eill、「hikari」でドラマ『ナイト・ドクター』オリジナルナンバー担当 リスナーにとっての“かっこいい存在”であり続けるために

eill「hikari」インタビュー

 eillがメジャー2ndシングル「hikari」をリリースした。この曲は6月21日スタートのフジテレビ月9ドラマ『ナイト・ドクター』のオリジナルナンバー。各話によって5組の異なるアーティストの楽曲がドラマ中に流れるという意欲的なトライアルに向けて書き下ろされた、孤独の先に求める“hikari”への思いが歌われる一曲である。

 今年4月にリリースしたメジャー1stシングル「ここで息をして」では、話題のアニメ『東京リベンジャーズ』エンディング主題歌というタイアップの相乗効果もあってさらに新たなリスナーを獲得している。もやもやを感じていた十代にK-POPをはじめとするポップスと出会い自らも歌い始めたeillはいまメジャーのステージで何を感じているのか? その音楽性や世代感から現在地点を紐解くインタビューを試みた。(内田正樹)

歌詞は自分自身の意識の沼に沈んで描いていく

eill
eill(写真=北岡稔章)

――今日、お会いする前にSpotifyをチェックしたら、eillさんの月間リスナー数が53万人と表示されていました。新しいリスナーが増えているという実感はありますか?

eill:ありますね。とても嬉しいです。友達から、「今日ご飯を食べに行ったら、隣の席の子が『eillちゃんが一番好き』って話してたよ?」とか「街で(曲が)かかってたよ?」と教えてもらって。『東京リベンジャーズ』がきっかけで、海外のリスナーも増えているみたいで。

――何処の国が多いんでしょうか?

eill:韓国は前から多いみたいですね。ヨーロッパやアメリカの方からもコメントをいただきます。「good」とか(笑)。今はまだコロナ禍で行けませんが、韓国のアーティストの方との生のツーマンライブとかもいつかはやってみたいですね。

――今年4月にメジャーデビューされました。活動や制作においてコロナ禍によるストレスを感じた場面はありましたか?

eill:特には無かったです。大抵のことはオンラインで可能な時代だし、海外のアーティストの皆さんとご一緒する機会もたくさんあったし。もちろん、直に会えたらもっと楽しかっただろうなあという気持ちはありますけど。

――他のアーティストとのコラボレーションにおける収穫や手応えについては?

eill:テヨン(少女時代)さんに提供させていただいた「#GirlsSpkOut ft.ちゃんみな」(2020年)の作詞の時、ちょっと迷ったんです。自分の言葉で、自分が思っていることを歌詞にするほうがいいのか、それとも世の中の女の子が思っていることを歌詞にするほうがいいのか。それで、まずは女の子たちの声を聞こうと思って、女子会に行ってみたんです。そうしたら、どの子も「言いたいことが言いづらい」と思っていることが分かったので、それをテヨンさんに代弁してもらおうと。自分も、自分の友達も、同じように感じていることを、eillとしてもリリースしたいと思える完成形で提供することが大事なんだなと実感しました。

――作詞におけるメソッドのようなものはお持ちですか?

eill:私は「つらい感情を変換した曲が誰かのプラスになれば」と考えていて。マイナスの感情を歌詞にすることが多いので、毎回、自分自身の意識の沼に沈んで歌詞を獲得してきます。毎回が突撃です(笑)。

――沈んだまま戻れなくなったような体験は?

eill:ちゃんと戻って来られます。頻繁に制作が続くとつらい時もあるけど、獲得さえ出来れば。最近、プロデューサーに「eillは器用になってきたけど、小手先で書いた歌詞は分かるよ?」と言われて。ちゃんと沈まずに書いた歌詞はバレるみたいです。もちろん、そう指摘された歌詞は全てボツにしましたけど(笑)。

