでいたそうだ。さらに、「トンネルを走る音は、自分で走って録ったんです(笑)。映画を見終わった帰り道に、“こういう音が出て来たな”とか、シーンを思い出してもらえたらいいなと思って」と、間奏では自分で録音してきた江ノ電の音や波の音などを使っていることも明かした。
劇伴について富貴は、「感情を大切にして作曲した」と言い、「心に染みる作品なので、主人公の感情より音楽が先に盛り上がってしまうと観ているほうが冷めてしまう。気持ちが先に来て、後追いでフッと音楽を乗せてあげることを心がけた」と話した。音響監督からは「駆け落ちや心中のような音楽を作ってください」というハードなオーダーもあり、すごく悩んだとのこと。「ピアノの音を逆再生するみたいな音を使って、倒錯感や艶めかしさを表現しました」と、監督の思い描く世界を音で表現するための苦労も語った。
他にもeillが担当した挿入歌の「プレロマンス」は、「キュンキュンと、ときめきを詰め込んだ」とのことで、今まで切ないラブソングを数多く作ってきたeillにとって、チャレンジの曲になった。挿入歌ということで、使用されるカットを意識してどのような音や歌詞にドキドキするのかという部分を意識して制作したとのこと。