――『東京リベンジャーズ』然り、今回の『ナイト・ドクター』然り、eillさんはタイアップの機会に恵まれているという印象を受けます。どのようなプロセスを経てタイアップ先の作品を理解していくのでしょうか。

eill:まずは脚本なり作品を読んで、気になった言葉をメモしながら、「この人はどんな気持ちなんだろう?」と自分の感情が寄り添えるポイントを探します。次に、必ず「私がこの曲をリリースする理由」を決めます。タイアップがあるからではなく、妥協もせず、後悔もなく、自分が心からリリースしたいと思える仕上がりを大事にしています。ありがたいことにこれまでの活動はタイアップの機会に恵まれていて。時々プレッシャーに怖気づくこともあるんですが、それでせっかくのチャンスを逃すのはダメだなって。反対に、自分の感情のみから生まれてくる曲はまた違った可能性でプラスになると思う。それぞれの良さがありますね。

――メロディと歌詞はどちらが先ですか?

eill:比較的メロディが先です。そこに適当な言葉を入れては、その言葉から抜け出せなくなったり、それ以外の母音に当てはめられなくなって格闘したり(笑)。

――eillさんが作詞のボキャブラリーで影響や刺激を受けるものは?

eill:私、積極的には本を読めてなくて。もうちょっと読まなきゃと思っているくらいで。

――そうなんですね。ちょっと意外でした。

eill:最近は、海外ドラマのハッとさせられる台詞に刺激を受けると「これってどういう意味だろう?」と自分の中で咀嚼して歌詞を書いたりしています。アニメは好きですがマンガもあまり読まないので、タイアップの機会に脚本や原作を読む時はいつも新鮮で楽しいですね。

――作曲の際は何か機材を使っていますか?

eill:実は中学3年生の時にクリスマスプレゼントで買ってもらったピアノをまだ使っていて。MIDIが使えるヤマハの80鍵なんですが、自分でもそろそろこれだけじゃヤバいかなって(笑)。

――例えばPro ToolsやAbletonといった制作ツールや、個人でアレンジを完結させるような創作にはあまり興味がないんですか?

eill:以前はすごく憧れていたし、全て自分でやりたがっていましたね。でも、いざ素晴らしいミュージシャンの方々を目の当たりにしていくと、人の手を借りるほうが自分を高められると感じて。今回の「hikari」は、初めてご一緒する田中隼人さんと、もう3、4年一緒にやっているバンドとの共同制作だったのですが、やりたいことがテレパシーみたいに伝わって、自分が持ち込んだメロディが魔法でもかけられたかのようにどんどん良くなっていきました。みんなの力を借りてeillの曲が仕上がっていくのがうれしいんです。

eill(写真=吉場正和)
(写真=吉場正和)

――「hikari」のリリックについては?

eill:世の中には、多くの人が自ら進んではやりたくないような、大変な仕事を任せられている方々がいらっしゃるじゃないですか。このドラマに登場する5人のナイト・ドクターたちも、あえて夜に働くことでそれぞれの光のようなものを探していく。それは誰かが照らしてくれる光ではなく、やっぱり自分の中にあるんだけど、まだ見つけられていない光だと思うんです。最近、私自身も、嫌なことをただ「嫌だ」と言って放っておくのではなく、ちゃんと戦ってみることで、その先に待っているかもしれない光を見つけるための旅をたくさんしなければと感じていて。「hikari」は、そのためのきっかけや、旅する背中を押してくれる風のような曲になればという思いで書きました。

――今のところ、eillさんにとっての光はやはり音楽でしたか?

eill:そうですね。結局、何事も音楽で救われてきたから、ここまでやってこられたのかなって。小さい頃から飽き性で、何でもかんでも手を出しては「嫌だ」となるタイプだったんですけど、音楽だけは今も続けているし。何かを思うと一人で勝手に曲にしているので、もうやめられないんだろうなって。

――ちなみに音楽を見つける前、憧れの職業ってありましたか?

eill:いっぱいありましたよ。ケーキ屋さんとか、グランドキャビンとか、ころころ変わっていて(笑)。ポジティブな子どもだったんですけど、中学生ぐらいの時はかなり心がモヤモヤしていたんです。「夢とか無いし」、「何のために生きてんだろ?」みたいな。それが音楽に出会えたことで変わったんだから、音楽には本当に人を変える力があると思います。今度は私が誰かを救う番だという気持ちもありますが、結局はまだまだ私自身が救われている最中なんだと思います。

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